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映画大好き夫婦のパリ新婚日記

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2008.08.02
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(今回はネタバレというか、ストーリーバレありです。)

初めての経験をしてしまった。

フランスへ戻ってきて以来というもの諸々の疲れがなかなか取れず、自分でも信じられない事に
4夜連続で24時前に就寝していたほどだと言うのに(こんなの20年ぶり??)、
長めの映画の苦手な私が9時間の大作『人間の条件』を観るとは・・・。




映画館Reflet Medecisに着いた時に
今回の上映に使われるのがフィルム映画ではなくてDVDだと分かった。

主人に聞くと『人間の条件』のDVDはフランスでも既に発売されているらしい。

そう聞いて、
「どうせいつかディノがDVDを買ってきそうだし、そうしたら家で観賞できるから
今日は無理して全部観なくてもいいや。
(本当は全部で六部だけど)第一部と第二部だけにしようかな」
なんてつい考えてしまったけど、
蓋を開けたら、最後まで一気に観ずにはいられない作品だったのね・・。




実はストーリーに関して言えば、納得できない点が無い訳ではない。

まずは、主人公梶(仲代達矢)の盲信的な社会党崇拝の姿勢。

その説明は作中に全くもって無い訳ではないのだけど、度合いが過剰に思えてならなかった。

その他にも、真っ直ぐ過ぎて不器用なところもある梶の生き方に
(仲代達矢の熱演も加わってか)イライラしそうになる事もあったし。

足元の草を入念に見つめ過ぎるあまりに山を見据えられていない気がする事もあったけど
極限の状況に置かれているのだから、仕方ないのかな・・・。

うん、このぐらいまっしぐらな人じゃないと、こうは生きられなかったのかも。

それにしても、第二部の終盤で見せしめの為に中国人数人が処刑される事になった時、
それを阻止しようとあちこち奔走する梶に収容されている中国人のリーダー王享立(宮口精二)が
「これを止められるかどうかで、君がどういう人間だから決まる」
と言った主旨の事を言い、梶はそれから一層追い詰められるのだけど、
このあたりを観ている最中は主人公を駆り立てる情熱がヒューマニズムから生じるものなのか、
それとも
「尽くしたからこそ、信用してもらいたい」
という人間味溢れすぎな願いによるものなのか分かりかねたなぁ・・・。

もちろん彼のした事は、彼にしか出来ない事で凄いとは思うけど。

(しかし、収容されている人々のためにあそこまで出来る彼だからこそ、
今後もあの職にとどまれる様に考えて行動してほしかった気もする。)




とは言っても、主人公が満州の鉱山で収容している中国人の労務管理をさせられ(第一・二部)、
次に北部の前線に兵士として駆り出され(第三・四部)、
現地で終戦を迎え妻(新珠三千代)の元へ戻ろうと苦闘し、
その途中ではロシア人に収容されたりもする(第五・六部)という長くて重い軌跡を
9時間にまとめ、私でも最後まで観られる様に製作したのだから真の傑作と言えるのだろう。

私が戦争映画をあまり観ないのは「残酷だから」というよりもむしろ
「(こういう映画に慣れていない私には)戦いの状況がややこしくて分かりにくい」という理由と
「(こんなではいけないと分かってはいるのだけど)戦争そのものに関心がもてない」という
理由の2つがあるのだけど、
この作品においては戦いそのものよりも人間の生き方に重点が置かれていて
(1つ目の問題点クリア!)、
しかも、目の前の出来事に100%ついていくのに飽きてしまった時も
美しいカメラワークに見とれている事ができるので(2つ目の問題点もクリア!)、
最後まで一瞬たりとも「早く終わってほしい」とは思わずに観られたのだろう。

どうしても観賞疲れの出てきた第五・六部では、
延々と歩く梶達の動向を一瞬たりとも追うだけの気力がなくなってしまい
危うくももてあましてしまいそうになったけど、
まさに「動く絵画」とでも呼びたくなる様な美しい自然の風景に見入る事で
映画の世界に自分の意識を留まらせておく事ができた。




カメラと言えば第二部の終盤で、
処刑の番の回ってきた高(南原伸二)が日本人に乱暴に連行されるシーンでは
カメラが半回転するかのごとく暴れていたけれど、
彼が自分の意志と足で死へ向かって勇敢に歩き出したところから、
カメラが通常の水平な角度に戻り、固定されたのは忘れられない。

結局梶は、その数秒後に彼の母国愛に満ちた叫びと日本人のあまりの残酷さを目にして
心を突き動かされるのだけれど、カメラがいつも通りに直ったあの時点で
人間としての尊厳を完璧に取り戻したのかもしれない、なんて思ってしまった。




第六部の最後、雪降るロシアの地を息も絶え絶えに妻の方へ向かおうと歩く梶の表情が、
『乱』(黒澤明、1985年)の、燃えゆく城の中を呆然と歩いていた秀虎(同じく仲代)と
重なった。

なかなか語ってもらう機会も、耳を傾ける機会もない「戦争時代の話」を
まざまざと、でも分かりやすく、あらゆる側面から見せてくれた映画でした。

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1番上の写真はReflet Medicis内にあった小さいポスターです。
この8月、日本映画を上映するそう。






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最終更新日  2008.08.05 05:35:59
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