テーマ:山登りは楽しい(12244)
カテゴリ:私の歩いた山と道
高千穂平を過ぎたあたりから、たくさんの下山者とすれ違った。マイナールートだと思っていたので意外だった。3連休も手伝ってか10名以上の団体さんもいた。
「たいへんやねぇ」と声を掛けてくれたのは、そこそこ高齢のグループ。ここを登るなんてまっぴらゴメンといいたげだったから、扇沢から柏原新道を登って、こちらで降りるというプランなのだろう。 「若い人や、どうぞ」と声を掛けてくれたのは、どこぞのオバちゃん。もう若くはないんだが。でも、自分はまだ若いと勘違いしているのは確か。自分なら、二、三十代の若者とすれ違っても「若い人や、どうぞ」などいう言葉は禅問答していても出てこない。 私に言わせれば、こんな急登の道は登るのと同じぐらい降りるのもつらい道だ。膝が強くないと痛めるし、足がガクガク震えるほど筋肉を酷使するところ。それを還暦近くになっても歩けていることには、正直敬意を表する。自分がその歳でもこんな所をうろついていられるか、まったく自信がない。『ある意味、若いのはそちらだろう』と思いながら、道を譲り、また譲られしつつ、歩を進めて行った。 「若いと勘違いしてはる人や、どうぞ」――山道において、これは大方の人にあてはまるかも。でも正しい表現が受け入れられるとは限らない。こんな言葉をかけていたら、いつかはすれ違いざまさりげなく谷底に突き落とされるだろう。 爺ヶ岳と鹿島槍ヶ岳を結ぶ稜線に出た。ここが冷乗越(つべたのっこし)。この読み方、なんとも語感が心地よい。 主稜線に出るや否や、猛烈な突風に煽られた。富山から信州側へ強い気流が発生している模様。霧雨交じりの冷風で、たちまちにウェアが湿った。ここから約10分で冷池山荘だ。冷乗越で一休みするゆとりもなく、山荘へ逃げ込むような気持ちで山道を急いだ。 冷池山荘に到着。上一枚と雨具を着た。それでも体が冷える。先ほどまで20度あった気温が14度まで一気に下がった。「冷」という地名もむべなるかなという心境。 山荘のお品書き。水一リットル150円。この辺りは水が貴重なようで有料だ。幸い足りていた。お湯一リットル200円。『おっ、そうと知っていたらカップ麺だけ持ってきたのに』と思った。 上着を着るためにベンチを借りただけで山荘を後にした。山荘に用事はなかったけれど無関係なわけではない。というのは、この冷池山荘にはAEDや衛星携帯が装備されているそうだから。 こちらのGIGAZINEの記事 衛星電話「イリジウム Extreme」を3Gが圏外になる山中で実際に使ってみた を少し前に読んだ。 66個の衛星が地球全面をカバーしていて、空が広く見えるなら、南極であれ太平洋のど真ん中であれ、どこでも繋がるのだそうだ。『ふーん、そういう時代なんだぁ』 私の携帯は山ではお話にならないソフトバンクだから、こういうサポートは心強い。 我が身になにかあったとき、山小屋は客かどうかに関わらず、持てる装備を総動員して全力で助けてくれるだろう。山小屋は行き交う登山者すべてを護ってくれているのである。 そう考えると保険代のつもりでお金を落としていくべきだと思ったが、思っただけに終わった。(次回があると思うのでその時に) 道端でよく目立っていたのはチングルマ。 このチングルマ、学術的にはバラ科の木に属する。つまり、ちいさな木である。チングルマから見ればハイマツも立派に「どこまでも深い森」だ。とはいえ、木か草かの定義は結構あいまいなものらしい。(参:Wikiの"木"の頁) 調べていて気付いたが、バラ科は花の形にあまり共通点が見られない。シモツケ、キジムシロ、ワレモコウ、ナナカマド、ヤマブキ、サクラといったあったりがバラ科だ。なんかバラバラ(おやじギャグ)。イチゴもバラ科で、チングルマの花とイチゴの花はかろうじて似ているといえるか。 高山はすでに秋色。お花畑のあとにチングルマが並んでいた。照らすまでもなく自ら光彩と絢爛にまみれて輝いていたあの者たちを見送ってのち、ひとりくたびれているその姿には、どこか取り外された祭提灯のような物悲しさがあった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.09.21 08:40:37
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