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【中古】 フィギュアスケートを100倍楽しく見る方法 /荒川静香【著】 【中古】afb コロナ禍の中、開催されたNHK杯フィギュアスケート。観客はマスクをつけ、静かに着席。エントリーも日本人選手が中心で国際大会の華やかさには欠けたが、シングルの演技は世界トップレベルの技が堪能できる良い大会だったと思う。 フィギュアスケートの人気が高まるのはファンとしても歓迎すべきことなのだが、あまりに商業化されすぎて、このところ選手に過酷がスケジュールを強いる傾向がなかなか抑制されなかった。コロナで練習もままならないというのは悲しむべきことだが、行き過ぎた選手の酷使に少し歯止めがかかる役割を果たしたとすれば、すべてが闇に閉ざされた時代ということでもないかもしれない。 女子フリーは、日本人選手の素晴らしさを再確認できる試合だった。樋口選手がついに決めたトリプルアクセルも見事だったが、覇者となったのは坂本花織選手。圧巻のフリーだった。 特に度肝を抜かれたのが、最後にもってきたコレオシーケンスで見せたスパイラルと大得意のトリプルループ。羚羊のように長く美しい足がジャッジを蹴り上げるがごとくに掲げられ、ジャッジ席の至近距離をものすごいスピードで滑り、あっという間に去っていった。見てるほうは「ジャッジに当たっちゃうんじゃない?」とヒヤリとしたほど。だが、もちろん当たらないようにちゃんと練習しているのだ。その正確性と野性味があまりに斬新だった。そして、それからリズミカルな回転に続く、途切れのないトリプルループ。 もともと坂本選手の大きな武器であるトリプルループ(こちらの記事参照)。今回はショートではずし、フリーでもなかなか見せない。最後の最後、クライマックスにもってきて見るものの目をくぎ付けにする、見事な構成だった。 坂本選手のジャンプの大きさには定評があるが、今回は、多くの女子選手が回り切れないセカンドのトリプルジャンプもきっちり回り切って降りてきた。トリプルアクセルや4回転といった大技がないかわりに、加点を多くもらって高得点を出す。 樋口選手との点差が思ったより開いたが、現行のジャッジシステムで重視される、スピードのあるダイナミックな滑りと質の高いジャンプ(スピードを落とさずに入る、入り方にも工夫がある、ジャンプは幅の長さとそれに伴う高さがあり、回り切って降りてきてきれいに流れる)が点数に反映されていたように思う。 個人的には樋口選手の表現力やステップの細かな技術をもっと評価してほしかった。坂本選手のダイナミズムも素晴らしいが、ところどころ粗さも目立つ。樋口選手の、率直でナチュラルな感情表現や身体の中からそのまま出てくるようなエネルギーは坂本選手にはない「味」だし、細かな部分での配慮は坂本選手以上になされていた。樋口選手の表現は「密度」が濃い感じ。 演技構成点での2人の点差がちょっと開きすぎている。技術点の加点の出方の違いがそのまま反映されてしまっているよう。この傾向は男子シングルのトップ選手に対する採点にも見られる。若手でジャンプ「だけ」の選手は、エレメンツの加点は出ても演技構成点を抑えられるというのがパターン化していて、それは正しい傾向といえるが、その段階より上の選手に対しては、もう少しエレメンツの質と全体的な表現力の評価を分けて見る努力をすべきかなと思う。そうでないと公平感に疑問がつく(まぁ、いまさらフィギュアの採点が徹頭徹尾「公平」だと信じてる人もいないかもしれないが)。 坂本選手の不安要素である3ルッツも、「う~ん」という感じ。今回加点をもらっているが、ループのように足を交差させて跳ぶルッツは、エッジに不安のある選手がよくやる「手」だが、ショートはともかく(見る角度にもよるので何とも言えないが)フリーはテレビで見ていても、最後の最後にエッジが中立になっていないか? やや不安が残った。 日本で開催される大会だと甘くつけてくれるが、もっと格式の高い大会だといきなりてのひらを返す。そうなる悪寒が少し、ね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020.11.29 12:11:57
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