フランスの思い出――ランス
パリの西ほぼ150キロ。シャンパーニュ地方のランスは大聖堂とシャンパンの街だ。街角にはシャンパンのオブジェなどを見かける。言わずと知れたノートルダム大聖堂、ゴシック建築の最高峰。まるで巨大な岩のような建物だった。パリのノートルダムがいっそ質素に思えてくる。夜ライトアップされると、無数の彫刻が軽やかなレースの装飾のよう。夜の大聖堂、お奨めだ。この大聖堂の裏にはトー宮殿があり、そこでは歴代のフランス王の戴冠式で使われた宝飾品やマントが飾られているが、こちらは入場料が案外高い。日本円で1000円ほど。為替レートによっては1000円を超えるかもしれない。フランス王朝に興味のある人以外にはあまりおもしろくないと思う。ただ、ルイ14世の戴冠式のマントの、「王家のブルー」と呼ばれる色調の鮮やかさとその量感(ホントに重そうだ)に圧倒された。だが、なんといってもランスの白眉はノートルダム大聖堂にある(しかも入るの、タダ)。直径12.5メートルもある巨大なバラ窓もすごいが、意匠としては、後陣礼拝堂にあるシャガールのステンドグラスのほうがオンリーワンの価値があると思う。深い深いブルーとほんのわずかな黄色と赤。その色彩の魔術はシャガールの絵画と共通している。そこに十字架そのものに化身した白いイエスの裸体が浮かび上がる。細く、むしろたよりない体躯が、十字架という神々しいシンボルに昇華している。ランスからパリへ。通称「シャンパーニュ街道」と呼ばれる田舎道をドライブした。このあたりはまさに「豊穣のシャンパーニュ」。日本のような観光客用の無粋な施設はない。ひたすらブドウ畑が続く。途中、立ち寄った農家でシャンパンの試飲をさせてもらった。残念ながら、あまりたいしたものはなかったが…ランスの有名レストラン「レ・クレイエール」については、7/28の記事を参照してほしい。