妊婦失血死事件の今後は
少し前に書いた福島の妊婦失血死事件について、その後の動き。今朝の新聞記事等によりますと、福岡地裁で医師に無罪判決が出たことに対し、検察側は控訴することを断念したとか。このまま判決から2週間を経過すると無罪が確定します。では、今後この事件はどうなるのか。無罪が確定するのは刑事事件のほうですが、民事事件が残ることが考えられる。この件ではどうなっているかは存じませんが、遺族が医師の過失を民事事件で追及することがある。民事事件は刑事事件とは異なる裁判官が担当するし、刑事事件の結論に拘束されないので、民事では医師の責任が認められて賠償責任が発生することは、可能性としてはある。また、死亡させた責任までは問えないとしても、死に至る経過について説明を尽くしてくれなかったという「説明義務違反」を理由にして、賠償責任が認められることもある。(この事件の実情を私はほとんど知らないので、あくまで一般論として捉えてください)一方、これを刑事事件として立件した警察や検察、ひいては国の責任はどうなるのか。この医師は逮捕され、ほどなく保釈されたようではありますが、何日間かは留置場に入れられている。その後無罪判決が確定した場合は、刑事補償法に基づき、1日あたり12,500円以下の補償金を受けることができる(4条)。それから、新聞で報道されているところなどによると、ある検察首脳はこの事件について、「何であんなものを起訴したんだ」と言ったとか。不当逮捕、不当起訴ということで、捜査を担当した警察官や検察官の責任を追及することはできるか。この点は国家賠償法によりますと、公務員の過失は、国または県が賠償することになっている。だから、日本国または福島県に対し、賠償責任を追及することが考えられる。では、この事件を担当した警察官・検察官に過失は認められるか。じっくり刑事裁判をやった結果として無罪が判明したとしても、事件当時は非常に嫌疑濃厚な容疑者も存在する。結果論として無罪になると直ちに過失ありとすれば、警察や検察は萎縮してしまって果敢な捜査ができなくなります。本件は、いま思えばかなり「無理」な立件であり、逮捕までしてしまったことも行き過ぎだったかも知れません。しかし当時の遺族感情を踏まえて、警察・検察がこれを刑事事件として立件したこと自体までが過失であって違法だといえるかというと、かなり微妙だと思います。具体的な事実経過を知らないので、とりあえずこの程度にしておきます。ついでに私ごとですがウチの妻(妊婦)の経過はおかげさまで今のところ順調です。