カテゴリ:文章修業
前回に続いて『文章心得帖』より。
筆者の力説している要点は、紋切型の表現を避ける、というこの一点に尽きるといってよい。なぜ紋切型がいけないか、その理由を端的に述べている箇所は今さっと見返してみつけられなかったが、こういうことである。 紋切型を使ってしまうと、とたん文がその人から離れて行く。 書き手が見えなくなる。 フリーハンドで曲線模様が描かれてあって、それまでは歪んだりわずかに途切れたりして、多少ぎこちないながらも書き手の個性の見てとれる味わいある線が引かれてあったのに、突然に定規を用いたと思われる直線がピシッとあらわれて、それまでのリズムも雰囲気も台無しにしてしまう。加えて不味いことに、描き手は一向そのことに気づかず、むしろ逆に、どう?綺麗に嵌っているでしょと言わんばかりのしたり顔が窺えて、読み手は一気に興味を失ってしまう。 多数の例文をあげて、紋切型表現に頼ること、つまりは、手垢にまみれた陳腐な表現を用いることのデメリットを分かりやすく説明してあるので、よく理解できた。 しかし、ではどういう表現が紋切型なのか、と問われれば、それはちょっと説明しきれないようで、いくらかはセンスある者が多くを読めば自ずと判断つくものなのであろう。 どうすれば避けられるか。これは書かれてあった。少し長いが引用しよう。 紋切型から離れるためには形容詞を惜しんで、数少なく使う。動詞を主に使って書く。動詞を重んじるやり方が健全なんです。まだ私の修行が浅くピンとこないが、深い考察によるものであることは分かる。表現しがたい難しいことを、精一杯簡易な説明で伝えようとしていることも分かる。紋切型を避ける方法は高度過ぎて、会得するのにまだしばらくは修行が要りそうだけど、よい文章の条件は、誠実で、明晰で、わかりやすいこと、この3つの心得は忘れずにおこう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.01.16 00:35:43
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