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カテゴリ:法律、制度
前回の続き。
費用が高くて手間もかかる「内容証明郵便」、これを利用すべきなのはどういう場合か。 結論から言いますと、それは、 「ある法律上の請求をするにあたって、それが認められるために必要な要件として、ある意思表示を一定の時期にしたことが要求されている場合」です。 平たくいうと「ある意思表示をしたことについて、後から相手に『知らん』と言われると困る場合」です。 具体的に示したほうが分かりやすいと思いますが、 一番典型的なのは、「時効」を中断するときです。 たとえば知人にお金を貸して、返済期日になっても返してもらえないままになっている。 そのままだといずれ時効で権利が消滅してしまうので、時効期間(10年とか5年とか、権利の内容により異なる)が過ぎる前に「はよカネ返せ」と催告しておく必要がある。 催告しておくとそこから6か月間は時効にならない(民法153条。ただきちんと時効を中断するためには訴訟を提起して訴状を相手に送る必要があります。同147条)。 つまり、時効が来る前に催告したことを証拠に残しておかないと、あとから相手に「催告なんか受けていない」と言われると、時効が認められて借金を取り立てられなくなるわけです。だから、内容証明でもって、「カネ返せ」と言ったことを残す必要がある。 この場合、配達証明や配達記録だけだと、「ある郵便物が届いた」ということしか証拠に残らないので、後で相手に「何か郵便が来たみたいだけど催告じゃありませんでした」とトボケられると困ることになるわけです。 他に身近なものとしては、訪問販売で要らないものを買わされたので、特定商取引法に基づいてクーリング・オフで取り消したい、という場合があげられる。所定期間に取消の意思表示をする必要があるので、それをしたことを証拠に残す必要があります。 (民法を勉強している方は、他に内容証明が必要なのはどういう場合か考えてみてください。ヒント、民法412条3項、467条2項、541条、591条など) このように、ある時期にある意思表示をしないと権利が消滅してしまうことというのは、かなり限定的であって、日常そうそうあるわけではない。 ウチの事務所では、上記のように本当に必要なときにしか内容証明は使いません。 相手にきちんと届いたかどうか不安だ、というだけなら、わざわざ内容証明ではなくて配達証明だけで充分なので、ウチではよくこちらを使います。 何でもかんでも内容証明、というのは手間と費用の無駄です。 配達記録という制度はなくなりますが、配達証明という方法がもっと利用されてもいいように思います。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008/08/29 07:34:54 PM
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