テーマ:☆詩を書きましょう☆(8465)
カテゴリ:詩
よくある顔つきかな 南風一 東京からの帰りみち 飛行機に乗ったときから 拒絶というか遮断の意志が読み取れたので 座席に座った瞬間から (隣の女性と)些細な係わりも持つことがないように 最新の注意モードでいることを心掛けた 早朝に飛行機に乗って東京まで来たこと それから 昼間に電車で移動したり歩いたりしたので 疲れていたこともあって 帰りの飛行機の座席に座ったときは もう本を広げる気力もなかったので 私は目をつぶって頭を座席の背もたれに預けた 隣りの女性は(年齢は分からないけれどその仕草から若い女性だと推測できた) 上着というかヤッケのようなものを羽織っていて 顔の表情はよく見えなかった それで私も彼女の態度を尊重して 完全無視の態度を決め込んだ 足元の鞄は「前席の下に置け」という注意メッセージを無視して 鞄を靴の踵近くに置いていた (なぜそうしたかといえば隣の女性がバッグらしき荷物を前席の下に置いていたので 私がもし鞄をその横に置いたりすれば何かしら彼女が嫌な思いをしたりしないかな という狼狽心からであった) 離陸前の安全点検をしていた客室乗務員は目ざとく私の鞄に気づいて 鞄は前席の座席の下へ移動してくださいと注意したから 私の狼狽心はすぐに水泡に帰すこととなった 1時間ほど経ってやがて飛行機は目的地の空港に着陸した 座席の上の荷物置き場の扉を開けて 自分の荷物を取り出した 隣りの女性の荷物もあったのでついでに取り出して上げた方がいいかな?とも思ったが 他人が自分の荷物を勝手に持ったりすれば気分が悪くなるかもしれないなとも 思って彼女の荷物はそのままにした 立ち上がって初めて隣りの女性の顔を上から見下ろすことができた 「まさか昔私が恋した女性にそっくりじゃないか!」と驚いた 年齢はまだ20代のように見えたから まさか昔私が恋した女性でないことは明らかだった それにしても彼女によく似ている つーんとして「あなたには興味なんかないわ」という高慢な横顔は 昔私が恋した女性のそれとそっくり同じだった 彼女のような顔つきは何処にでもあるありふれ顔つきなのか? それとも本当に昔私が恋した彼女その人なのか? ことの真偽を見極めることもできず 私は座席を立ってそのまま空港から出て行った (詩集の宣伝) 「青春17切符+1」3月26日発売。 購入は、 こちらからどうぞ 詩が良かったと思う方は 人気blogランキング お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2024/10/06 09:17:55 PM
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