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カテゴリ:Travel(タイ)
チェンマイには7泊した。そのうち4泊が郊外のマンダリン・オリエンタル・ダラ・デヴィ、3泊が市内でナイトバザール至近のザ・チェディ・チェンマイ。
ちょうどダラ・デヴィは4泊で1泊タダ、チェディは3泊で1泊タダキャンペーンをやっていたので、この組み合わせにした。ダラ・デヴィは辺鄙なところにあるが、ゴージャスな滞在を楽しむホテル、チェディは立地がよく、アクティブに観光するのにピッタリと特長も異なる。 このバランスはとてもよかった。 チェディは3泊してトータルの支払額が3万5047円。2泊分で3泊するという理屈だが、ならして計算すれば1泊12,000円弱。今回もネット上でホテルの予約サイトをいろいろ見たのだが、結局ホテルに直接ネットで予約する「2泊分で3泊キャンペーン」が最も割安だった。 値段からすると満足度はかなり高いと言える。ただ、この値段、シーズンオフだということと、最近タイの観光業が落ち込んでいることから、安く設定した文字通りの特別価格かもしれない。オープン当初は確か、1泊3万ぐらいは取っていたように思う。 その分、朝食の品数が少ないなどの、コスト削減の空気がそこここに感じられた。 さてさて、では、詳しく紹介しましょう。 このホテルの最大の魅力、それはモダンで真に審美的な建築空間だ。 大通りに面しているのだが、車寄せにグルッと入ると、すっきりしたエントランスの向こうに異次元の静謐な空間が広がる。 一度、インド人と思しき家族とソンテウで相乗りになった。長方形に切り取ったようなエントランスの向こうに広がる、外部とまったく趣きを異にする空間――家族全員、ソンテウの窓から身を乗り出すようにして見入っていた。 たしかに、非常にインパクトがある。 どこか和風の建築に、これまたどこか和風の樹木。 一切の装飾を廃した白い壁に、木の装飾板が断固として直線的に組み合わされている。 モダン・ジャパニーズの美意識の影響、ありあり。 しかし、日本人としては、くすぐったいような変な感じ。タイのチェンマイまではるばる来たハズが、着いてみたら日本のモダンな旅館だった、というような。 部屋に入るのに、なぜか靴を脱ぐ。引き戸の向こうに「靴脱ぎ場」があって、その奥に部屋のドアがあるという2重構造。木製の引き戸というのが、また日本風。 そして、ここで蚊が5~6匹お出迎え。 このホテル、とにかく部屋に蚊が多くて困った。ベランダ用の蚊取り線香と室内用のベープ蚊取りマット(じゃないかもしれないけど、とりあえず類似品)があり、そのせいか蚊はとっても弱々しくて、姿は見たが刺されはしなかった。 でもさ~、蚊が飛んでるだけで、イヤじゃないですか? ダラ・デヴィは蚊対策には万全を期していて、部屋の入り口とベランダに間断なく蚊取り線香を焚いていた。こちらが部屋を留守にしていても、煙が絶えないようにしてくれていたのだが、チェディでは逆に、ベランダで蚊取り線香を焚いたままちょっと外出して、帰ってきてみたら途中で折られていた。 なるたけ一巻きを長く使ってもらおうという、 さて、部屋はというと・・・ 手前にダブルベッド、その向こうにバスタブ。この間は木製のパーティションで区切ることもできる。 バスタブの向こうに洗面台とシャワールームにトイレ。 一見、すっきりとしてお洒落な空間です。 しかし! この部屋の居住性に関しては、5つ星ホテルとしては合格点はあげられない。 まずは、なんといってもベッドが悪い。見かけは悪くないのだが、マットレスに腰がなく――これは、柔らかいベッド、というのとは質が違う――とても寝にくい。 腰が悪い人だと、さらに痛めてしまうのではないか。 インテリアのモダンさに関しては、個人の嗜好の問題だが、Mizumizuはハッキリ言って、あまり好きじゃない。 たとえば、スクエアなフォルムの洗面台。蛇口も含めてデザイン優先でとても使いにくいし、やたらと水が周囲に飛び散る。やはり手洗い場の水受け(ボウル)は窪んだ形でなるたけ大きいほうが合理的だ。 それと、バスタブにはシャワーがなく、日本の古いお風呂みたいに、お湯をはって入るだけ。しかもお湯はりにあまりにも時間がかかるので、結局1度しか使わなかった。 シャワールームのノズルは軽くて使いやすい(水の勢いも文句なし)のだが、下手すると水がトイレのほうへ流れていってしまう。ホント、チェンマイって水回りの施工が悪いんだな。 それと最大の欠点は、モダンな半透明のスライド式のドア。トイレとシャワールームが半分しか隠れない――つまり、トイレに入るときはスライド式のドアをシャワールーム側に寄せ、シャワールームに入るときは、トイレ側に寄せる。 さらにシャワールームとトイレの間の壁が透明で丸見え。だから、どちらかがトイレに入っていて、うっかり別の人間が手でも洗おうとバスルームに入ってくると、シャワールーム越しにトイレ内が見えてしまうのだ。 これはヒドイでしょ。 空間を節約するためにスライド式のドアにしたり、パーティションにしたりしてるのだろうけど、その分プライバシーが犠牲になっている。家族なら、まあ気にしないかもしれないが、友人同士だって来るだろうし、こういう作りでは気を使う。 室内空間がこのように狭いのは、ベランダを広く取っているせいもある。 ゆったりと横になれるように広いクッションも置いてある。このひとまわり余裕のベランダ空間、発想自体はいいと思うのだが、ベランダの壁が透明で、外から丸見えだし、そもそも蚊が多いので、残念ながらゆっくりくつろぐ気になれない。 そのほかにも、デスクと椅子の高さがちぐはぐで書き物がしにくいとか、部屋の照明がいくらなんでも暗すぎるとか、個人的にはちょっと不満な点が多々あった。 建築家の意匠へのこだわりが、ゲストの滞在中の快適さをかなり奪っている。 「見かけはお洒落だけど、住んでみたら、住みにくいマンション」という感じ。 そう言えば、なんか全体的にマンションみたい。 で、さらにゲストの快適性を陰で奪っているのが、この緑の葦。 こうやって見れば、素晴らしく美しいでしょ? 白と茶を基調とした、ややもすれば無機質なモダンになりやすい直線的な空間に、緑の天然葦を大胆に配すことで自然の息吹を吹き込み、有機的なニュアンスを加えることに成功している。 あくまで、視覚的には。 しかし、自然の緑をこういう不自然な場所で維持していくのは、手入れが大変なのだ。何が大変って、水の供給だろうと思う。コストもかかるし、手もかかる。時間がたてばたつほど、美しい緑を保つのが難しくなる。 案の定、水はとても汚く、一応小魚など入れて、虫を食べるように工夫はされているものの、ここでボウフラが湧いているんじゃないの? と思った。 さらに夜中に、耳をつんざくような(←大げさではなく)、カエルの大合唱が始まった。 いや~、これには驚き、かつ悩まされました。 カエルの鳴き声で目が覚めるなんて、山口市矢原(←だから、誰もわからんっちゃ!)でも、経験がない。 最初あまりにも音がデカいので、カエルとは気づかず、目覚ましでも鳴り出したのかと思った。 あのカエルの大合唱の舞台も、この葦が怪しいとにらんでいる。他にカエルが集合できそうな場所なんてないし。 見た目重視で、ゲストの快適性無視というのは、パラソルの使い方にも指摘できる。 この階上のパラソルと寝椅子、だ~れも使わないのだ。にもかかわらず、ずっとパラソルを広げている。寝椅子のクッションのほうは、雨がふってもほったらかし。だから、クッションはわりと汚れている(使うときは一応バスタオルを広げてくれる)。 雨が落ちてくると、すぐにクッションを引っ込めていたダラ・デヴィのスタッフの姿勢とはまったく違う。マンダリン・オリエンタルはバンコクでもそうだったが、雨が降れば、すぐに長椅子のクッションを片付け、雨が上がれば、またすぐに広げる。非常にマメで、手抜きがない。 で、チェディ。一直線に並べられたパラソルは、見た目には非常に美しい。 だが、たとえば朝食のテラス席にはパラソルが足りない。だから、晴れた朝は直射日光が暑くてテラス席は使えなくなってしまう。 誰も使わない場所では、せいせいとパラソルが広がり、みんなが使う朝食会場のテラス席にパラソルがない。 本末転倒でしょ! さらに、ゲストが少ないせいか、使われていない空間が多すぎる。 この2階席はレストランの席なのだが、1階だけでまかなえる数の客しか来ないせいか、上はまったく客を入れない。 1階のオープンキッチンの狭いレストランに、かなりぎゅうぎゅうにゲストが詰め込まれる。ディナーも朝食と同じ場所で食べなければいけない。 朝も夜も同じって、どういう了見? 場所がないならともかく、ゆったりできる素敵な空間を造ってあるというのに。 これも結局「コスト」優先だからやっていることだ。キッチンから近いレストラン席はサーブするのもラク、掃除もラク。 というワケで、Mizumizuたちはディナーはしなかった。メニューの値段を見たら、平気で500バーツ(1500円)なんて値段がついている。ダラ・デヴィの「グラン・ランナー」より明らかに高い。シェフはインド人だということだが、朝食で別に作ってくれる「暖かい料理」の味が、まったくたいしたことなかったのも、このホテルでディナーをする気になれなかった理由の1つ。 チェンマイのホテルは供給過剰で、どこもかなり苦しいのだと思う。だから、値段を下げてなるたけ客を呼ぼうとしている。チェディもおそらく、オープン当初はもっとサービスがよかっただろうと思う。そして値段ももっと高かった。 安くした分、どこをどう削るか、四苦八苦してる経営陣の苦労が垣間見える気がした。 だが、やはり宿泊料金と総合的な満足度(サービス、立地、施設の設備)を天秤にかけたら、まだ「かなりいいホテル」だと言うことは断言できる。先日書いたように、ベルボーイは気が利いていたし、それに、レイトチェックアウトも、なんと午後5時まで保証してくれた。 ダラ・デヴィのあとになってしまったので、必要以上にアラが見えてしまったということもある。 <続く> お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.08.31 14:16:41
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