最初の数日
入院して、最初の数日というのは、大抵、主治医の先生から、あまりいいことを言われた覚えがありません。いいことを言われないという程度ならいいですが、最初の時と今回、絶望的な事を言われ、家族・・・というより、一族が絶望感を味わいました。最初に入院した時、肝臓の調子がかなり悪いと言われ、移植しか手はないと主治医の先生が一人で大騒ぎをして、結局最後には、移植しなくても、癌を取る事が出来ましたが、一族は本当にボロボロになるほど、人間関係や人間性がむき出しになり、嫌な思いをたくさん味わいました。今回、主治医の先生は、以前の先生とは違うのですが、この先生も、入院してたった二日で肝臓の数値が上がらない、移植しか無いと大騒ぎをし始めて、何度も私に連絡をしてきて、移植しか無い、お金の都合をつけてドナー登録をするのが一番だとか、ドナーはいないのか、とか、追いつめるようなことを言うので、私はすっかり先生が嫌いになり、食欲もなく、生きた心地のしない数日を送りました。二日前にも、明日、急に数値が良くなるとは思えないから、移植の準備をした方がいいという連絡をもらいました。準備と言ったって、ドナーになってくれるような人はいないし、ドナー登録をしたところで、すぐにドナーが見つかる訳ではなく、その間に、王さまの癌がどこかに転移してしまったら、移植の意味さえ無くなるという、事実上、手の施しようがない状態で、先生ははっきりとは言いませんでしたが、入院し続けて、今の治療を続けるのも無意味だということでした。私の希望で、癌の治療ができないかもしれないということは、王さまには伝えないよう、お願いしていたので、王さまは何も知らず、しかし、治療ができないということは伝えなくてはいけないので、明くる日の検査の結果を見て、あまりショックを与えないよう、先生と私で相談して、王さまに本当のことを少しだけ言おうという結論になりました。王さまの友人も、「何もできない」と悔し泣きをしながら私や王さまの心配をしてくれましたが、本当に、誰かに何かができるわけではなく、私は、小さなももちゃんを抱きながら、もう、色々な事を覚悟する時期にきた。と感じていました。そうして、ももちゃんを実家の母に預けて、病院へ向かおうとしたとき、また主治医の先生から電話があり、何を言われるのかとビクビクしていたら、あっさりと肝臓の数値が良くなったと言われました。もうちょっと治療をしたら、癌を焼くことができるくらい、急に良くなったそうです。・・・なんなんだ。昨日、急に数値が上がるとは思えないと言っていたのに、上がったじゃないですか。上がったことはすごく有り難いです。何に感謝したらいいのかわからないけれど、とにかく感謝です。そういえば、先日、すごく良いと言われている漢方のお薬を買って来て飲ませたのが効いたのかもしれません。けど、お医者さまはちょっと騒ぎ過ぎなんじゃないでしょうか。経過を見ながら、最悪の場合にも対処しようとしているのだろうけれど、それにしても、入院して二日目から効果がないと騒がなくても・・・。しかも、まだ二日しか治療していないのに、「普通はこのくらいで効果が出るんです。もう、これ以上はやっても無意味だと思います。それだけ肝臓が悪いんです」って、八日目で効果が出ただろうが!!と言いたい。本気で、転院して、もっと肝臓に詳しい先生に見てもらった方がいいのではないかと考えてしまいます。やれやれ。とりあえず、王さまの肝臓の状態は、まだ救いがある状態だったようなのですが、何だか知らないけれど、移植、移植とすすめられます。移植だって、危険性は高いのに、その危険性のことは一切、説明無しに、するなら、大学病院に行ってくれ。と言われても・・・。あんまり騒ぐから、じゃあしないといけないかな、って思わせられるのですが、これは、何かの魔法なのでしょうか。あとで全てを私の口から聞いた王さまは、「そんなことくらいじゃ驚かん。何回、もうだめって言われたと思うんだ」と、あまり気にしていない様子でしたが、まあ、あまりいい気持ちではないと思います。なんでもいいから、このまま無事に癌の治療が終わりますようにと願うばかりです。