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カテゴリ:Travel (イタリア&シチリア)
ローマからの距離でいったら30キロとたいしたことはないのだが、個人では非常に行きにくいティボリという町にあるヴィラ・デステ。
だが、夏、広い庭園のむせかえるような草いきれの中を歩くと、散在する噴水そのものが音楽のようで、えもいわれぬ感動が味わえる。多少苦労しても、行くことを強くお奨めしたい観光スポットだ。 Mizumizuは地下鉄とバスを乗り継いで行った。バスの切符を買うのに、「コトラルバス」と言うようにアドバイスしているガイドブックもあるが、「ティボリ、ヴィッラ・デステ」と叫んだほうが早い。イタリアでモノを聞くときは、とにかく腹式呼吸でハッキリ、デカい声で聞くことだ。 真剣に聞けば、向こうもちゃんと取り合ってくれる。遠慮して小さな声で話しかけると、何をいかがわしい話をコソコソ持ちかけてるんだこのアジア人・・・というような目で見られないとも限らないので注意。 とにかく、日本人(特に男性)は、声が小さすぎる。不明瞭にしゃべると、相手には誤解されて伝わるかもしれない。そうなると、頓珍漢なことを親切に教えられるハメになる。 さて、ヴィラ・デステへのバス。 いつものように、バスに乗るときに、 「ヴィラ・デステには行く?」 と運転手に確かめた。行く、という答え。 「ヴィラ・デステの停留所に来たら教えて」 といつものようにお願いする。いいよ、と愛想のいい答え。 忘れられないように、運転手の近くの席に座り、ときどきガンを飛ばす(←これもバスの旅の鉄則←てっそくか?)。 バスは林の中を進み、山の中腹にある町、チボリへ向かう。途中、硫黄臭い温泉施設を通った。 ところが・・・! 林を抜けもしないのに、急にバスが止まり、運ちゃんが降りようとするではないか。 ちょっとぉ~! なんで降りるのよぉ。ヴィラ・デステに着いたら教えてくれるんじゃなかったの。 慌てて運転手を引き止めると、ああ、という感じで、 「向こうのバスに乗り換えて、このバスはここまで」 と言うではないか! はあぁ? よく見ると、道に大きな穴があいて、水がたまっている。そして、その向こうにバスが待っている。 通行止め? 運転手があらかじめ通行止めを知っていたのなら、最初にMizumizuにそう言いそうなものだ。あるいは、説明が面倒だから、着いたところで話そうとして忘れていたのか? はたまた、そこまで来て通行止めだと初めて気づいたのか?(ふつう、そんなことはないと思うのだが、イタリアではあるかもしれない・笑)。 よくわからないのだが、とにかく、Mizumizuたちがヴィラ・デステに行くということは、すっかり忘れていたのは確からしい。 まあ、だいたいバスの運転手はこんなもんです。「一度頼んだのだから、教えてくれるはず」と思ってはダメ。「一度頼んだだけだと、忘れられる可能性大」と最初から思って頼むこと。それがイタリアで生きる道。 ゾロゾロと歩いてバスを替える乗客に交じって、新しいバスに乗った。 乗るときに、また運転手に着いたら教えてくれるように頼んだ。 で、車窓から見ていると、なんとなくティボリの町に入ったのがわかったので、運転手に教えられる前に自分から隣りの乗客に、 「ここはヴィラ・デステ?」 と聞いてみた。 あいにく、話しかけた相手は知らなかったのだが、後ろから、 「そうそう、ここよ。私も降りるから、教えてあげる」 と言ってくれた女性がいた。 う~ん、親切。こういうところがイタリアなのだ。誰かに助けを求めれば、だいたい何とかなる。 バス停で一緒に降りて、 「こっちこっち」 としゃかしゃか歩いて入り口を教えてくれる女性。そのまま、笑顔でまたしゃかしゃかと立ち去っていった。 ヴィラ・デステの、池と噴水と、そして緑の饗宴の見事さは、喩えようもない。 吹き上がる水、糸のように流れ落ちる水・・・ここの噴水にはオルガンの音色を感じた。 上と下への水の噴射、調和の取れたリズム。ところどころに奇妙な形の彫刻が置かれている。 ちょっとした装飾も素晴らしい。剥げかけたモザイクにもニュアンスを感じる。 緑の塀の道のどん詰まりで待っているのは、多数の乳房を胸につけた女神の像。豊穣の象徴でもあるのだろうが、同時に異形の存在のもつグロテスクな美しさがある。 ヴィラ・デステは、外とはまったく違った世界が、自閉的に完結している庭。流麗という言葉がぴったりな噴水とややグロテスクなバロック風の彫刻と、古びた石の邸宅の佇まい、そして庭園のほどよい広さに、心は呪縛され、同時に解放される。 庭園入り口の扉をくぐってティボリの町に出たとき、たた今まで眼前にあった噴水と緑の壮大な世界が、あまりにきっぱりとなくなってしまったことが信じられなかった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009.11.18 17:55:44
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