熱中症になりやすい高齢者 “温度センサー”反応鈍く
蒸し暑い日が続くようになり、注意が必要なのは熱中症。特に、高齢者は加齢のため体温調節機能が衰え、熱中症になりやすく、重症化して死に至ることもある。注意点をまとめた。 「『室内でも熱中症になるんですか』と驚く高齢者はまだいて、気分が悪いとか症状が出ても、熱中症と気付かない人もいる」 東京都老人総合研究所の野本茂樹研究員(環境生理学)は、熱中症について十分に理解していない高齢者がいることを心配する。 熱中症は、高温多湿や体内の水分の不足によって起きる症状の総称。重症度により症状や対処法が違う。 高齢者が熱中症になりやすい理由を野本研究員は「加齢で体温調節する自律神経の反応が鈍くなる」と説明する。例えば、体内の水分が不足しても、「のどの渇き」として反応するまで、若いころより時間がかかる。皮膚の“温度センサー”も鈍くなり、結果的に脱水状態や暑い環境に気付くのが遅れる。 汗腺も減っていて、発汗による体温調節機能も低下。体内の水分量も若いころより少ないため、脱水症状になりやすく、回復も遅い。「エアコンは嫌い」と利用しなかったり、トイレが近くなるのを避けて水分を控えたりすることも、熱中症になる要因だ。 健康に問題を抱えがちな高齢者ゆえの落とし穴もある。熱中症の症状の頭痛、めまいなどは日常でも起きがちな症状。そのため、熱中症に思いが至らないことがある。 熱中症は室内でも注意が必要だ。気温が二八度以上になると、掃き掃除やぞうきんがけといった日常的な活動でも続けていると、熱中症になる可能性がある。エアコンを使っていても、空気が乾燥することで皮膚から水分が奪われる。寝ているときも汗などで脱水状態になることもある。2010年7月14日 東京新聞予防の最大のポイントは、のどの渇きを感じていなくても、こまめに水分を取ることだ。ただ、水分だけの補給では不十分。発汗すると、血液中に0・9%程度含まれている塩分も排出される。そこで、水だけ飲むと、血液の塩分濃度を維持するため、水分を体外に出す「自発的脱水」が起きてしまう。水分とともに塩分の補給も欠かせない。そのために、水一リットルに小さじ五分の一程度を入れた食塩水(濃度0・1%)か、スポーツドリンクならラベルの栄養成分をチェックして、百ミリリットル中、Na(ナトリウム)が四十ミリグラム以上のものを飲むといい。野本研究員は高齢者向けに「麦茶〇・五~一リットルに、梅干し半分か、なければ漬物、塩昆布を一緒に食べて」と提案している。