|
カテゴリ:Travel(日本、九州)
南阿蘇の名店フレンチとして名高い、ブラッセリー・ラシュレ。軽々しくは言えない「完璧主義」という言葉がまさにぴったりだった。 訪ねたのは夏。残念ながら雨模様の暗い日で、場所も辺鄙な山の中(は言い過ぎかもしれないが、コンクリートジャングルの東京の人間からしたら、山の中の一軒家に来たとしか言えない場所にあった)。だが、清掃が行き届いた店内に迎え入れられると、空気まで凛と澄んでいるかのよう。チラッとのぞいた厨房も隅々まで清潔だった。インテリアはゴージャスではなく、シンプルに趣味よくまとめられている。 窓が額縁の役割を果たして、戸外の緑が目に優しい。 夏にふさわしい、フルーツと野菜づかい。涼やかな淡い色彩は目にも涼やか。周囲に配した濃いグリーンが、全体に淡く、したがって弱い色調に「重み」を加える役割を果たしている。この色彩・色調のセンス、並々ならぬものがある。 次に来るのは、自分でソースをかけていただくリゾット(お米とトウモロコシ)。ソースは、いかにもフレンチ風の軽やかにスパイシーなカレー風味。確かにヨーロッパでこんな味に遭ったことがあった。柔らかいリゾットと対照的な食感を楽しめるシガ―風の揚げ物が付く。 そうそう、フレンチというのは、一皿で食感の違いを味わえる料理を重んじるのだ。その姿勢は、日本の西洋料理では消えてしまう場合が多い。ここで供される一皿には、ヨーロッパの名店に引けを取らない洗練の風味と食感のメリハリが確かにあった。 この店は地元の食材にこだわっている。ローカルな素材を使って、インターナショナルな水準の料理を供する。そんなMizumizuの好みを、期待を上回るクオリティで満たしてくれる。色彩感覚も素晴らしい。 やはり九州の外食文化のレベルは高い。本当にこの店のシェフの力量には驚かされた。 皿は料理人のキャンバス。 目にも涼しく、皿いっぱいで夏を感じさせるデザート。フォルムは「丸」の連続。ガラスの器までが「作品」の一部。視覚の喜びは、スプーンを口に運んだとたんに味覚の喜びに変わる。 この店、シェフと給仕役の奥様以外に、スタッフがいなかった。むろんコストのこともあるだろうけれど、実際のところ、シェフの腕にかかっている「料理」という仕事で完璧主義を貫くためには、こういうスタイルにならざるを得ないのだと思う。 弟子と高級食材をうまく使い、宣伝に多額の資金を投入している「有名店」では味わえない、本当に1人のシェフの才能・力量で真向勝負をしている店。こんな店、東京にはないかもしれない。 そして、この完璧主義は遠くからくる観光客には不便な面もある。予約は1ヶ月前から受付で、それより前だと受けない。ランチのみで、ディナーはなし。そして時間も指定される。実際、8月のお盆という、観光地の店にとってはかき入れ時に、Mizumizu一行が5人で訪れた時間帯には、もう一組のカップルしかいなかった。 シェフ1人でさばける数のお客しか取らないという姿勢。これだけの完璧主義の仕事を見せられたあとでは、納得する話だが、正直予約した時には戸惑った。時間まで向こうから2択で指定されると、それに合わせて他の観光の予定を組まなけばいけないから、遠くから行く観光客にとっては都合が悪い。 だが、そういう融通の利かなさ(客側からすると)を我慢してでも、先方の指定に合わせて行くだけの価値のある店だ。 Mizumizuは前日に南阿蘇に入り、午前中のトロッコ列車に片道だけ乗って(立野11:25→高森12:22)、次の普通の列車で折り返し(高森12:53→立野13:21)、立野に戻ってきてからクルマでブラッセリー・ラシュレに直行するプランを立てた。予約は13:30。 立野駅からラシュレまではクルマで10分程度なので、これは時間のロスがない。カーナビで行くと、違った場所に連れていかれることもあるそうなので、注意。Mizumizu一行は、ちょっと通り過ぎてしまったが、店に電話して道を聞いたら、すぐに教えてくれた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.09.13 16:46:16
[Travel(日本、九州)] カテゴリの最新記事
|