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カテゴリ:おしん
おしんが、切り身の魚を粕漬にしている。 それを、ひさが側でみている。 「魚が売れ残るんやったら仕入れ減らしたらどうや?」 ひさがおしんに言った。 「大丈夫です。この頃はわざわざ注文受けて作るぐらいなんですから」 おしんは、器用に手を動かしながら、答える。 「田倉さんが、御用聞きにまわっとんのが反対やなぁ」 おしんの手が止まった。 「あんたな、行商してたときより、売り上げ減ってんと違うか?」 おしんが、決まり悪そうな笑みをうかべ、軽くうなづく。 「やっぱりあんたが魚もってまわらな、、 せっかくついてくれたおきゃくさんだってなはなれてしまうで」 「今、お茶入れますから、、』 そういっておしんは、話をそらした。 「そらな、他に競争相手がおらんのだったらええで。 いまでも魚の行商はようけ、出歩いとるんやから そんな御用聞きなんてのんきな商売しとったら、お客さん、みんな とられてしまうがな」 ひさにむかって困った笑顔のおしん。 竜三が御用聞きをしている。 「おはようございます、魚屋です。今日はごようございませんでしょうか?」 奥からいつものおしんのひいきの客が出てくる。 「なべにするものがほしんだがな」 「鍋ですか?」困惑の表情になる竜三に 「あはは、、だんなさんにはわからへんわな」 竜三は台帳から、今日の魚の一覧をみる。 「ええわ、ええわ、後で店に行くよってな」 「すいません」あたまを下げる竜三。 おしんの家の居間。 おしんが、鉄瓶から湯を急須にうつし、ひさにお茶を入れている。 「おかみさんの言う通りなんです、でも、あの人が自分でやるっていってくれたもんで、、」 「なんぼ田倉さんがそういったってなぁ、商売のこと、考えねば、、。」 「あたし、これでいいと思ってるんです。たとえ商いが減ってもこの商売に自分からうちこもうとしてくれてる。あの人の気持ちを大事にしたいんです。 せっかく店だしてもいつまでも私が表に立ってるんでは、やる気なくしてしまうんではないかしら この店はあの人が主人なんです、だから一日でも早く、この店はおれがやっているんだ、と、そういう気持ちになってもらいたいんです。 責任もってやってるうちに色んなこと覚えるだろうし。 あの人はあの人のやり方で自分なりの商売のやり方おぼえていってくれるとおもうんです。 儲かるか、もうからないかは二の次にして、今は、あの人、たてていかないと。 私たち3年もの長い間、別れ別れで暮らしてきましたから」 おしんの話を、真剣なまなざしで聞くひさ。 しかし、徐々にその顔はほころび、満足しきった表情になっていく。 「わかった、ようわかった、あんたが、なんも感も承知でやっとるんやったらな、 余計な心配やった。そやなぁ、夫婦が仲ようやっていくことが、金もうけよりまず先やな。 夫婦がうまいこといったら、商売かてうまいこといく。」 ふさの言葉にやっと本物のえがおがでたおしんだった。 「おしん!」 竜三が帰ってきた。 「おかえんなさい、ご苦労様でした」 ひさをみて、 「いらっしゃい」と頭を下げる竜三 「何かあったんですか?」 「いやぁ、町に用足しにきたついでにちょっとよったんよ」 「どうぞ、ごゆっくり」 にこにこしてふたりをみるひさ。 「注文たい」 そういって御用聞きの台帳をおしんに渡す竜三 「ああ、今日もすごくあるじゃない」 「おしんがまわってたときの半分たい」 「そんなこと、、」 「この包みは、村のばっちゃんから町へ嫁に来てる娘さんにことづかったもんたい 配達の時に持っていくから忘れんようにな」 包みをおしんに渡す竜三 「あんた、そんなことまでして、、お人よしやなぁ」とひさ 「その代わり、お茶ごちそうになったりしとるんですよ」と竜三 「そこまでなったんやったら、田倉さんも一人前の御用聞きやなぁ、、」 そういって笑いながらひさは、お茶をすすった。 「おしん、鍋にする魚、どげん魚がよか?」 「そりゃぁ、鯛が一番いいけど、今はほうぼうもおいしいわね。」 「ほうぼうかぁ、、」下を向いて、納得する竜三。 そこへ客がきた 「魚屋さん」 「はい!」とおしんが答えると、 「よか、おいがでる」そういって竜三が客の方に走って行った。 ひさとめをあわせてわらうおしん。 「いらっしゃいませ」竜三が元気に声を上げる。 「煮魚にするもんあるか?」 「はい、今日は、鰈に、サバ、たちうおもございますが」 接客の様子を座敷からみているおしんとふさ。 「そやなぁ、鰈もらっとこうか」 「はい!」 「一匹でしたら二枚がよかとこですが」 「うちとこ8人やから」 「じゃぁ4匹ですね、おろしましょか」 「頼むわ」 竜三のやり取りをにこにこしながら聞いている二人。 接客の上達ぶりに感心しながらも、おかしくてしかたないといった 風のおしんとひさだ。 夜中、半纏を着たおしんが、書き物をしている。 竜三が入ってくる 「なんだ、まだ起きとったとか」 「あんた、佐賀にはなにも連絡してないんでしょ」 黙り込む竜三 「黙ってでてきたまんまじゃ、お父さんもお母さんも心配してらっしゃると思うわ。 考えてみるとね、私も佐賀を出てから、あんたには手紙書いたけど、お父さんにも おかあさんにもなんのれんらくもしてなかったのよ。 申し訳ないと思ってる。」 「そうだなぁ、、だまっとるわけにもいかんねぇ」 「夫婦で力を合わせて働いて幸せだってことだけでもわかってもらえたら、、」 おしんの言葉に笑ってうなづく竜三。 白い紙をびりびりと破る女。 まるで憎らしいもののように、力を込めて破っている。 そして、手で丸めると、それを畳にたたきつけた。 佐賀のあの姑だ。 「お父さん、すぐ伊勢さいって、竜三ば連れ戻してきてくんさい」 書き物をしている舅が、嫌そうな顔で姑をみる。 「魚屋さにすっためにあたいは、竜三ば育てたとじゃなかですよ」 「竜三が黙って家ば出てった時も、竜は男じゃけん、きっといつか立派になってかえってくっじゃろうってあきらめたとです。それがまぁ、、おしんのとこさ転がり込んで魚屋になって、、ようそがん情けなかこと」そう言って泣く姑。 奥では長男の嫁が聞いている。 書き物をやめて、舅が姑に向き合う。 「魚屋になんのがどげんしていかんとか。そいも夫婦で始めたとね。 こがんめでたかことはなかじゃろが。 喜んでやっても、連れ戻すとかなんとかって騒動すっことはなか。 祝いの手紙のひとつでもかいてやっとが母親の情というもんではなかか?」 舅の言葉に顔をそむける姑 「ほんなこと竜三がかわいかとない竜三の思う通りにさせてやらんば。 魚屋じゃろうがなんじゃろうが、親子三人そろうて食べていけるようになったとね。 なんでんいうことはなか。子供の困ったときには力になってやる。幸せな時には知らん顔してやる それが、ほんな、親の愛情ちゅうもんたい。」 長男の嫁がお皿をふきながら、舅の言葉にじっと耳をかたむけている。 歯を食いしばって憤る姑。 「竜三とおしんの仲をさいたとは、だいでもなか、母親のおまえたい。 はっきりいうとく。おいの目の黒かうちは、二度と竜三とおしんには手は出させん。」 姑が驚いて舅を見る。 「おきよ、もう母親の出る幕ではなか、、。なぁ、そん言葉、ようおぼえておかんば、、。」 そういって、舅は部屋から立ち去った。 その姿を長男の嫁がじっと見ている。 舅が立ち去ったあと、嫁が姑のそばにきた。 「おかあさん、竜三さんの荷物、伊勢さへ、送ってやっぎどがんですか? こんうちには、あたいどんがおるでしょうが。 竜三さんのもんは、おくってあげてくんさい。 お願いしますけん。」 嫁は深々と姑に頭を下げて頼んだ。 姑は黙って立ち上がり、自分の部屋に戻ると、障子をあけ、外を見た。 外には雨が降っていた。 「親より、やっぱり、女房の方がかわいようやっとか。 息子て、つまらんもんたい。」 竜三は、樽、おしんは、作業台を洗っている。 竜三が作業台に水を流してたわしが流された。 「わーー」と言って、それをすかさずおしんがひろい、 そのたわしで作業台を又、おしんがみがく。 「明日、少し、仕入れ増やしてみますか?」 作業台をたわしで洗いながら、竜三にたづねる。 「売り切れてしもうて、お客に謝るくらいのほうが、お客の信用もつくってもんたい。」 「なんだか明るいうちに店閉めてしまうのもったいなくて、、、、」 「まぁ、しばらく様子をみて、、」 そういいながら、樽を磨く竜三 「田倉さん」 「はいはい、、」 「郵便」 「あら、あんた、駅に荷物来てるって。」 「え?」 「佐賀から」 竜三の手が止まる。 柳行李をあけて、中から荷物を取り出す竜三 着物を取り出し、、 「おいのもんたい。」 「洋服に靴まではいっと」 手紙を渡すおしん「お母さんから」 竜三が手紙を読む 「おしんさんから、手紙ばもらいました。 魚屋の方はうまくいきよっとですか? 夫婦で店ば出したとか。 なによりでした。 あたいは竜三が不憫でずいぶん心配もしたばってん おしんさんと出直すつもりになったとばい、もうあたいがきばつかうことありません 伊勢で魚屋ば、一生の仕事にしたかとのこと、竜三も二度と佐賀さかえることはなかでしょ おめおめと帰るようなことがあってはなりません。 そだおもうて、竜三のものばみんなそっちさおくることにしました。 今までおしんさんも雄ばかかえてくろうしたでしょ よう竜三ばまっててくれやした どうか、竜三ば、お願いします。 雄もおおきゅうなったでしょ。 一度会いたかて思いますが、こいからはおやこ三人水入らずで仲よう暮らしてください」 読み終わると、おしんがうつむいた。 「おしん?」竜三がおしんの顔をうかがう。 「お母さん、あたしのこと許して下すったのね。あんな恩知らずなことして出てきたのに。 あんたのことまってたかいあった。」 「お前の気持ちが通じたとさい」 「あんた、きっといつか、ここにお父さんやお母さんにきていただきましょうよ。 きていただけるように、一生懸命頑張って立派なお店にして。」 「おしん」 「きていただけるように、ね」 「うん」竜三は、おしんをみて、素直にうなづいた。 佐賀の姑に許してもらえたことで、長い間おしんの胸に残っていたおもいしこりがようやくとけていった いつか佐賀の両親を伊勢にまねくことをゆめに、おしんは働き続けた しかし相変わらず、世間の不景気は深刻でおしんの店も掛け売りの代金を踏み倒されたりして なかなか思うようにはいかなかった。 が、夫婦が達者で働け、雄が素直に成長してくれることで、おしんには幸せな日々であった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.11.03 13:39:48
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