間に合わなかったかもしれないフライト
なんどもおじいちゃんの夢を見た。香港に行くときに成田空港で見たハビーのおじいちゃんじゃなくて、私の母方のおじいちゃん。 母の実家、板橋区に叔父夫婦と一緒に住んでいた、数年前に他界したおじいちゃん。私はそのおじいちゃんとどこかへ出かけるところだった。そんな夢を見たり目が覚めたり、なかなか熟睡ができないので起き上がって目覚まし時計を手にとった。「起きてーっ。 バスに乗っている時間よーっ。」「わーっ。」 ハビーが私の声に驚いて跳び起きた。「遮光カーテンを閉めておいたのがいけなかった。 目覚まし時計がセットした時間に鳴らなかった。 いや、きっとセットし間違えた。 今日は祝日だから道路は空いているはず。 冷蔵庫のジュースを飲まなくちゃ。 寝る前にパッキングしておいてよかった。」そんなようなことを支離滅裂に口走りながら慌てて身支度をした。 ハビーはホテルのチェックアウト、私は空港に向かうリムジンバスを引き止める作戦で行くことを打ち合わせてロビーで別れた。ホテルの前には運よくリムジンバスが停まっていた。チケットを2枚渡して 「ホテル チェックアウト」 と運転手さんに伝えたら通じた。 それから時計を指さして発車時間を聞いた。 8時7分だと両手で教えてくれた。 現在8時ちょっと前。 よかった、バス・ジャックをしなくて済んだ。このリムジンバスのフットレストは快適。 結構上まであがる。途中大韓航空のCAさんと男性をひとりずつピックアップした以外はノンストップで空港に到着。 予想どおり道は空いていた。仁川空港への道は漢江沿いを走っている。 大規模な集合住宅群がいくつもあった。ひと足出遅れたせいでチェックインは長蛇の列。 多少は英国テロ未遂事件の影響があるらしい。 しかたなく最後尾に並んだ。男性職員がなにやら拡声器を使って韓国語でアナウンスしている。 捕まえて英語で聞いたら、キャリーオン専用のカウンターがあるとのこと。 数名しか並んでいないカウンターであっという間にチェックインが終わった。 便利。米国の空港には以前から 『カーブ』 サービスがあるけれど、日本では成田空港第1ターミナル南ウイングが最近日本で初めて設置したみたい。 カーブサイドチェックイン手荷物検査も空いているうちに済ませ、結局余裕で搭乗を待つことに。 結果オーライ。朝食はお粥を食べると決めているハビーだったけれど、空港レストランで唯一のお粥メニューであるあわび粥が1時からしか販売しないと聞いて断念。 カルビ湯(カルビタン)で手を打った。 15000ウォン。 完全に空港料金。ファストフード以外のレストランがここくらいしかなかったので結構混んでいた。 思った以上にカルビ湯はおいしかった。 とろとろのお肉と塩味。 おかずはキムチ2種、いんげんとウズラの卵の煮物、ひじきの煮つけみたいなの。 ハビーも大満足。KE001便は定刻より15分ほど送れて出発した。 ミールは中華丼とサラダ。 ハビーは手をつけなかった。 私のミールは…見覚えがあるぞ。 成田発のと同じじゃない。 少しだけつついて終わりにした。 ミールを片付けてもらって紅茶を飲みながら考えた。 おじいちゃんが夢に出てきたのは私を起こすためだったんじゃないのかな。私たちが持っているのは、乗り遅れた際に無効になってしまうチケットだったし、それよりもハビーの病院が間に合わなくなる。 そっちのほうが一大事だった。おじいちゃん、ありがとう。 あとでそのことを母に話したらちょっと神妙な顔をしていた。夏のソウルは本当に暑かった。 成田は雨が降っていてじめじめしていたけれど、まだ涼しかった。いつになるか分からないけれど、次にソウルに行くときは季節を選ばなきゃ。私がおもしろいと感じたシーンをいくつか。本屋さんでは米国の本屋さんで見られるように、ほとんどのお客さんが床に座り込んで立ち読み(座り読み)をしていた。電車に乗るときは我先にと、降りる人をなぎ倒してでも突進してきた。染髪をしている人がほとんどいなかった。雑踏で足や身体がぶつかっても気にしないようで、 ハビーのシャント(透析の際、穿刺する辺り)が心配だった。 キムチが苦手な私はやっぱりニオイが気になった。 でもこれは慣れで解決すると思う。 帰るころには大分感じなくなっていたから。私が感じたソウルは、『20年前と最先端が混在する街』。 テレビなどで見る戦後の東京みたいなイメージ。 日本から一番近い外国は、日本ととても似ていた。 そのせいか外国にいるという感覚があまりなかったな。仁川空港は規模も施設もすばらしかったから、米国や欧州に行くときに経由地として利用すると便利だと思った。ウォン高や日本のシーズナリティに合わせた価格設定をし始めていることでソウル発券の航空券の魅力が少なくなってきているけれど、まだまだ欧州方面に飛ぶにはお得感がありそう。