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カテゴリ:フィギュアスケート(2017-2018)
平昌五輪フィギュアスケート女子シングルが終わった。
Mizumizuが指摘したソチ後にますます女子シングルで強まった、「少女潮流」を象徴するような女王が誕生した。年齢的にも、ギリギリで出場が認められた15歳。絶対女王と目されていたメドヴェージェワが故障すると、すぐさまその座を脅かす存在として台頭してきた、勢いも実力もある選手。 男子シングルで日本人選手がワンツーを取ったとき、「これでロシアのワンツーも決まったな」と薄々感じた人も多かったと思う。ザギトワは素晴らしい選手だが、表現面では、例えばバレエ風のポーズなどは、決めが不十分なまま次のモーションへいってしまう「粗さ」がある。技術的にはジャンプが決まれば凄いが、失敗すると見事に転倒になってしまうこともあり、ここまで急激に評価を伸ばすとは、正直思っていなかった。 シーズン初めのロンバルディアトロフィーではフリーの演技・構成点が67.52点(技術点では79.65)で、日本の樋口選手のほうが高い評価だったのだ。ところがところが、オリンピックの演技・構成点は75.03点(技術点は81.62点)。 技術点は高いが、演技・構成点はまだまだの若手… だったはずが、ワンシーズンでこんなにも盛られ…いや高評価になった。 どーにでもなる演技・構成点の正体が、ますます明らかになった感がある。 とはいえ、スポーツ競技としてみると、団体戦の時のような意味不明の厳しい回転不足判定もなく、1位・2位を争う選手に対する演技・構成点での露骨な点差付けもなく、金メダルを争う選手たちに対しては、非常に公平だったと思う。 というか、ジャッジにとってもどっちでもよかったのだろう。点差もわずかでどちらが勝ってもおかしくない。個人的にはメドヴェージェワの演技のほうが女王にふさわしいと思ったが、若いザギトワの勢いが勝った。これもオリンピックではよくある話だ。 そして、ロシアの「女王製造システム」の凄さ。 バンクーバー後にソチに向けて始まった女子シングル選手の強化が、ここにきてゆるぎないものになった感がある。 この4年の間に、何人のロシア人女王が入れ替わっただろう。彼女たちはまるで女王製造マシンのベルトコンベヤーにのって出てくるかのよう。ルールを完全に攻略し、どうやったら高い得点が得られるか、緻密な計算のもとに徹底的に強化された、精密機械のような選手たちだ。 次々にシステムから運ばれて出てくる選手で、平昌のタイミングにぴったり合ったのが、たまたまザギトワ選手だった…という印象。 これはロシアのバレリーナ育成プログラムに、ある程度似ているかもしれない。才能のある選手を徹底的に選別し、厳しいトレーニングで完璧に育て上げる。フィギュアスケートでは、ジャンプがカギで、ロシアの女子選手はジャンプのピークが非常に早い(若い)という欠点がある。だが、表現力の面でも早熟で、若いころから大人顔負けの演技をする。手足が細く長いから非常に見栄えもする。 ザギトワ選手はすぐ跳べなくなるだろう。ソチで輝いたロシア人女子選手、その後女王の座についたロシア人選手があっという間にいなくなったように。 ジャンプ重視の採点を続ければ、高難度ジャンプを跳ぶ若い選手は出てくるだろうが、女子の選手生命はますます短くなってしまう。今でさえ、あまりにも短いのに。スポーツとしての側面を追求すれば、当然そうなる。 だが、これからは? 男子シングルで中国人の演技審判が露骨な身びいきをしたとかで、ジャッジのボロもだいぶあからさまになってきた。今回だって、回転不足の取り方が団体戦と個人戦でまるで違う。 そろそろまたガラガラポンにする時かもしれない。 しかし、試合そのものは素晴らしく、メダルの3人はみな驚異的なパフォーマンスだった。 日本人選手もソチのときのような「自分史上ワースト」な出来ではなく、2人とも出色の出来だった。それだけでも大きな収穫だ。 女子でコストナー選手がメダル争いに絡んだというも素晴らしい。しかも、ルッツを跳んでガチンコ勝負に来た!! フィギュアスケートは終わったが、羽生選手が66年ぶりの連覇という偉業を達成し、ロシアも女子ワンツーで強さを見せつけ、パトリック・チャンもついに団体戦で金メダルを手にした。長く苦難の時を過ごしたアメリカの長洲未来選手も団体戦でメダル。 報われなかった選手も多いが、報われた選手も多かった。その意味では団体戦の意義も大きかったなと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018.02.24 08:55:50
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