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夢先生の玉手箱-annex

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カテゴリ:子供の気持ち
今日から新学期。
今、私には、今日学校に行くことができたかどうか気になっている
不登校の子供が二人いる。
一人は、私の教室に通っている新6年生のS君で、
もう一人は、ブログで知った名前も知らない新中2の女の子だ。

S君は、私の教室で不登校になった6人目の生徒だが、
なんとか学校へ行かそうと、小さな可能性を探していた
今までの5人のお母さんと異なり
不登校になってまだ数週間だし
このまましたいようにさせておけば、気持ちも落ち着いて
春休みが終わって友達も何も言わなくなるだろうから、
学校に戻れると考えているので、
そんな安易なものではない、と考えている私や担当講師、
我が子と一緒に力を貸そうと考えていた同じクラスのお母さんも
新学期の今日を、ただ待つしかなかった。

S君が不登校になったきっかけは、ささいな事だった。
昨年の秋頃、受験準備の為に通っている塾の宿題が多くなり、
深夜までかかるようになってきた。
当然、朝起きられない。
今日、学校を休んでいい?、と言うS君を
お母さんは、軽い気持ちで許した。
ところが学校へ行った時に、
友達に、どうして学校を休んだのか?ときかれたことで
(おそらく年齢的にかなり辛辣な口調できいたのだろう)
彼は、学校を休みがちになってしまい、
受験準備で一杯一杯だったこともあり、なにもかも嫌になった、と
とうとう3月から不登校になった。

私の教室も年明けから休みがちになっていたが
その都度、お婆ちゃんから、身体の具合が悪い、という
欠席連絡が入っていたので、
担当講師も受験準備で忙しくて体調管理が難しくなってきたのだな、
と不登校になる危険性を感じていなかった。
3月になりお母さんから不登校になっていると
担当講師に連絡があり、担当講師から私に報告があったが
私は密かに、S君が不登校になる危険性を
彼が3年生の頃に感じていたので、来るべきものが来たな、
と、別に驚きはしなかった。
彼は、3、4年生の時の私の教室の宿泊研修を、
当日の朝、お腹が痛いとドタキャンを繰り返していたのだ。
行きたいけれど、ネガティブな気持ちがあると、身体が言うことをきかない。
今の不登校の兆候がこの時すでに表れていたからだ。

今まで、不登校になった子、なりそうになった子を見ていると、
子育ての方法と生活環境に共通点が多い。
そして、それは、まさに以前紹介した
《その子育ては、科学的に間違っています/國米欣明著》に書かれている通りだ。
ドタキャンした時に他のお母さんのように、
その日の様子など具体的に相談されていれば、
不登校の危険性の話しもできたのだが、
別段、S君のお母さんからその後、何の連絡もなかったので、
あえてこちらから、デリケートな問題だけに
一歩踏み込んだ話しはできなかった。

中学受験で、ストレスから、多汗症になった生徒
顔面がアトピーで湿疹だらけになった生徒
チック症状がひどくなった生徒、
肺炎など体力の低下から症状がひどくなる生徒など
身体と心は、口より正直に子供の状態を表す。
学力だけでなく、体力的、精神的な力もつけていないと
中学受験は乗り越えられないのだと思う。

そして、私の生徒で最初に不登校になってしまったIちゃんは、
中学2の夏休み後から約1年、学校に行かなかった。
きっかけは、部活をめぐっての友達とのやりとりで、
友達だと思っていた子が自分の味方になってくれなかったので
裏切られた気持ちになったという、よくありがちなものだった。
学校へ行かなくなって半年は、私の教室にもこなかったが、
勉強しないことへの不安もあったのだろう、
突然、勉強したい、と電話をかけてきた。
でも、学校を休んでいるのに家を出て
友達に見られたら、何か言われるかもしれないと言うので、
とりあえず私が、彼女の家に出向いて、
教えることにし、彼女の家へ向かった。
ところが、彼女は私が椅子に座ったとたん、
学校であったこと、今の気持ちを、溢れるように話し出した。
最後は、抑えていた気持ちが抑えられなくなり
泣き出して声が出なくなった。
ああ、彼女は自分の気持ちを誰かに聞いて欲しかった、
どうしたらいいか教えて欲しかった、
背中を押して欲しかったのだと感じ、しばらく二人で泣いた。

二人で勉強をしながら、いろいろな話しをした。
学校に行かないことが、悪いことをしていると思っているのなら
なるべく早く学校に行けるようになろう。
それには、まず自分のことを好きになろう、大切にしよう。
好きになれる自分になるように努力しよう。
学校に行かないで損をするのは、大切な自分
誰かのことを気にして学校に行かないなんて、もったいない。
その人とは、数年後もう会うこともないような人なんだよ。

青が好きな人もいれば、赤が好きな人もいるように
あなたのことをみんなが好きなわけじゃなくて、当たり前。
みんなに好かれないダメな子だ、なんて思うことはないの。
地球上には、たくさんの人がいる。
これから出会う、あなたを本当に理解してくれる人、
あなたが、理解して力をかしてあげたいと思う、
本当の友達に出会う為に、もっと力のある魅力ある自分にならないと。
その為にも、外に出ていろんな人と出会って
勉強して力をつけようよ。
「でも、もし同じ学校の子に見られたらどうするの?」
「ん~その時は、学校に行くリハビリ中、って言っておけば。
 もし、前の学校に戻るのが嫌だったら、転校することもできるし」

3ヶ月後彼女は、私の教室へ、
その1ヶ月後には、同じクラスの生徒に誘われて塾にも通い始めた。
そして、見事彼女は、夏休み明けから以前通っていた学校へ通い始めた。
「先生、心配してたことにはならなかった。」
もちろんその後、彼女は、学校へ行かなかったツケを
志望校を受験できない、という形で払うことになった。
「先生、私、なんてバカなもったいない事をしたんだろう」
出席日数の足りない彼女を受け入れてくれたのは、
あまり評判のよくない、女子校だった。
泣きじゃくる彼女に
「確かにもったいない1年だったかもしれないけど、
 長い人生の中のたったの1年だよ。
 それに不登校の経験が無駄だったかどうか、なんてまだわからないでしょ。
 その経験があったから、見えるようになった、
 わかるようになったことも、たくさんあるんじゃない。
 まだまだ、リベンジできるでしょ。」
彼女は、3年後、志望校だった6大学の一つに合格して、
自分のような経験をした子供の為にと、中学教諭の道を歩んでいる。

名前も知らない女の子だけれど、
今日も学校へ行くことができなかったのなら、
このブログを読んで、連絡をくれればいいな、と思っている。






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最終更新日  2008年04月07日 14時30分45秒
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