ティボリには、もう1つはずせない見どころがある。
古代ローマ帝国絶頂期の皇帝ハドリアヌスが作った別荘「
ヴィラ・アドリアーナ」。
旅好きだった皇帝は、旅先で見た珍しい風景を別荘内に再現しようとした。古今東西、貴賎を問わず、旅好きには孤独と思索を好む性質がある。ハドリアヌスもその例に漏れず、広大な別荘で「たった一人になれる空間」をあえて作ったという。
ヴィラ・デステは多分にこの豪奢の影響を受けている。
とはいえ、今はだだっ広さがヤケに印象に残る廃墟。
ここは浴場だったとか。
・・・よどんだ水をたたえた池にしか見えない・・・(苦笑)
あまり人がいなかったせいか、無駄に広すぎる敷地のせいか、見学していて妙にうらぶれた気分になった。
祇園精舎の鐘の声が聞こえてくるようだ。
ローマに戻って、おのぼりさんで常にごった返しているトレビの泉に行ったら、はなやいだ気分になった。
先日NHK BSでフェデリコ・フェリーニの「
甘い生活」が放映されたが、アニタ・エクバーグがドレスのまま入っていき、マルチェロ・マストロヤンニが彼女を追って入っていったのが、ここ。
ワケわらかない映画の典型みたいな「甘い生活」をまた見て思ったのは、昔の映画人は今よりずっと自由だったんだな、ということ。「大地にも泡がある」というのは、シェークスピアの台詞だが、フェリーニのこの名作では、浮かんでは消え、消えては現れる泡のごとく、さまざまな登場人物たちが現れてはふいに消え、消えたと思ったらまた現れる。ほとんど何の脈略もない。
ここまで自分勝手な映画を撮れる監督って・・・今いるんだろうか?
テリー・ギリアムの「Dr. パルナサスの鏡」には、内心大いに期待しているのだが、どうだろう?