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Mizumizuのライフスタイル・ブログ

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Tomy's room Tomy1113さん
2008.03.19
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カテゴリ:Movie
まったくの偶然なのだが、マストロヤンニもマレーも24歳になる直前に、ヴィスコンティとコクトーという名演出家に出会っている。

1948年、マストロヤンニはローマの大学演劇センターで舞台に立っていた。ある日、女優ジュリエッタ・マシーナがマストロヤンニ所属の劇団の舞台出演を引き受けてくれ、それが話題となってルキーノ・ヴィスコンティ主宰の劇団支配人が観劇にやってくる。そこで彼の目に留まったのがマストロヤンニだった。

支配人は彼の楽屋に来て、俳優としてやっていく気があるかと尋ねる。勤労学生だったマストロヤンニはわりあい軽い気持ちで、「はい」と答え、支配人の手配でローマのスペイン広場にあるティールーム(う~ん、おしゃれ)でヴィスコンティに会った。その場には後に『ロミオとジュリエット』を撮って一世を風靡するフランコ・ゼフィレッリもヴィスコンティの助手として同席していたという。ちなみに、1946年からゼフィレッリはヴィスコンティの恋人だったと言われている。

「君には素質があると推薦してもらった。もし本当にそうなら、『欲望という名の電車』のミッチ役をまかせたい。ただ、場合によってはエキストラになるかもしれないが」
とヴィスコンティ(当時41歳)。マストロヤンニの興味は報酬にあった。
「実はボクは働いているもので…… その仕事はいくらいただけるんでしょう?」(結構あつかましいぞ、マストロヤンニ!)

提示された報酬額は、マストロヤンニがやっていた仕事の3倍だった。とたんにマストロヤンニはホクホク。
「よろこんでやらせていただきます!」
そして翌年(1949年)ちゃんとミッチ役をまかされ、ついでに端役で出演していた女優フローラ・カラベッラと知り合い、26歳で結婚している。

マストロヤンニの10年におよぶヴィスコンティ劇団での「修業」はこうして始まった。すでに映画監督としてデビューしていたヴィスコンティの名は世間に知れわたっており、劇団に対する評価も高く、外国へも興行するほどだった。マストロヤンニはのちに、「私は黄金の門から演劇の世界に入った」と回想している。

時間は戻って1937年。23歳のジャン・マレーはデュラン主宰の劇団で役をもらおうと必死に稽古をしていた。そこへ新しい若い劇団を作ったという女の子がやってきて、
「私たちのグループに参加しませんか?」
と誘う。男性俳優が足りないのだという。
「来年もここ(デュランの劇団)で役をもらいたいの。だからデュランに逆らいたくないんだよ」
とマレー。
「困ったわ。仲間になってくれると思ったんだけど」
「残念だな。脚本は何?」
「ジャン・コクトーの『オイディプス王』」
憧れのコクトーの作品ならば話は全然違う。マレーはすぐに前言を翻し、彼女とともにコクトーのオーディションを受けに行く。

マレーのコクトーに対する第一印象は、「驚くほど痩せていて、とても優雅」というものだった。マレーの演技を見たコクトーは、すぐに主役のオイディプス王をマレーにすると言い出す。マレーは「夢見心地で」役を引き受けるが、他の劇団員が大激怒。コクトーに「彼はよそ者だから」と直談判し、いったん決まった役をマレーから取り上げ、マレーは合唱隊員の端役に回る。だが、マレーには自分自身で決めた目標があった。「オイディプスだろうと合唱隊員だろうと、ジャン・ピエール・オーモンそっくりに演じてみせる」。マレーはその目標に心を奪われていた。

ジャン・ピエール・オーモンはコクトーの舞台劇で世に出、その後ハリウッドに進出して大成功した俳優だ。マレーは当初、このオーモンを非常に意識していた。また後年、マレーの代表作となる『オルフェ』誕生の際にも、オーモンの存在が深くかかわってくることになる。

さて、『オイディプス王』の稽古中、コクトーがマレーのところにやってきて、
「オーモンが僕の戯曲を初演する予定だったんだけれども、映画の契約があってできなくなった。君がやってみないかね?」
と声をかける。
マレーは一も二もなく承諾する。するとコクトーは脚本読みをするからオテル(ホテル)・ド・カスティーユの自分の部屋に来いと言う。当時コクトーはホテル暮らしをしていたのだ。

マレーはマルセル・レルビエに連れて行かれたサロンのことがトラウマになっている。
「もしあのときと同じ状況になったら、ボクはどうしたらいいんだ?」
往生際の悪いことを考えながらオテル・ド・カスティーユに向かう。
だが、ホテルの部屋でマレーが見たのは、阿片漬けになっているコクトーの姿だった。
コクトーが読んで聞かせてくれた戯曲『円卓の騎士』はあまりに素晴らしく、マレーの心を打つ。第一幕が終わったところでコクトーは、「疲れたので、続きは後日」とマレーを帰す。

通りに出たマレーは、喜びのあまり飛び跳ね、駆け出す。
「信じられない! 信じられない!」
これまでさんざん約束を反故にされてきたマレー。だが、今度こそ本当に主役を獲得できる。そして何より嬉しかったのは、コクトーがいかがわしい関係を強要しなかったことだった。

脚本を読み終わった日、コクトーは真剣にマレーの意見を求めてきた。マレーはお世辞が言えず、ただ自分がどれほどその作品が好きかということを熱心に話すのみ。『円卓の騎士』で主役を演じることはほぼ本決まりに。だが、そこでコクトーに、
「僕の戯曲に出演するようになれば、人から僕の『愛人』だと言われるよ」
と釘をさされてしまう。思わず、
「それは光栄です」
と答えたものの、自分の演技が認められたとばかり思っていたマレーは、そこでどうやら「それだけではないかもしれない」ことを感じて、多少腹を立てている。

端役をあてがわれた『オイディプス王』の幕が開くと、マレーは「ジャン・コクトー」のネームバリューの凄さをまざまざと見せ付けられることになる。記者やカメラマンが現れ、あらゆる新聞や一流雑誌にマレーの写真が掲載されたのだ。

ところがそんなさなかコクトーが姿を消してしまう。2ヶ月まったく連絡なし。マレーは次回作での自分の役が不安になる。不安が絶頂に達したころ、コクトーからの電話が鳴った。
「すぐ来てくれ。重大事が起きた」
マレーは思う。
「オーモンが自由になったに違いない。彼が出演して、ボクは降ろされる」
ほとんど泣きそうになって、オテル・ド・カスティーユのコクトーのもとへ駆けつけるマレー。

と、そこで、コクトーから打ち明けられた重大事とは、彼がマレーを熱愛しているということだった。
思いもかけない展開に戸惑いながらも、とっさに、
「ボクもです」
と答えるマレー。
だが彼はそれが自分の出世欲からくる「嘘」だと自覚していた。

<いったん終了します。続きはフィギュア世界選手権のあと3月26日から再開>





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最終更新日  2008.04.16 19:09:50



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