『沈黙のファイル-「瀬島龍三」とはなんだったのか-』 共同通信社社会部編
沈黙のファイル単行本一冊なのですが、戦後賠償ビジネス、シベリア抑留、731部隊など、広くリアルに書かれてて、勉強になりました。この本を読んで、60年以上前のあの戦争は現在までつながっているんだと感じさせた一冊です。成長期を平成不況で過ごしてきた私は、戦争というとかなり昔話に思えて、自分の中では戦争は長い歴史の一部であり、戦後から現代というイメージがあり、なんとなく線引きをしていました。そこには戦争は悪いことで、終戦を機に新しい日本が出来たのだという認識があったのだと思います。私の祖父はやはり戦争経験者ですが、自分は戦争を経験した人が現在も存在している、ということすら実感しない自分でした。祖父はやはりあまり戦争の経験を話そうとはしません。私の母ですら、ほとんど聞いていないそうです。だから、自分にとって戦争は遠い出来事でした。この本の登場人物も、今まで様々な立場・感情で話すことが出来ない状況にあり、近年になりようやくオープンにできるようになり、この本ができたのだなと思います。政治・歴史は苦手ですが、歴史小説にみられる修飾がなく、事実と証言で構成された淡々とした文章で読みやすかったです。