カテゴリ:文章修業
文章修業のために、いま読んでいる本は『文章心得帖』(鶴見俊輔著 ちくま文芸文庫)。
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480095800/ まだ読了していないが、読みはじめから引きこまれている。文章作法を説く本を読むことには、二重の面白さがあることに気づいた。なにが二重か、まずそれについて述べたい。 なにかを伝授する本、たとえばスポーツや料理の指南書だと、お手本は写真や言葉でしか表現されえない。頑張っても付録DVDの動画だ。言葉の先は、読み手が想像で補わないといけない。そこに書き手の安堵感が生まれるような気がする。安堵感とはすなわち逃げ道だ。それが許せない、とまではいわないけれど面白くない。ここから先はもう言葉では言い表せないのだ。でもその感じだけは掴んでほしいと言わんばかりの、ただ勢いにまかせた文章に、道場の門から放り出されることも少なくないからだ。 でも文章の指南書は違う。その指南書自体がお手本となる。お手本と教えが、隣り合うよりもさらに密な状態、一体となっている。書き手は逃げも隠れもできないのはもちろんのこと、説きつつ示さなければならない。一語、一文、一段落のありようが、つねに全体を揺り動かす緊張感に置かれる。まるでルービックキューブを完成させるかのような難題。それに挑戦する筆者の姿勢が、読みどころだと思う。 韻を踏みながらつくられる詩、その美の調べが芸であるなら、文章指南書における文体と文意の一致がつくりだす美も、言葉の芸である。素晴らしい文章作法の本であれば、それは実用書でありながら芸術的であるから、読み手はそこで二重の味わいに浸れるのだ。 この本はまず、文章の理想として3つの方向があると説く。「誠実さ」「明晰さ」そして「わかりやすさ」。 「わかりやすさ」の説明にこう書いてあった。 読者としての自分というのは重要であって、文章はまず自分にとって大事なんです。自分の内部の発想にはずみをつけていくものが、いい文章なんです。文章を書いているうちにどんどんはずみがついてきて、物事が自分にとってはっきり見えてくる。そういう場合に、少なくとも自分にとっては、いい文章を書いていることになる。とても気持ちよく納得できた箇所である。ここでいう「はずみ」を私は求めている。そして、独りよがりにならないように体裁を保って綴れたらと願う。それを目指して、カテゴリ「文章修業」を充実させていけたらと思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.01.14 17:23:07
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