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夢先生の玉手箱-annex

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カテゴリ:子供の気持ち
小学校で水泳が始まると思い出すことがある。

W君のお母さんは、中学時代から英語が大の苦手だった為
子供が英語に落ちこぼれないようにと
ゼロ歳児から高価な教材で、英語を始め
1歳から都心の英語教室に通っていた。
幼稚園に入り、時間的にその教室に間に合わなくなり、
幼稚園から近い、私の教室に通うようになった。

私がW君を教えて気になったのは、
彼の英語力ではなく、彼の脚力だった。
TPRの時に、他の生徒に比べて、動きが遅く、緩慢なのだ。
幼稚園の制服からのぞく脚も細い。
彼の入会申込書に書かれている一週間のスケジュールを見ると
日曜日を除いて、ほぼ毎日、お勉強系の習い事が入っている。
これでは、友達と公園で遊ぶ時間もない。

おっとりとした典型的な一人っ子タイプの彼は、
遊んでいる友達の輪に、自分から「入れて」と言えない子だった。
幼稚園の時は、園庭での外遊びの時間にお母さんが、
遊んでいる友達のところに行き「Wも入れてあげて」と言って
みんなと遊んでいると他のお母さんから耳にしていた。

小学校入学後すぐに、彼は、友達に遊んでもらえない、と
学校はどう?と聞く私に答えた。
WのクラスメイトでもあるNに
「どうしてWと遊んであげないの?」と尋ねると
「Wは、走るのが遅いんだもん」
子供の世界は、ある意味残酷で、
同じペースで遊べない子を、相手にしない。

そして夏になり、心配な水泳が始まった。
Nは、Wが溺れているみたいで、笑われていたと
私に報告してきた。
スイミングスクールに通う子供や、
幼稚園の中には、スイミングスクールでの水泳を
カリキュラムに入れているところが増え
ある程度泳げる子が多いのだろう。

案の定、2週間ほどすると暗い顔で教室に来て
Wは、学校へ行きたくないと言い出した。
「みんな、僕のこと笑うんだよ。」
「お母さんには言ったの?」
「言ったら怒られる」
私は、翌日彼が学校へ行っている間にお母さんに電話をし
教室に来てもらった。
「たかが体育で…」
お母さんは、信じられないというような感じの顔をした。
「お母さん、不登校になるのは、何もいじめだけではありませんよ。
 偏食な子が給食の時間が嫌で不登校になったり
 運動ができないコンプレックスで不登校になることもあります。
 中でも、水泳、跳び箱、鉄棒は、できない、できるがはっきりわかるので
 できない子は、体操教室やスイミングスクールに通われる方が多いです。
 泳げない事で学校に行きたくないのであれば、
 スイミングスクールに通って習われたらどうですか?
「そんな時間ありません。」
「じゃぁ、英語を辞めるか休んで
 その時間にスイミングスクールに通われたらどうですか?」
「えっ、それじゃぁ英語が遅れてしまいます」
「お母さん、今は、これから先じゃなくて、
 今の状況をどうするかを考えなくてはいけない時です」
「…」
「今、W君がぶつかっている問題を解決することが先です。
 今、英語ができなくなっても、学校で困ることはありませんが、
 今、彼は、運動ができなくて、学校へ行きたくないんですよ」
「先生、英語で落ちこぼれる前に、体育で落ちこぼれてしまったんですね」

W君は、英語を辞めることはなかったが、
小学生になっても続けていた幼児教室を辞めて
スイミングスクールに通い始めた。
「先生、10メートル泳げるようになったよ」
と、嬉しそうに報告しに来た。
これで、彼が、学校のスイミングキャップにつける
水泳のレベルを表すラインでコンプレックスを持つことはないだろう。

小学校低学年時は、勉強はさほど難しくなく、勉強ができる、できないより
足が速い、遅い、泳げる、泳げないなどが
子供のの世界では評価の対象となっている傾向がある。
また、子どもの性格によっては、みんなの前で、できない、姿をさらすことが
嫌だという気持ちから、不登校の原因になりうる。
私の知人が手伝っている、区の体育教室は、
逆上がり、マット、跳び箱ができない小学生でいつも満員だ。
理解力が早い子、遅い子がいるように
運動能力にも差がある。
もちろん生まれながらの素質もあると思うが、
幼児期に友達と追いかけっこやボール遊び、
また、遊具を使って遊ぶことで鍛えられる筋力も多い。
特に脚力は、すべてのスポーツの要となるだけではなく
サッカー、野球など男の子が集団でする遊びにも必要だ。
持久力も年齢が上がれば、自然につくというものではない。
心肺能力が高さがものを言う。

30分から1時間の外遊びをコンスタントに行うことで得られるものは、
とても大きいと思う。






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最終更新日  2008年06月26日 11時45分13秒
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