長い時間をかけて、NHK杯男子シングルについての長文エントリーを書いたのだが、一瞬のミスですべて消してしまった(涙)。
今は書き直す気力がない。
だから、端的に書こう。
2015年11月、NHK杯。羽生結弦のショート&フリーを生で観た人は幸運だ。
あなたがたが目撃したのは、長いフィギュアスケート男子シングル史上、最高の演技。これまで誰も到達したことのない領域。誰も打ち立てたことのない金字塔だ。
今夜の羽生結弦は、過去の男子シングル競技におけるレジェンド全員を、遠い昔話の世界に追いやった。フィギュアスケート史上屈指の選手である皇帝プルシェンコの最盛期さえ、敬意とともに墓廟の中へ閉じ込めた。
「敬意」とMizumizuが書くのは、プルシェンコがいなければ、羽生結弦もなかっただろうと思えるからだ。
それは羽生選手がプルシェンコに憧れていたからというだけではなく、「ボイタノ時代に逆戻り」「男子シングルが死んだ夜」とまでストイコが評したあのバンクーバー五輪で、「4回転を跳ばなければ、もはやそれは男子シングルではない」と当時のルールに挑戦状を叩きつけ、反ロシア感情の強い北米に乗り込んでいったプルシェンコがいなければ、今のこの男子シングルの急速なジャンプの進歩はなかったと信じられるからだ。
ショートに4回転が2種類必要になる。こんな時代が本当に来るとは。
フリーで、4回転2種類3回、後半にトリプルアクセルを連続ジャンプにして2本。こんな離れ業を、しかも圧倒的な完成度でやってのける選手が出るとは。そして、それが日本人だとは。
凄いものを見せてもらった。ショート&フリーを通じて、羽生結弦は神のように崇高で、悪魔のようにしたたかだった。 炎のように闘争的で、氷よりもクールだった。
今日は男子シングルに、新しい次元が切り拓かれた夜。 歴史が変わった瞬間を、ついに私たちは目の当たりにした。