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カテゴリ:Travel(タイ)
ザ・チェディの審美的な空間――それは夜も装いを変えて現われる。
夜は無数のキャンドルが大理石の通路や・・・ 池に浮かべられる。 ことに水面を漂うキャンドルの灯りが、なんとも幻想的。 人工的な照明は極力抑えられているので、ゲスト棟とレストラン棟の間にあるプールを含めた箱庭空間では、「闇」が支配的になっている。もともとはイギリス領事館だったホテルの敷地は、基本的にこじんまりとしているが、闇が深いだけ、狭さが気にならない。そして、大小のキャンドルが散らばることで、日常生活から離れた安らぎとある種のノスタルジーが心を癒す。 つくづく、建築家の美意識が表に出てる設計だ。 だが、やはり視覚的な美とひきかえに、ゲストのプライバシーが犠牲になっているという印象は、どうしても否めない。 たとえば、プール。 長細い形は、このホテルの全体の建築設計方針に沿ったものなので、それはそれでいいでしょう。 サイズが小さいのも、まぁ、基本的に客数も多くないホテルだし、街中で敷地も広くないし、仕方ないでしょう。 更衣室がなく、シャワーも野外にドロップ式が2つしかないというのも、我慢しましょう。部屋からプールまでの距離が近いしね。 けどね、プールと長椅子の距離が、どうしても近すぎると思うのだ。 ゲストの数が極端に少ないならいい。 でも、多少多くなるとどうなるか? 縦横の長さが極端に違う細長いプールは、カップルが3組も入れば、狭く感じてしまう。その目と鼻の先にズラッと長椅子が一直線に並ぶ。長椅子でくつろごうにも、否応なしに目の前で泳いでるゲストの姿が目に入ってくる。泳いでる人の水音ってのは、結構大きいのだ。おまけに椅子同士の間隔も狭い。 泳いでるほうだって、アタマのすぐ上に、一列に他人が並んで自分のほうに顔を向けてるのは気分のいいものではない。 マンダリン・オリエンタル・ホテルではこんなことはない。ダラ・デヴィのプールがスンバらしいのはすでに書いたが、プールと長椅子の距離は常に、「できるだけ」広く取ってあった。敷地の狭いバンコクのオリエンタル・ホテルだって、その点は非常に気を使っている。 こういうところが、「一流ホテルのプールとはどうあるべきか」を知ってるか否かの差なのだ。プールではしゃぎたい客とプールサイドで静かにくつろぎたい客の気持ちをおもんばかれるかどうかということでもある。 敷地の広さの話ではなく、それをどう使うか。だって、チェディのプールに並べられた長椅子の後方には、おそらく有料のスパ、あるいは高い部屋のゲストだけが使える施設の一部と思われるガラス張りの棟があり、そこにも同じように長椅子が並べられているのだ。 そのガラス張りの部屋の長椅子には、だ~れも座っていない。 魅力的に見えないので、別にそこに行きたいとも思わなかった。ガラスの中に入って、プールサイドの長椅子とプールで泳いでる人を見たって仕方ないじゃない。外から丸見えだし。こういう「優越」空間は、もっと孤立した、「覗かれない」場所に作るべきだ。たとえば、川の脇とかね。 リバービューなら、外からの視線も気にならないし、そこからだけの「特別な眺め」を楽しむことができる。 この誰も使わないガラス張りの棟の空間の分、一番多くのゲストが使うプールの広さが犠牲になり、プールサイドの長椅子がまるで監視員みたいに、プールのすぐ脇に置かれることになってしまった。 ダメでしょ、これじゃ。 で、このチェディ・ホテルなのだが… 男・男カップルの比率が異常に高い。 なんか、その世界で有名なんでしょうか? 午後のプールなんて、まるっきり「ホモたちの宴」。 ある午後、Mizumizu+Mizumizu連れ合いが、長椅子に寝そべったら・・・ まるで温泉にでもつかるみたいに、プールの向こうサイド(↓ココ)で スキンヘッドでマッチョな白人男性2人が、肩寄せあって入ってる。泳ぐワケでもなく、プールの周囲にある池の蓮を見ながらポチャポチャ。 そこへ、香港かシンガポールあたりから来たドラ息子(←完全にただの偏見)みたいな中華系の青年2人と、彼らに現地調達されたらしき2人のタイボーイが計4人でやってきて、嬌声を上げながら、水中で公然とイチャイチャ。 至近距離から見ちゃ悪いかと、横を向いたら・・・ 華奢で小柄な日本人男性2人が、長椅子で本を読んでる。 なんで日本人だとわかったかって? 読んでる本の文字が日本語だったからサ。 ――こ、ここには、男女のカップルはおらんのか・・・ と見たら・・・ いたいた。1組端のほうの長椅子で小さくなってる。 ふつーは、カップルというのは男女が多数派だ。タイは同性愛者がよく来る国だが、それだって、男・男の組み合わせが「多数派」にはならない。 だが、チェディだけは別。 明らかにここでは、世間一般の性的マイノリティとマジョリティが逆転してる。 そして、多数派の中で少数派というのは、常に居心地が悪く感じるものなのだ。それは普段、同性のカップルがふつーの場所で感じる「肩身の狭さ」なのだろうけれど、チェディの、特に午後のプールサイドでは完全に立場が入れ替わっていた。 ど~も場違いな気がして、早々に立ち去るMizumizu+Mizumizu連れ合い。 結局Mizumizuがプールに入ったのは1度だけ。おまけに、ここのプール、水が信じられないほど汚かった。濁っていて、ほとんど前が見えない。 何日水を変えてないんですか? ダラ・デヴィの塩水かけ流しの極上プールに比べると、天国と地獄。 ユル・ブリンナーとブルース・ウィルスを崩したようなスキンヘッドの白人(明らかに)カップルが泳いでなかったのは、この水のせいだったのかも。 周囲に蓮の花を浮かべた池があるのも、清潔感という意味では、どうもね・・・。蓮がきれいというより、池の水が汚いほうが気になる。池にはボウフラ湧いてそうだし、ヘタしたら池の水がプールに流れ込みそうだし(多少池のが低いので、それはないとは思うけど、大雨が降ったらわからない)。 連れ合いは、果敢にも(?)ホモだらけのプールに3日連続泳ぎに行った。しかし、オトコたちから浴びせられる熱い視線が恥ずかしかったのか(ちなみに、本人は否定)、すぐに帰って来た。 なにせ、彼自身はダサダサのドノンケにもかかわらず、いやドノンケのせいか、ホモ男性には妙にウケがいい(本人は、頑強に否定)。 プールは3日目にようやく水を替えたらしく、最後の日だけは透明度は高かったよう。でも、「カルキ臭かった」とか。 ダラ・デヴィのプールの水に、そうした不快臭は皆無だった。 同じ5つ星ホテルとはいっても、ダラ・デヴィとチェディでは2ランクぐらい違う感じ、と先日書いたのは、こういうところの違いにもよる。 朝食もまた、雲泥の差だった。 一応、それなりに品数あるように見えますか? でも、実際は「あまり食べるものがない」。パンもハムも、あまり味がよくない。 オープンからまもなく泊まった人の体験記を読むと、「マンゴー食べ放題」「スムージーもあった」などなど、かなり満足度が高かった様子。 今は、マンゴーはカケラもなく、果物で目立つのはスイカ。スムージーなど1度も出ず、オレンジジュースもマズい。街中の屋台のほうがよっぽどまし。 暖かいメニューを選んで作ってもらうことはできる。フレンチトーストとか・・・ オムレツとかカレーピラフとか。こういうのは、まぁまぁ。可もなく、不可もなく。 スタッフは感じがいいのだが、皿をさげる所作1つとっても、ダラ・デヴィのスタッフには負ける。 ダラ・デヴィでは、皿をさげるとき、ガタガタ音をたてることは、ほとんどない。ここのスタッフは、少しずつやることがガサツ。 もちろん、不快にさせるような態度ということではない。ただ、訓練がダラ・デヴィのほうが遥かに行き届いているということ。 逆に、マンダリン・ホテル・グループの従業員養成ってどうやっているのか、その訓練ノウハウを知りたくなった。 たとえば、ダラ・デヴィでは、ドライヤーを使ったら、それには手をつけず、布だけ下に敷いて、あとはコンセントに差しっぱなしのままにしてくれていた。 「してくれていた」とわざわざ書くのは、ドライヤーというのは、いちいち片付けられてしまうと、また使うために出してセットするのが案外面倒だから。 だから、その部分には手をつけず、そのかわり、バラバラになった化粧品などは、きれいに整えてくれるダラ・デヴィのメイドは、とても気が利いていると思うのだ。 一方チェディは、メイドがドライヤーをいちいち引き出しの中にしまう。バスルームの洗面台が狭いので、しまわないと掃除がしにくいのかもしれない。だが、こちらにしてみれば、ドライヤーなんて、使う時間は短いのだから、こういうことされると、また出すのが面倒で、逆に「使うな」と言われてるみたいな気になる。 ダラ・デヴィで「予備の蚊取り線香を2~3個持ってきて」と言ったら、ケースでど~んと持ってきてくれた。しかも、ベランダと玄関先の蚊取り線香が切れないように、留守中も焚いておいてくれる。 チェディでは、点けっぱなしで留守にすると、線香を途中で折って節約していた。ベランダにあったキャンドルも、最終日の午前中に掃除に来たスタッフが持っていってしまった。まるでゲストにキャンドルのお持ち帰りはさせない、と言わんばかり(笑)。 夜大量に使うから、残しておいて欲しいのだろうけど、チェックアウトの前にちゃっかり持って行くとは、芸が細かいこと(芸じゃないよ)。 とまあ、いろいろ突っ込みはしたものの、総じていいホテルだったことは間違いない。インターネットのスピードは、辺鄙な場所にあって部屋数の多いダラ・デヴィより遥かに速かった。 ただ、もう1度泊まるかというと・・・ 別のホテルを試してみたいという気持ちのほうが強い。 つまり、リピーターになろうとまでは思わないということ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.08.30 00:40:09
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