法曹人口問題についての考察
最近の法曹人口問題の動きについて。私も弁護士の端くれとして、この話題には触れないと、と思っていましたので書きます。「司法改革」の一環として、司法試験の合格人数を年間3000人程度にするという政府の方針について、日弁連の宮崎会長が「法曹の質を確保するための見直しをすべきではないか」と言ったとか。それに対して、政府側の町村官房長官は、今さらそんなことを言い出すとは「見識を疑う」と言ったらしい。司法試験の制度改革についてはここでも何度か書いたと思いますが、少し前までは合格人数が毎年4~500人だったのが、私が合格した平成10年では800人、最近では2000人程度になっている。なぜ司法試験の合格人数を増やすかというと、裁判官の数を増やして裁判の迅速化を進めることや、弁護士の数を増やして競争させて依頼するときのコストをさげたいなどの、経済界の要望に基づくものであると(他にもいろんな要素はあるかも知れませんが)一般的に言われています。しかし、司法試験の合格人数を増やしてみたものの、裁判官や検察官はそれと比例して採用人数が増えているわけではなく、弁護士になる人だけが加速度的に増えている。それで、これから弁護士になろうという司法修習生には、都市部では採用してもらえる弁護士事務所がないという就職難の状況が増えているようだし、現在弁護士をやっている人でも、今後競争激化による収益の悪化を不安に感じている人もいると聞きます。さて、これらの現状を前提として、この問題について触れてみたいと思うのですが、論点としては、・法曹の質の確保のために適性な司法試験の合格人数はどれくらいなのか。・合格人数を増大させることによって弁護士に競争を行わせるのが果たしてよいのか。・日弁連会長が言ったように、合格人数増大という政府方針は見直すべきなのか。これらの点について、収拾がつくのかどうかわかりませんが、私の個人的な考えを次回以降に述べてみたいと思っています。(司法試験改革にからんで、法科大学院制度については過去の記事に何回かに分けて書きましたので、興味ある方は合わせてご参照ください。長いですけど)