再審無罪判決に思う 続き
昨日の記事をアップした後、富山の再審無罪事件と、裁判員制度について引き続きあれこれ考えておりました。元被告人は今後、刑事補償や国家賠償の手続きを取るとおっしゃってるようです。あの立場におかれた人からすれば、当然のことでしょう。無実の罪で服役した人に対しては、刑事補償法という法律に基づき刑事補償が支払われる。調べてみたら、補償金の額は1日あたり1,000円から12,500円。安いものです。さらに、公務員の違法な行為によって損害を受けた者は、国家賠償法という別個の法律に基づき、賠償金を請求することができる。これが国家賠償です。刑事補償は、公務員に違法行為があったかを問わない。仮に事件当時の状況からして、誰が見てもその人が犯人だと疑うような、やむをえないような事情があったとすれば、警察や裁判所のやったことは違法とまでは言えない。それでも結果的に間違った裁判で人を服役させたのだから補償金を払おう、という趣旨です。国家賠償は、公務員の違法行為を前提とする。当時の状況からして、犯人と疑う状況は全くなかったのに警察が逮捕したとか、普通の裁判官なら誰だって無罪判決を書くだろうのに単なる偏見で(こいつは顔がスケベそうだからとかの理由で)有罪にしてしまったとか、そういう場合に賠償金を請求できるということです。刑事補償法に基づく補償金では損害を償うに足りないということであれば、その損害額と、刑事や裁判官の違法行為を立証すれば、国家賠償法に基づく賠償金が取れる。裁判で国家賠償を請求するということになれば、当時の捜査や裁判に果たして違法な点はなかったのかが争点となるでしょう。そうなると被告・国側は、当時の刑事や裁判官から事情聴取せざるをえなくなるだろうし、場合によっては法廷でそれらの人が尋問を受けるかも知れない。なぜ冤罪が起きたのか、富山の事件で元被告人の方が知りたがったことは、国家賠償請求訴訟の裁判でいくらか明らかにされるかも知れません。と、ここまで書いて話はまた裁判員制度に戻ります。裁判員が関わって有罪となった事件が結果的にひっくり返って無罪となり、その被告人が国家賠償請求訴訟を起こしたとき、当時の裁判員は事情聴取を受けたり、法廷に呼び出されたりすることもあるってことになるのでしょうか。それらを考え出すと、なおのこと、裁判員にはなりたくないなあと思ってしまいます。