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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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ゴロワのブログ GAULOISES1111さん
Tomy's room Tomy1113さん
2008.01.29
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カテゴリ:Movie
そして、もう1つ、リー監督作品の大きな特徴は、ラストシーンに常に「余韻が残る」ということだ。まるで寺社の鐘をついたあと、残音が長く空中に尾を引いているようで、極めて東洋的な中庸の精神を感じさせる。彼の映画はほとんどが、救いのようない完全な悲劇で終わることはなく、といって典型的ハッピーエンドもない。自分の価値観やメッセージを積極的かつ明示的に見るものに押しつけるのではなく、観客の解釈と想像力にその後をゆだねる「間」を残したまま、物語の幕が閉じる。これはあらゆるリー作品に共通しており、おそらく新作「ラスト、コーション」でも変わらないのではないかと思う。

だが、実は個人的にはリー監督の作品には、映像や物語作りが巧みであればあるほど、ある種の「苛立ち」を感じることがある。繰り返し強調するが、「ブロークバックマウンテン」は、映画作品として、よくできている。できすぎている。それは間違いない。だが、「宗教的タブー」がテーマといいながら、実際には観客は別のものに感動し、明らかに違うものに感動させるように作っている。そのあたりに何か「ずるさ」といっては大げさだが、「甘さ」を感じないでもないのだ。その甘さこそ、大衆を惹きつけるリー監督のロマンチシズムなのかもしれないが。リー風ロマンチシズムに何の疑問もなく耽溺できるタイプなら、作品に何も文句はつけないだろう。だが、Mizumizuのようなひねくれた人間には、リー監督の仕掛ける「甘やかな罠」に、簡単にとらわれたくはないというジレンマがあるのだ。

これは「グリーンデスティニー」でも感じたことだ。白い衣をまとい、緑の竹林を妖精のように飛び回る男女2人の武侠の動きは、それこそ子供のころに見た夢のように美しく、視覚的には感動するが、それをここまでストレートに見せられると気恥ずかしくなる。大の大人がこんなシーンで喜んでいいのかな、などと思ってしまうのだ(実際には、相当喜んで見てしまっているのだが)。戦いながら互いの見つめる男女の顔のカットもあまりに美的すぎる。「戦っている」というよりも「魅了しあっている」という感じだ。ぶっちゃけ、少女漫画のカット割りのようなのだ。リー作品では常に、感動してしまいたい自分と、こういう内容であからさまに感動してしまっていいのか、と問う自分がせめぎ合う。こうした混乱をMizumizuの中に引き起こす監督はアン・リーだけだ。

ブロークバックマウンテンにもっとも感情移入するのは、社会的に抑圧された同性愛者では、おそらくない。だからこそ、アメリカのゲイコミュニティの一部から「自分たちの本当の姿は、なんらすくいあげていない」と批判がでる一方で、一般の多くの観客を集め、大ヒットしたのだ。社会的マイノリティの代弁をした映画で、ここまでの興行成績をあげることは不可能だ。また、キリスト教的価値観に対するアンチテーゼでもない。あくまでも、そうした社会に生きる「人間」の人生を見つめた、感覚的なラブストーリーなのだ。それでいながら、ありきたりの通俗性に陥らないところが、リー監督の円熟した表現者としての手腕であり、あまたの映画賞が証明する、批評家からの高評価には違いないのだが。そうしてみると、やはりリー監督にとってもっとも重要なテーマは、人生、そして愛であり、「宗教的タブー」や「民族的タブー」は、それを語るためのとっかかりないのかもしれない。ブロークバックでジャック役を演じたジェイク・ジレンホール(ギレンホール)も、「愛を語らせたら、彼以上の人はいない」と言っている。

「ラスト、コーション」はまだ見ていないが、民族的タブーに挑んだといいながら、たとえば中国本土から香港へ、ノーカット版の「ラスト、コーション」を見に中国人が押し寄せたのは、歴史に翻弄された同じ民族の人間が、その時代に自分の生き方をどう選択したか見つめるためではない。激しいラブシーンが目当てなのだ。こうした観客の好奇心と通俗性をうまくくすぐる術をあまりにリー監督という人は熟知しすぎている気がする。この新作もベネチア金獅子賞に輝き、ヨーロッパでの評価は高いが、肝心の「その歴史を体験したはずの」中国や、同じく抗日運動の歴史をもつ韓国からは、テーマそのものがよく描けているか否か、登場人物の生き方をどう考えるかという批評より、ラブシーンがカットされたとかされないとかといった話題ばかりが伝わってくる。

中国本土ではそもそも、最初からこうしたテーマの映画が、ズタボロにカットされることはわかっていたが、そのとおりになった。カットされてしまったら、正当なテーマの評価は誰もできなくなってしまう。中国政府はいい加減にしてほしい。自分は中国人であるというアイデンティティを強くもつ世界的監督の作品が、中国本土でマトモに上映されないなんて状態はあまりに不自然だ。「売国奴を美化している」という批判はかまわないのだ。だが、「だからカット」してはいけない。リー監督の母国、台湾での評価はあまり伝わってこないが、台湾はもともと親日的だから、中国本土や韓国の観客とは受け止めかたが違うだろう。

その一方で、「ラスト、コーション」も、前作ブロークバックと同様、多くの観客を集めている。「ブロークバック」が、「友情から秘密へ」「これは普遍的な愛がテーマ」と言って2人の成熟した男性の性愛の世界をきれいなオブラートに包んだのとは逆に、「ラスト、コーション」では、戦争にからめた民族的タブーという大きなテーマがあるはずなのに、2人の男女の扇情的な濡れ場ばかりが宣伝に使われている。こういうのを見ると、一般ピープルの通俗的な願望を見抜いたうえでの制作サイドのあからさまな戦略を見るようで、そこにまた、なんとなく「苛立ち」を感じてしまう。以前日本で「有名女優を脱がせるために、文芸作品をやたらと映画化した」みたいな時代があった。あれに似たものを感じるのだ。映画館に行ったら、若い美人のハダカ目当ての中年のおっさんがやたら多いんじゃないか…とかね。

とはいっても、映画は見てみなければわからない。なにしろ、ブロークバックも最初、「ゲイのカウボーイの映画ぁ? ちょっとなあ…」と思ったのが、皆が「いい、いい」と言うので見てみたら、期待以上の「驚愕的完成度」だったのだから。女スパイが敵に心を奪われるという、それだけ聞いただけでは見る気にもなれないあまりに通俗的な「ラスト、コーション」の設定を、どう通俗的でなく見せるのか、リー監督の手腕が楽しみだ。

XXXヒースのその後XXXX

ところで、イギリスのメディアも、「ヒースの死因はオーバードーズではないかもしれない」と伝え始めた。体内からは致死量には到底およばない毒しか検出されなかったとのこと。

また、ロスでナオミ・ワッツやミシェル・ウィリアムズ(娘のマチルダも)、それにヒースの家族が参列した、内々の葬儀が行われたあと、ヒースの遺体はどうやらオーストラリアのパースに向けて出発したらしい。
パースでは公的な葬儀が行われるようだが、詳細はまだ未定。






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最終更新日  2008.01.30 13:56:04



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