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カテゴリ:フィギュアスケート(2017-2018)
ジャパンオープンが終わった。日本人女子シングル選手にはまずまずの点が出たが、オリンピックシーズンに期待を抱かせて、グランプリシリーズの視聴率を上げる目的もある興行試合だということは、含んでおいたほうがいいだろう。
心配なのはアメリカ女子選手。 ちょっと前まで平昌五輪は、グレーシー・ゴールドを待っている大会になりそうな雰囲気がむんむんだった。そもそもフィギュアシングルの試合時間が、アメリカのテレビ局に都合の良い時間帯に組まれたことからして、ソチで惜しくも4位だったゴールドの飛躍に期待した感があった。 また、今年の3月に公開された平昌五輪記念コインのモデルが、どう見てもゴールドだった件。 ニュースソースはこちら: http://www.sankei.com/premium/news/170328/prm1703280004-n1.html 韓国メディアによると、直径3.3センチのコインにはしゃがんだ状態でスピンするシットスピンと、片足を上げたまま滑走するスパイラルをする女子選手が描かれている。表面右下でスパイラルする選手が論争の的になった。衣装から表情、手の形まで米国のグレイシー・ゴールド(21)を模写していると指摘されたのだ。 平昌五輪でゴールドがメダルをとれば、ゴールドそっくりの姿が刻まれたコインの価値も当然ハネ上がる…ハズだったハズ。 だが、ゴールドは昨シーズンから自爆コースに入ってしまった。ジャンプの不調、コーチ変更。ささやかれる父親にまつわるスキャンダルの影に加え、五輪シーズンに入っての急激な体形変化。五輪本番に向けてこれから体重を落とすことはできるかもしれないが、それでは体力も落ちてしまう。今回のジャパンオープンもゴールドが出場予定だったのが、キャンセルになった。 往年のハリウッド女優を思わせるような華やかな「白人」のスター選手は、アメリカが待ちわびた逸材だった。だが、ゴールドの「失速」は、4年に1度しかない大会での、それでなくても選手生命の短い女子シングル選手が、そこにピークを合わせることの難しさを見せつけた。 対照的に不調の時期を乗り越えてきた長洲未来選手は、非常に良い状態だ。トリプルアクセルも、USインターナショナルクラシックでは認定されるところまで持ってきているし、今回のジャパンオープンでは、USインターナショナルクラシックで取られたアンダーローテーションジャンプをかなり修正してきているところは、見事。 浅田選手に似て、ややジャンプが回転不足になりやすい長洲選手だが、そこを意識して「回転不足を取られないジャンプ」を跳ぼうとしている努力が素晴らしい。 心配なのが、昨シーズンに全米女王に輝き、ワールドでも4位の成績をおさめたカレン・チェン選手の回転不足の多さ。高く上がって加点を狙いにいっても、回り切れずにグリ降りになってしまえば元も子もない。USインターナショナルクラシック、ジャパンオープンとも、判定は厳しく、チェン選手のジャンプはアンダーローテーション判定のオンパレードだ。 いかにもフリップを跳んでいるように見せて、よくよくエッジを見るとアウトにのっているフリップも、修正しなければ認定は難しい。 世界のトップに急速にのぼってきたチェン選手の持つ欠点は、そのままかつての日本女子が苦しんできた欠点に見える。逆に今、日本代表を争っている若い日本女子選手は、そうした先輩の姿を見てきているので、回転不足やエッジには非常に気を付けている。日本人の技術審判も非常にシビアに回転不足を判定している(それがルール上、本当に正しいかどうかは別として)。 アメリカは逆なのだ。全米選手権を見ると、その判定の甘さに唖然としたことが何度もある。明らかに回転不足、それもダウングレード相当になるような転倒ジャンプを認定したり、あやしいエッジやグリ降りジャンプも、そのまま認定したり。 全米選手権と世界選手権での判定の甘い辛いの差が、そのままワグナー選手の成績の上下につながっていることもこのブログで指摘した。今シーズンまた全米選手権で同じような甘い判定をすれば、チェン選手は平昌オリンピックで、ソチのワグナー選手の二の舞になる。 期待のグレーシー・ゴールド選手の自爆で、アメリカは女子シングルをカナダに譲って自国は男子シングル押しにシフトしたのかもしれない。「北米」はある意味で1つだから、今度の五輪では、北米女子のメダル枠は、カナダのシングル女子に、という流れになりそうだ。 カナダ女子シングルには、オズモンド選手のようにジャンプの質も良く、表現力もある選手がいる。オズモンド選手は出来に波がある。特にフリーでの派手なコケが多いが、それさえなければワールド銀メダルもまぐれではない実力はある。エレガントな大人の雰囲気は抜群だから、現在無敵のメドヴェージェワに表現力で対抗できる数少ない選手だ。五輪の一発勝負でコケずに滑り切れば、間違いなくメダル圏内に入ってくるし、金だって夢ではない。 ロシア、カナダ、日本。平昌オリンピックの女子シングルのメダルは、今のところこの3国で分け合う公算が高い。 日本の課題は、選手のピークを平昌オリンピックに持っていくこと。ソチでは明らかにこれに失敗した。五輪前に大騒ぎして選手を疲弊させ、肝心の夢舞台では「今季最悪のパフォーマンス」になる――ソチでの悪夢を繰り返してほしくない。 注:記事で触れた2試合のプロトコルは以下。 http://www.usfigureskating.org/leaderboard/results/2017/26189/CAT004SEG008.html http://www.jsfresults.com/InterNational/2017-2018/japanopen/data0205.pdf お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.10.13 00:30:28
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