日弁連元会長が不実登記に関わった?
今後の展開が注目される事件。朝鮮総連の本部建物が、元公安調査庁長官が社長を務める投資顧問会社に「売却」され、登記上の名義がこの会社に移転された。でも実際には、売買代金35億円の支払いは行われておらず、「仮装売買」の疑いもある。朝鮮総連は、整理回収機構から多額の債務の返済を請求され、これに応じられないと本部建物を差し押さえられる可能性があった。その状況下で登記だけ移転することは、普通に考えて「差し押さえを逃れるため」と評価される(朝鮮総連名義のままだと整理回収機構に差し押さえられる)。で、その取引に、日本弁護士連合会(日弁連)の元会長の弁護士・土屋公献氏が朝鮮総連の代理人として関わっていたという話が出てきました。東京地検特捜部は、公正証書原本不実記載罪(刑法157条、5年以下の懲役)、つまり公的な帳簿(登記簿)にウソの記載をした(売買が仮装なのに登記を移転した)との疑いで、総連本部はじめ、元公安調査庁長官そして土屋元会長の自宅などを捜索したとか。うーむ何だか、大沢在昌とか高村薫とかの小説に出てきそうな話です。土屋元会長は、正当な売買であって、例外的に登記が先行して、事情により代金の支払いが後になっただけだと釈明しているようです。たしかに、弁護士が不動産売買に関わることはあります。話が突然小さくなりますけど、私にもある。たとえば、依頼者の会社が破産するので、不動産を売却して返済にあてることになった。私としては、信頼している不動産の仲介業者を紹介して、あとは破産管財人と仲介業者にお任せしておいて、取引の中身にはタッチしない。この場合、仮に「仮装売買」が行われたとしても、私なら「管財人と仲介業者に任せてあるから一切知らん」で済ませることになる(もちろん過去にそういう例はないです)。あとは、相続がらみの問題で、不動産の一部を売ってみんなで売却代金を分けることになったとする。その場合は、信頼する司法書士に依頼して、代金が決済されたのを確認してもらった上で登記の移転をしてもらう。この場合、代金が支払われたことを私と司法書士が確認するので、「仮装売買」はありえない(それを行う利益や理由がない)。土屋元会長ほどの偉い方が、取引の中身にタッチしておきながら(もし売却先を紹介しただけで中身に関わってないなら、釈明せずに「知らん」というでしょう)、売却代金について確認せずに登記を先行させたのが、弱小な一弁護士にはよく分からないところなのですが、そのへんは弁護士としてのコンプライアンス精神を発揮して説明してほしいなあと思っています。