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カテゴリ:受験
昨年の秋、他区に住む私の友人から、同居している小5の甥っ子の事で
相談があると電話を貰った。 甥っ子は、大手進学教室で常にトップクラスで、 志望校も国立を狙って学習していた。 ところが、風邪から気管支炎を併発し、2週間塾を休んでしまった後、 様子が一変し、塾に行く事を嫌がるようになった。 何とか説得して行かせ、本人も机に向かっているのだが、 成績は下がる一方。 とうとうクラスも下から数えた方が早くなってしまい、 塾に行かなくなってしまった。 母親である彼女の妹は、病気入院中で、 甥っ子の面倒は、彼女が見ているが、 独身の彼女には、どうしていいのかわからないという。 その子の様子と気持ちを確かめる為に 彼女の家へと向かった。 彼女と話しをしていると、学校から甥っ子のA君が帰ってきた。 真面目な几帳面タイプ 「こんにちは、お邪魔してます。」 「彼女は、私の友達。」 「ケーキ持ってきたから、一緒に食べない?」 彼は不安そうに叔母である私の友人の顔を見た。 「一緒にいただきましょうよ。ね。」 「うん。手を洗ってくるよ。」 かなり元気がないというか覇気がない。 しばらく、ケーキを食べながら世間話をした後、 友人が本題を振った。 「ねぇ、このオバさん英語の先生なのよ」 「塾の?」 「どうして塾の先生だと思ったの?学校の先生には見えない?」 「…だっておもしろいもん。」 「おもしろい、か。確かに真面目じゃないよね。 A君の塾の先生もおもしろいって感じなの?」 「学校の先生より面白いよ。でも今は塾に行ってないんだ。」 「どうして?」 「ついていけなくなっちゃったんだ。ダメなんだ僕」 「自分でどうしてついていけなくなったかわかる?」 「病気で休んじゃったから。先生の話がわからなくなって、 わかろう、わかろう、と思って一生懸命やってわかったと思っても、 テストができてなくて…ダメになっちゃったんだ僕」 話しながら、涙ぐんでいる。 「ダメになるわけないよ。そう思い込んでいるだけ。」 「でも、テストだって…」 「ねぇ、テスト受けてる時に、ダメだったらどうしよう、どうしよう、って 思わなかった?」 「うん。」 「それって、気持ちが問題に向かってないよね?そういう時はいい結果が出ない。 ただそれだけのこと。」 「そうなの?」 「だからA君がダメになったわけじゃない。」 「でも、もう勉強が遅れちゃったし、 今のクラスじゃ○○(志望校)に行けない。」 「そう思っているんだったら、まだ受験までに時間があるんだから、 病気で休む前のところまで戻ればいいじゃない?」 「どうやって?」 A君の顔が明るくなった。 「簡単よ。塾を変えればいいの。塾は、1つだけじゃないよ。 A君が休んでしまったところからやってくれる塾を探して通えばいいじゃない。 それで、また前の塾に戻りたいと思ったら、 お父さんと相談して戻ればいいじゃない。 このまま家にいたって、何も始まらないよ。」 「叔母さん、今日お父さんが帰ってきたら、塾の事相談してみる。」 彼は、翌日個別を併設している準大手の進学塾の門を叩き、 2ヶ月ほどで、元の偏差値に戻ったと連絡がった。 そして昨日、友人から電話があり、A君が私に話したいことがあると言う。 「先生、僕ね、先週前の塾のテストを受けて、元のクラスに戻れたんだ。 入試が終わったら、英語習いに先生の教室に行ってもいい?」 「それは、嬉しいけれど、残念ながらダメ。」 「どうして?」 「だってA君の家から、私の教室は遠いから。 往復に2時間かかる人は、その時間を学校の勉強や部活に 有意義に使って欲しいから入れてないの。 でも夏期講習や、冬期講習にはいつでもおいでね。 先生も楽しみにしてる。」 「ありがとう、先生。僕、がんばるよ。」 A君のように自分にプレッシャーをかけてしまう 真面目な几帳面タイプがスランプに陥ってしまったら、 成績でクラスが変わるような、競争型の塾は精神的な負担が大きく 出来ない自分を責め、追い込んでいき、いい方向へは向かわない。 安心してゼロに戻れるような育成型の環境に変えてあげることが必要だと思う。 精神的なものに大きく左右されてしまう年齢だからこそ、 点数や偏差値など結果に一喜一憂するだけでなく、 結果の中に見える子どもの気持ちのサインに気づいてあげて欲しいと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年05月26日 08時24分44秒
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