私は悪くない - 自己防衛の裏側
フィンランドメソッドの延長でディベートを始めた小3のクラスでちょっとした問題が起こった。Tちゃんが相手側の発言を遮り、自分の意見が正しいと自説を主張し続けたのだ。これでは意見のキャッチボールであるディベートは成り立たない。得意げに自分の意見をまくし立てるTちゃんをクラスメイト達は不満げな顔で見ていた。Tちゃんの主張の根底にあるのは、『私は悪くない』という考えだ。夏の縦割りキャンプで、食器の洗い方が不十分と叱られ、同じ班の下級生とともに洗い直しを命じられたTちゃんは、自分はちゃんとやったのに叱られたことに強い憤りを感じ、納得できない、二度と宿泊研修には行かない!と帰宅後泣き続けたという。彼女の考えの中に、オリエンテーションで説明された下級生がきちんとやっているかやっていなければやらせる、という上級生としての班行動での役割はなくいくらお母さんが反省すべき点があると説明しても彼女は納得しなかった。私がTちゃんを担当するようになったのは今年の夏休みの前だが、1,2年生の時に彼女を担当していた講師も3年生になってから彼女の態度は変わってきたという。同じく私が担当している高校生の姉も最近Tちゃんは、友達と遊ばなくなって家にいることが多いと気にしていた。このTちゃんの様子に小学校時代面倒見がいいとても良い子と学校の担任に言われていたのに中学生の時に自分の意見が正しいと、学校のトイレに立てこもり、後に友人から孤立し一時不登校になった一人の生徒を思い出しTちゃんのお母さんと話しをすることにした。もともとTちゃんは、傷つきやすく自分から進んで人の輪に加わるタイプではないし学校の担任の先生からも面倒見がよく、皆と仲良くしていると聞かされているという。そのTちゃんが何故、友達と遊ばなくなり家にいることが多くなったのか?3年生は、横の繋がりが強くなり始める時期自分はこう思うという気持ちが芽生えるとともに理解し合える仲間を求め始めるそれまで一方的にこうしようといえば従っていた関係が成り立たず、自分の意見が通りにくくなってくる。自分の意見に従ってくれないことに自分を拒絶されたと感じ傷ついたのではないだろうか?フィンランドメソッドのカルタで次々と発想し、カルタを広げていったTちゃん豊かな発想力でさまざまな意見をまとめる、妥協点を見いだすことのできるリーダー的素質があるだけに自分の殻に閉じこもってしまうことは残念でならないとお伝えし意見が違うことは当たり前のことでありよりよい自分を作っていく為には人の意見に耳を傾け、取り入れていくことが必要だということをどのように導き、学べる環境を与えていけばいいのかということをお母さんと考えながらアプローチしていくことになった。