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カテゴリ:Travel(フランス)
バスティーユ広場とルーブルの中間あたりにあるマレー地区は、いくつもの顔をもっている。マレー(Marais)とは沼のこと。もともとこのあたりは、セーヌ川沿いの湿地帯だった。
最初にこのエリアを知ったのは、ジャン・ドラノワ監督、ジャン・ギャバン主演の映画「メグレ警視シリーズ」。古いモノクロームの画面に映し出されたのは、たしかに湿っぽい石畳の細い路地が続く下町の風景で、ネズミが走り回っていそうな貧しげな住宅街だった。 それから、大学時代パリに行ったときは、「再開発の進むパリの中で、古いパリの面影をいまだに残している貴重なエリア」だと聞いて、ヴィクトル・ユーゴー記念館のあるヴォージュ広場やカルナヴァレ博物館などを見て歩いた。 今のマレー地区はもう再開発され、流行の最先端をいく店も多く出店して、ちょっとした観光スポットになっている。もともとのマレー地区の魅力は、古くからある貴族の館が点在していることだった。また、ユダヤ人街だったという歴史的側面ももっている。そうした要素は排除せずに再開発したことで、マレー地区は、過去と現代が交錯し、さまざまなカルチャーが混在する、不思議な魅力のある街に変身した。 大学時代に見て回ったとき、ここは全体的にもっとうらびれた雰囲気で、石畳の道もところどころ舗装がはげていた。観光客もそんなにいなかった。今はどこも小ぎれいに手入れされ、しゃれた店の並ぶ小道は、人で賑わっている。 マレー地区のスタートは地下鉄1号線のサン・ポール駅。地上に出ると、東西にのびたリヴォリ通りに出る。 観光客に人気のスポットはたいてい北に集中しているから、太陽を背にしてリヴォリ通りから北へのびる路地へ入れば、カルナヴァレ博物館やピカソ博物館の方向に進むことになる。 今回Mizumizuは、ピカソ美術館(サーレ館)にだけ行った。毎月第一日曜日、ピカソ美術館は無料開放される。今ピカソ美術館は改修中で、2月アタマにはだいぶ工事は終わっていたのだが、それでも完全ではなかった。 昨年末に東京で大規模なピカソ回顧展が開かれたが、それはこの改修工事に合わせて、フランスが日本にピカソ作品を貸し出したから。そうやって工事費用を捻出したというわけだ(ちゃっかりしているぜ、おフランス)。グランパレでの「ピカソと巨匠展」もその流れで、元来マレー地区のピカソ美術館にあったものがだいぶグランパレに行っていた。 ピカソ美術館は駅から北へ徒歩で10分ほど。古い貴族の館を使っているので、趣きがある。 中はこんなふう。いかにも時代がかった瀟洒な手すりを備えた大階段がお出迎え。 まだ一部工事中とはいえ、無料開放日にいったせいか、美術館は非常に混んでいて、ピカソ人気の高さをあらためて実感した。 マレー地区でのちょっとしたお奨めは、ユダヤのサンドイッチ「ファラフェル」。パリのエスニックB級グルメの決定版だ。 ヒヨコ豆のコロッケにヨーグルトソースのかかったざく切りの野菜、それを袋状のピタパンにつつんだもの。値段はハッキリ憶えていないのだが、5ユーロぐらいだったかな。 「ピカンテ~?」(辛くする? という意味だと思う。イタリア語から推測)。 と聞かれて、「イエス」と答えてみたものの、たいして辛くなかった。もともとフランス料理は、パンチの効いてない、ボケたような味が多いから、こんなものかな。 ロジェ通り34番地(Rue de Rosiers 34)にある、「ラス・デュ・ファラフェル」はこの賑わい。全部店頭でファラフェルを待つ人たち。人気の高さがわかる。 味についていえば… まぁ、東京で出店してもこんなには流行らないだろうなぁ。 絶品B級グルメとは言えないが、こういうふうに野菜タップリの、しっとりした軽食パンがフランスではあまりないから、パリに行くとわざわざマレー地区に行ってでも食べようか、という気分になる。 これと並んで食べたくなるのが、カルチェ・ラタンにあるギシリアの軽食、サンドイッチ・コフト(Kofte)。 こちらはファラフェルより重くて、ジューシーな肉入りの野菜サンド(パンは厚手のピタパン)。お店ならL'ile de Cre'te(Rue Mouffetard 10)がおいしい。これも5ユーロしないと思う。 ファラフェルもサンドイッチ・コフトも、相当ボリュームがあるので、おやつというより、りっぱな食事になる。 パリが美食の都だと思って来た人は、パリのまずくて高い観光客向けビストロなんかに入ってしまうと驚くはずだ。パリは確かにウマイものもあるが、マズイものはもっと多いかもしれない、食の格差の都なのだ。だから、知らずにまずいものをつかまされるより、こういうものを買って路上でハフハフ食べるほうがずっと楽しいし、安上がりだと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.02.25 16:25:44
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