イタリア中部ウンブリア州の小さな街
オルヴィエート。ローマから鉄道で1時間という、ほどよい距離にあり、もちろん日帰り可能。
イタリアの丘の上にある街の多くは古代ローマ以前、エトルリア時代にまで歴史を遡ることができるが、オルヴィエートもその例に漏れない。
どこか
ヴォルテッラに似ていると思ったのも、街のルーツが同じせいかもしれない。
だが、オルヴィエートは、ヴォルテッラのような「滅び」「崩壊」と言ったイメージはない街だ。
エトルリア人の骨壷(笑)もない。街を支配しているのは、中世イタリアの雰囲気。中でも、華やかな黄金のファサードをもつゴシック建築のドゥオーモは、「ヨーロッパ中世」に今でもつきまとっている暗いイメージを一蹴するのに十分な傑作。
この珠玉のファサードを見るためだけにでも、訪れる価値がある。
ドゥーモのほぼ正面にある、わりあい細い路地から見た黄金のファサードの輝きがあまりに印象的だったので、この構図の絵葉書がないか探したら、ちゃんとあった。この絵葉書の写真は、地上からではなく、実はかなり高い位置から撮っている。ファサードの全貌が見えないところもいい。
実際、狭い暗い路地から出て、ファサード前のせいせいとした広間に出ると、初めてこの壮麗なファサードが視界全体を支配することになる。その効果は絶大、圧倒される。
また、丘の街オルヴィエートからは、ウンブリアの豊かな田園風景が一望できる。
初夏にはウンブリアの明るい太陽に照らされて、緑のパッチワークが眼下に輝く。
Mizumizuにとってオルヴィエートは、何と言っても白ワインの街。
ドゥーモの裏手あたりにある、広場に面した外の席にパラソルを広げていたレストランに行き当たりばったりで座り、白ワインを注文したら、そのあまりに爽やかさに感激してしまった。
サン・ジミニャーノにも有名な白ワインがあり、街で1、2を争う高級レストランで頼んだのだが、そちらのほうがあまり感動しなかった。
ところが、オルヴィエートでたまたま飲んだ、ごくごく普通の白ワインがあまりに美味しい。
日本に帰って来てからも、あの白ワインの味が忘れられず、瓶詰めを買ってこなかったことを非常に後悔した。それでオルヴィエートに行くという友人に、なんでもいいからオルヴィエートの白ワインを買ってきてくれるようにムリヤリ頼み込んだ。
ところが・・・!
運んできてもらった瓶詰めのオルヴィエート・クラッシコは、別に特筆すべき点は何もない、それこそまったく普通の白ワインだった。
わざわざ重いワインを1本買ってきてくれた友人には申し訳なかったが、こちらとしては狐につままれたような気分だった。
今でも、ときどき自問することがある。
オルヴィエートで感激したあの白ワインの味は、イタリアの青い空と乾いた空気が演出した魔法だったのだろうか?