フィレンツェを基点にトスカーナを周るのもいいが、ローマに腰を落ち着けて、周辺の街を訪ねるのも楽しい。
たとえば、案外気楽に行けるのが、オスティア・アンティーカ。公共交通機関でローマから30分ほど。
その歴史はローマがまだ王政だったころ、紀元前7世紀に遡る。
ここはローマ遺跡の短縮版という感じ。
小規模ながらローマ劇場もある。その向こうには列柱。松との調和が、ことに目を惹く。
床モザイクもあった。床モザイクはポンペイ遺跡にもあるし、
シチリアのピアッツァ・アルメリーナには、もっと素晴らしいのが残っているのだが、なんといってもここはローマから近いし、規模が小さいためか、完全な「露天ほったらかしモザイク」で、なんならその上を歩けるというおおらかさがいい。
巨大な松の木に青い空がまぶしい。風になびく草を見ていると、
夏草や 兵どもが夢のあと
という松雄芭蕉の句が浮かぶ。
オスティア・アンティーカでは、むしろ松のほうが主役に見える、ローマ遺跡としてはかなりささやかな部類に入るが、その分、威圧感のないヒューマンサイズが魅力。
確かにここは、ローマびとの夢のあと。