第45回御嶽マラソン(フル)
2回目のフルマラソンとなる。初フルは去年の福知山で、序盤から飛ばしすぎて30kmを過ぎて潰れた。フルの洗礼を受けてボロボロになったあの時から11ヶ月。さて2回目はどうなるか、というのがありがちな流れであるが、ドッコイそうはならない。この御嶽マラソン、距離はフルでも普通のフルマラソンとは趣を異にする。 深田久弥はその著書『日本百名山』の御嶽山の項にて次のように書いている。普通御岳は日本アルプスの中に入れられるが、この山は別格である。そういうカテゴリーからはみ出している。北だの、中央だの、南だのと、アルプスは混み合っているね、そんな仲間入りは御免だよ、といいたげに悠然と孤立している。 御嶽マラソンもしかり。普通御岳マラソンはフルマラソンの中に入れられるが、この大会は別格である。そういうカテゴリーからはみ出している。東京だの、長野だの、福知山だのと、フルマラソンは混み合っているね、そんな仲間入りは御免だよ、といいたげに悠然と孤立している。 温泉地として知られる岐阜県下呂(げろ)市は御嶽山の西に位置する。下呂温泉の北、JR高山本線の駅でいうと5つ北上した所に、小坂(おさか)という小さな町があり、御嶽マラソンはこの町の役場的施設である小坂振興事務所をスタート地点とする。▲スタート横断幕のかかる小坂振興事務所前 小坂町から東に道が分かれていて、この道の最奥部が濁河(にごりご)という小さな温泉集落で、御嶽山の登山口ともなっている。私は今年6月にここから御嶽山に登った。 登山で来たときはこの大会の存在を知らなかった。今年の夏にネットのラン大会サイトで初めて知った。コースは登りのワンウェイ。景観は抜群。参加費\3,000とフルにしては安い。私好みの大会である。なぜいままで目にとまらなかったのか不思議だった。 スタート小坂の標高は523m。ゴールの濁河は1,700m。標高差1,180m。コースは舗装路で1.5~2車線の道を車と共有しながら走る。後半は御嶽パノラマラインと名付けられた道で、張り出したコーナーの先に御嶽山が望まれる展望のよい道である。ゴールは御嶽パノラマグラウンドという高地トレーニング用に設けられた400mトラックを一周してゴールする。ランナー心理をくすぐる檜舞台のフィニッシュが嬉しい。▲コース図(エイドは5kmごとの標と同じ位置にある)▲高低差 標高差1,180mもあるフルマラソンというのが御嶽マラソンの特筆すべき点で、「日本一ハードな山岳マラソン」というキャッチフレーズがついている。標高差3,000mの富士登山競走が日本一ハードではないか、あるいは日本一ハードなのは参加資格2:30切りの要るびわ湖毎日マラソン大会ではないかと、過酷度の基準によって意見の分かれるところである。また登山口までの舗装路を走るのであるから山岳マラソンというジャンルには該当しないのではないかと、紛らわしくてあやしいこのキャッチフレーズはさておき、この大会、去年までは公認だったようであるから、ランナーズの一歳刻みランキングを狙っていた人にとっては、ここの大会記録でランキング入りを狙うのは一番ハードな選択だったに違いない。ちなみに歴代の優勝タイムは2時間50分~3時間の間で、実業団レベルの走者でサブスリーなるかならないか。 標高差1,180mあるものの距離はフルだから、単純に計算すれば平均斜度は2.8度とおののくほどではない。しかし、登るばかりではなく平坦な所、下る所も少なからずある。気分的には起伏があって救われるが、平坦箇所は登りの傾斜を厳しいものにするし、下る箇所に至っては登りを倍も厳しくする。そのため私のいたレベルでは、登りで歩く者が多かった。 私は可能なら走り通したいと願っていた。傾斜がきつくなっても、前をいく歩く選手との差が縮まらないほどに速度が落ちても、安易に歩きに変えず頑張って、結果なんとか走り通した。なのでこう言える。傾斜はきついがなんとか走り通せる範囲で、頑張りがいのあるコースだ。 2009年。第45回目となる御嶽マラソンは10/11(日)に開催された。受付は7:00~7:50。開会式の後、スタートは8:30。 前夜に駐車場で車中泊した。am7:00起床。着替えをして7:30に会場へ。参加者は名簿で240名だから、広くない施設でも混雑していないのが嬉しい。 受付をしまして更衣室でゼッケンを取り付けた。前後ゼッケンだ。アップダウンの多いロングコースでは、抜きつ抜かれつの展開になるから、お互いを認識しやすい前後ゼッケンはこれも嬉しい。 でも、前後ゼッケンなのはそういう配慮で用意されたものではなさそうだ。というのも、スタート前にあったコールのときのこと。コールというのは、係員にゼッケン番号を告げて最終出走確認をするだけのものなのだが、その手続きをする意味があるのかと冷やかし気味につぶやく選手がいた。隣の人が「これは昔の陸上競技の名残やな」と。ふーん、ちょっと古風なのか。というかそういう手続きやしきたりを大切にしている大会なのであろう。 ところが計時はシューズに付けるチップである。ゴールしてすぐにタイムと順位の入った完走証を手渡してもらえた。新しいシステムの導入にも積極的なのである。でもでも!でもなのである、コース中では立つ係員がゼッケン番号を読み上げて、通過を確認する箇所が何ヶ所もあった。普通チップがあればピーピーなるゾーンで済ませるところを、スタッフによる目視で。 しきたり重視なのかは知らないが、ともかく古風なことはよい雰囲気を出していると私には感じられた。 <つづく>