静けさと美しさ。グレン・グールド。
「のだめ」の影響をモロにうけ、最近はクラシックばかり聴いてます。その中でも、昔から、大好きで、良く聴いてる曲があります。ピアニスト、グレン・グールド。Glenn Herbert Gould, 1932-1982彼の演奏した『ゴルドベルグ変奏曲』。たしか『羊達の沈黙』でもオープニングにも使われていたかと思います。何百回、聴いたか判らないくらい聴きました。きっかけは、ものすごく単純ですが、大学時代、大好きで尊敬していて憧れてた人が、グレン・グールドを好きだったから。当時は聴きませんでしたが、頭の隅っこに名前が残ってました。そしたら、先々代の彼氏も、グレン・グールド大好きな人で、特に、『ゴルドベルグ変奏曲』は、無人島か刑務所に行くようなことがあったら絶対持っていくというくらい、お気に入りでした。そんな彼は、お別れするとき、グールドのCDをほとんど焼き回ししてくれました。※慰謝料というわけではありません。とにかく、グールドは変人で知られています。ハンサムで、完璧主義者で、鼻声で歌いながら、演奏する。真夏でも、コートと手袋を手放さない。演奏会も大嫌いで、人気絶頂期に、辞めてしまいます。コンサートを辞めないで、と懇願したファンに対して。「うちにおいでよ。君のために弾いてあげるよ。」と言った人。グールドは、デビューと、晩年とに、代表的な『ゴルドベルグ』の演奏の録音を残しています。瑞々しく、溢れる才能を遺憾なく発揮し、一躍音楽界の寵児となったデビューの演奏も、抜群によいのですが。私は、晩年の演奏に、心惹かれます。グールドの友人であり、精神科医でもあった著者の書いたこの伝記には、ほんっとうにワガママで、完璧主義で、プライドが高くって、周囲の人間を振り回していたグールド、それを見つめていた友人の姿が浮き彫りにされています。ずっと、長い間、つい最近まで。どうして、そんな人が、こんな美しい演奏ができるのか、分かりませんでした。彼は、ただ、魂の命じるままに生きていたから。表面的には人を傷つけたかもしれない。孤独だったかもしれない。だけど、彼は人生でやり残したことなどなかった。彼の人生の喜びも、悲しみも、この演奏の中に、すべて昇華されている。大袈裟かもしれないけど、世界で一番美しい音楽の一つだと、思います。YOUTUBEで聴けるので、よかったらどーぞ。『ゴルドベルグ変奏曲』。1-30&Ariaまでのフィルムがあります。