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3月7日付けの読売オンラインに、以下のような記事が掲載された。
XXXXXXXXXXXXXXXXXXXX 日本占領下の中国描く人気映画、主演女優CMを放送禁止 (読売新聞) 【北京=佐伯聡士】7日の北京紙「北京晨報」によると、中国で昨年公開され、大人気となった映画「色、戒」(邦題・ラスト、コーション)の主演を務めた女優、湯唯(タン・ウェイ)が出演するテレビCMなどが国家放送映画テレビ総局の指示で放映禁止になった。 北京、上海のテレビ局関係者が同紙に対して、「上級機関の指示に従って行った」と明らかにしたという。理由は不明。 同映画は、日本占領下の上海で、抗日運動に参加した湯唯演じる女性が日本の傀儡政権下で特務を指揮する男性(トニー・レオン)に色仕掛けで接近し、禁断の愛に堕ちるラブストーリー。 中国国内の上映では、大胆な性愛シーンがカットされた。また、日本に協力する「漢奸(民族の裏切り者)」を二枚目男優トニー・レオンが演じたことなどから漢奸を美化し、「愛国烈士」を侮辱する作品としてインターネットで激烈な批判が出ていた。 香港紙「東方日報」は「映画を見た中国の指導者が不愉快になったことが原因」と報じている。 XXXXXXXXXXXXXXXXXXXx 『ラスト、コーション』は、中国本土公開用では大幅にカットされたため、ノーカットシーン見たさに本土から香港へ中国人が押し寄せるという珍現象まで引き起こした大ヒット問題作。 日本ではそれほどの人気にはならなかったし、まったく政治的な作品ではないから、右翼からも左翼からも特段注目されることはなかった。そもそも、リー監督は漢奸(トニー・レオン演じるイーを中国ではそう呼ぶらしい。ホント単純だなあ…)を美化などしていない。彼は常に自分の行動によって自分自身の精神が引き裂かれている。彼が社会的に破滅することは最終的にはわかりきっている。 タン・ウェイ演じるチアチーに愛国烈士というレッテルを貼るのは勝手だが、その愛国烈士は中国人によって利用されるだけ利用された。利用した組織の幹部はコトがばれると、部下を助けようともせず、1人でちゃっかりトンずらした(なんとも「ありがちな」行動原理ではないか。リー監督はさすがによくわかっている)。中国の指導者にとってもっともイタいのは、中国という国が、こんなふうに若者の純粋さを利用し、ポイ捨てにしていることをこの映画が見せてしまっていることだろう。もちろん、愛国烈士が漢奸にホれてしまうというストーリーも許せないのかもしれない(けど、そんなの、ありがちな設定じゃん)。漢奸=悪玉、愛国烈士=善玉というようにレッテルを貼り、常に悪玉は善玉に「やっつけられなければ」満足できないのだろうか。なんとも幼稚な精神だ。 そして、「中国の指導者が不愉快になった」からといって、主演女優のCMが放映禁止になる。マトモな先進国では決してありえない。しかも、監督は世界的な名声を得ている台湾出身のアン・リー監督。すでに書いたように、中国人としてのアイデンティティを強くもち、中国の文化を世界に広めたいと思っている人だ。たとえば彼は、ハリウッドで知らない人のないサムライ文化に対して、中国には武侠という存在があることをアピールしていた。サムライとどう違うかと聞かれて(見るからに全然違うじゃん)、「サムライは階級だが、武侠は生き方。武侠は、ときに盗賊にもなり、英雄にもなる」のだと丁寧に説明していた。 そのリー監督の作品に主演し、好評を博した女優に対してこの仕打ち。中国というのはこういう国なのだ。権力者が「気に入らない」という理由で、放送が出来なくなる。そういえば、NHKの「激流 中国(英題: Dynamic China)」も、ネット上に中国語の字幕つきの海賊版が出回ると、「中国では伝えられない、国の本当の姿がある」と中国人の間で大反響を巻き起こし、危機感をいだいた中国政府がネット上での閲覧を禁止にしたという経緯がある。 「激流 中国」は決して中国に対して批判的な内容でも、マイナス面を強調するプロパガンダ的な番組でもなかったし、結構中国とその民衆に対して配慮がされていたと思う(ま、NHKだしね。中国政府に不利になる報道すると、すぐ抗議が来るし、中国での取材も制限されてしまうのだ)。あくまでも急激な成長を遂げる中国の姿を伝えつつ、それに付随して起こっている問題に着目したドキュメンタリーだ。にもかかわらず、一般人が「見られないように」してしまう。さすが北朝鮮の親玉だ。 中国を変にヨイショするジャーナリストも日本には多いが、少なくともMizumizuは「中国でなく、日本に生まれてよかった」と心の底から思う。もちろん日本にも権力者の汚職はある(そして、これは中国人お得意の台詞でもある。「そういう問題は中国だけではなく、どこの国にもありますよね」。ハイハイ)。だが、程度と制度があきらかに中国とは違う。日本のほうが一般民衆にとってははるかに、格段にマトモな国だ。日本人がそういう国を自分たちの手で作ってきたのだ。 対して、中国はどうだろう? 悠久の歴史を常に自慢し、大国意識をもちながら、いつまでたっても法の支配が徹底した近代的な国が作れない。なんでもコネとカネ次第だ。いくら経済的に成長しても富の配分の偏りは目を覆うばかりで、下々の民衆は信じられないような貧しい生活を強いられている。最近では世界中に「毒」を撒き散らす。政府のお偉いさんが、「あの女優のCMは流すな」というと、そのとおりになってしまう。こんなあからさまに歪んだ国には決して生まれたくないし、住みたくない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.03.08 11:05:59
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