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カテゴリ:Interior
ガラスだの陶磁器だの、壊れやすいものが好きだ。中でも目がないのがアラバスター。 柔らかな質感と、半透明の雪の肌。 光を透かすと、大理石とガラスの混血児になる。 ヴォルテッラでは、蝋燭立てと写真立てを買った(本当は花瓶も欲しかった)のだが、蝋燭立ては、2つのうち1つを自宅に着いたとたんに割り、写真立てのほうも倒したり、当たったりしている間に崩壊してしまった。 いいかげん、アラバスターの小物はやめなくては・・・と思いつつ、コンラン・ショップで、グサリとくるアラバスターに出会ってしまった。 それは・・・ アラバスター製のソープディスペンサー。 3つばかり展示されていたのだが、1つ1つ模様が違う。少し黄色い色が入っているもの。縞模様が特徴的なもの。そして、一番気に入ったのは、斜めの縞模様に雪片のようなまだらの模様が透けて散っているものだ。 理性の声が、「オイオイ、またそんな超壊れモノを洗面台の横に置いてどうするわけ? 倒したら終わりだぞ」と告げたのだが・・・ 手にとって、その少しざらつく暖かみのある肌に触れたらもうダメなのだ。一見、大理石めいているが、大理石はもっと怜悧な感触がある。 ヴォルテッラの感覚で言えば、「まあ、数千円ってところかな、万はしないでしょ」と、多少タカをくくって、ひっくり返して値段を見たら・・・ 「え? 2000円ちょっと? いや、このカンマの位置は・・・」 24,150円。 に、にまん? にまんですと? コンラン・ショップはデザイン性では新奇なアイテムを置いてるが、値段が高い(おまけに、あまり商品管理がうまくないのか、汚れてる売り物も多い)。 しかし、このアラバスターのソープディスペンサーは、特段変わったデザインということもない。カタチは曲線と直線がうまく調和して美しいが、どちらかというと、ものすごくオーソドックス。 加工だって別に難しくないでしょ。凝ったカッティングを施してるわけじゃない。強いて言えば、この丸みを帯びた形に石を切るには、無駄になる部分も含めて、材料のアラバスターがかなり要るかな、というぐらいか。 それでも、惚れた弱み。値段には目をつぶって、買おうと思ってレジに行くと、レジ横に数日後に始まるセールの葉書が置いてあった。 こういうものを目ざとく見つけるのは、Mizumizu連れ合いのほう。 で、あつかましくも、 「これってセールで安くなりますか?」 などと聞くのはMizumizu。 店員さんは、嫌な顔ひとつせず、 「たぶん・・・割引になります」 と教えてくれた。 このごろは、結構こういうことも嫌がらずに教えてくれる店が多い。 なので、ちゃっかりレジで、「じゃ、今日は買うのやめます」と宣言し、数日おいて出直した。 気に入った「あのアラバスター」はあるかな、と心配しないでもなかったのだが、アラバスターの小物ごときに何万も払う物好きがそうそういるとも思えなかった。 案の定、ちゃんとあった。しかも、予想以上に割り引かれている。 こうなると・・・ 最初は買う気がなかった、お揃いのビーカーも買ってしまった。ビーカーも模様が1つ1つ違っている。極力ディスペンサーと似た模様をもつものを選んだ。 サイズがちょうど合い、並べて置くとフォルムの主張がずっと強まる。一方は上が丸く、他方は下が丸い。その「ひっくり返し」の同じデザインが目に心地いい。 結局・・・ 1つ分の値段で2つ買えたからお得と言うべきか・・・まんまと店側のセールの目論みにはまったというべきか・・・ レジに持っていくと、先日とは別のお姉さんが、思いもかけないことを言ってきた。 「あ、こちらは、炭酸カルシウム製ですので、アルコールや酸に弱いんです。色などもついてしまったら落ちにくいですが、よろしいですか?」 は? 炭酸カルシウム製? そう言うと人工物みたいじゃないですか。炭酸カルシウムを主成分とするアラバスターという意味だよね? 「アラバスターですよね?」 あまりに当然のこととして思い込んでいたので、確認もしなかったが、確かに「アラバスター製」とはどこにも書いてない。でも、Volterra(ヴォルテッラ)という名前が付いてるところを見ても明らかだろう。 「・・・大理石じゃないんです。見た目は似てますけど」 ちぐはぐな答えが返ってきた。どうやら「アラバスター」というものを知らないか、忘れているようだ。 「液だれなんかも、放っておくとシミになるかもしれません」 つまり、繊細な素材だということを、買う前に客に了解してもらおうというつもりらしい。 それにしても、「炭酸カルシウム」って、わざわざ言ってるのはなぜ? と思ってウィキペディアを見ると、アラバスターには「石膏」と「方解石」の2つがあり、炭酸カルシウムを主成分とするのは後者。しかも、方解石のアラバスターは古代のもの、今アラバスターと言ったら、ふつう石膏(雪花石膏)のものを指すらしいことがわかった。 なるほど、それで上の人間が店員にアラバスターと教えなかったのかもしれない。 フムフム。 どちらにせよ、アラバスターがひ弱な素材であることは承知のうえ。とは言え、アルコールに弱かったら、入れる液体石鹸も選ばないといけないじゃないの。しかも、液だれがシミになるって・・・ ずいぶんと気を使わせるソープディスペンサーだ。ヒビだって入りやすい。そもそも元来ソープディスペンサーには向いてない素材ってことじゃないの? トホホ・・・ 綺麗だが、傷つきやすく、手がかかる――アラバスターに惚れてしまったら、いずれ壊れてしまうのは覚悟でうえで付き合わなければいけない。 綺麗だが、傷つきやすく、手がかかる――これが人間だったら、実に面倒だ。惚れた相手がアラバスターでまだよかった。
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最終更新日
2010.01.03 04:14:27
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