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カテゴリ:フィギュアスケート(2017-2018)
今の日本でのフィギュアスケート人気の盛り上がりを見ると、ふと80年代のアイドル全盛期の時代の雰囲気を思い出すことがある。
今の「集団アイドル」と違い、当時のアイドルは「一人で」「生の歌で」勝負をしていた。彼/彼女らは10代の若さでデビューし、数年かけて「成長」し、ファンは「大人っぽくなったね」「歌うまくなったね」とその成長を見守っていた。 今は歌謡界からはこうしたアイドルが消えてしまったが、氷上では10代の若さで世界へと駆け上がていくスケーターにアイドル的な人気が集まっている。若い選手の成長を見守るファンの視線も、かつてのアイドルのファンのよう。 フィギュアスケート界に咲いた最大の華ともいえる浅田真央が引退し、その翌シーズンに満を持して本田真凜がシニアデビューをするというのは、山口百恵引退後に松田聖子が登場した、くらいに運命的な流れを感じさせる。 その運命に、本田真凜は見事に応えようとしているようだ。 オリンピックシーズンに、先日ソルトレークシティーで行われた、USインターナショナルクラシックで長洲未来、カレン・チェンというアメリカの実力選手を破って優勝したというのは、周囲の期待以上の滑り出しではないだろうか。 映像はYou Tubeでしか見られなかったが、技術的にも、表現の面でも、まさに「スターとなることを義務付けられた選手」という印象だった。 前回の全日本では浅田真央がいたから、その圧倒的なオーラの前では期待したほどの輝きは見いだせなかったのだが、浅田真央がいない今、やはり「これからの日本で、競技選手という範疇を超えた人気を獲得していくのは彼女しかいないだろう」と確信させられた。 宮原知子、三原舞依…素晴らしい女子スケーターはもちろん他にもたくさんいる。だが、競技ではなく、ショーで客を集められるかとなると、また話は別だ。 本田真凜には滑りやしぐさに下品ではない色気があり、人々が夢を投影したくなる華がある。浅田真央とはまた違ったファン層を獲得していくだろう。 夏限定の新たなエキシビション映像という『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』をYou Tubeで見たが、メイク・衣装・照明・カメラワーク・映像の編集、すべてが一流のクリエイターによるもので、とてもジュニア上がりの一人の女の子に対する扱いではない。 https://www.youtube.com/watch?v=yYX5Q6U6C7k すでに彼女はタレントであり、周囲もそう扱っている。そして、本人もきちんとそれを自覚して、タレント然と振る舞い、微笑んでいる。職業的なアイドルと変わらないプロ意識。「私はアスリートだから」に逃げ込まない、こうした態度は、今の時代に必要不可欠だ。 スケートの技術を見ても、今の採点制度に非常にマッチした強さを持っている。際立つのはルッツとフリップのエッジの使い分け。カレン・チェンの「一見フリップだが、よくよくエッジを見ると外側にのってしまっている」ロングエッジを見てしまうと、本田真凜のきれいなフリップの質の良さが目立った。 ルッツのエッジは疑いようもなくアウトエッジ。浅田真央がルッツのエッジに現役時代ずっと悩まされてきたことを思うと、これだけしっかりアウトにのってルッツを跳べる強みは際立っている。 そして、3回転ジャンプの回転不足の少なさ。今回のUSインターナショナルクラシックでは、フリーのダブルアクセル+トリプルトゥループのトゥループだけがやや「どうかな?」と思えたが、他はきっちり回りきっていて、見ていて気持ちがいい。 回転不足を取られ過ぎの長洲未来、カレン・チェンと比べると、一般的には目立たないかもしれないが、今のルールでこの差は大きいと思う。 スケート自体もフリーの後半は失速したが、前半は非常に伸びがあり、氷に張り付いたような滑りだった。これも今のルールでは高く評価されるポイントだ。 そして、持って生まれた「華」。見ていてうっとりさせてくれる、ちょっとしたしぐさや表現。これは理屈では説明できない、だが「人気」として必ず可視化できる不思議なエレメントだ。 逆にオリンピックに向けて心配なのが、アメリカ女子。これについてはまた次回。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.09.18 12:32:37
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