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我輩はドラ猫である

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桃太郎715

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April 21, 2021
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カテゴリ:エッセイ
エッセイ下書きです。
今回お題が「引き出し」

引き出しと机
           
 昔から整理整頓が苦手だった。
 子どものころはよく母に怒られていた。机の上も引き出しの中もぐちゃぐちゃになっていたからだ。
「今日は引き出しの中を徹底的に整理しなさい」
 せっかくの日曜日なのにとがっかりするものの、まだ小学校二年生の女の子が母親に逆らえるわけもない。
 引き出しを開けてみると紙だらけだ。書き散らした作文や物語りがグシャグシャになって順不同になって押し込まれている。鉛筆や三角定規、コンパス、バラバラになったクレヨンなどと同居している。
 この物語は面白いなあ。続きはどうしよう。魔女が出てくるのもいいかな。
 いつの間にか自分の作品に見入って意識は別世界へ飛ぶ。
 ぼーっと座り込んで手を動かさない私に腹を立てた母が怒って引き出しを床にぶちまける。
「今度ぼーっとしていたら」
 鬼の形相の母を無表情に見上げる。
「また全部ひっくり返すからね」
 そして少し片づけるとひっくり返され、作業はエンドレスに続く。さすがに私も物語の世界には居られず涙をポロポロ流す。どんどんひっくり返されるので私の手には負えなかったのだ。
 黙って泣くだけの私を見かねた父が声をかけに来た。
「だいぶ片付いたなあ」
 慰めているらしいが、片づけだす前よりひどいことになっているのはわかっていた。
「こんなに片づけたんだから、多摩湖へ行こうか」
 父はニコニコしていた。時は昭和だから、母も父には表向き逆らえない。
仏頂面の母を置いて父と兄と三人で電車に乗り、多摩湖へ出かけた。机も引き出しも散らかった紙も放り出したまま。
 多摩湖で買ってもらった焼きトウモロコシは甘くてしょっぱい。醤油のせいか涙がまだ残っていたのか。
 放り出された引き出しがどうなったか覚えていない。怒りながらも母が片づけたのだと思う。
 その四年後、母が子宮筋腫の手術をするため、二週間ほど入院した。
 六年生になっていたが、私の片づけ、掃除力は相変わらずだったので、兄が担当することになった。
 兄の掃除は面白かった。なんでもかんでもテーブルの上に上げてしまう。ゴミ箱でもスリッパでも。床の上から徹底的に物をなくしてから、掃除機をかける。だから床の上はきれいなのだが、テーブルの上に上げたもののことは気にしない。豪快な掃除だった。おかげで家の中は一応片付いていた。私の机を除けば。
 四十年近い年月が流れ、あの時に助けてくれた父も兄も鬼籍に入ってしまった。私も還暦を迎えようとしている。
 悲しい時には父の言葉を思い出す。
「よく片づけたなあ」
 片付いていなかったのに。父は私が頑張っていると言いたかったのだろう。ひっくり返されても抵抗せずに泣いていた私を励まそうとしてくれたのだろう。
 できない私のために豪快に掃除をしてくれた兄の笑顔も思い返される。
 仕事をしながら我が子を育てるのは要領の悪い私には辛いことが多かった。いつもいつも片付かない。
 散らかしながら、オロオロしながら、泣きながら必死で生きてきたと思う
 父はきっと言ってくれる。
「よく頑張ったなあ」
 兄も笑ってくれるはずだ。
 引き出しを放り出したまま、多摩湖へ行ってしまったけれど、黙って後始末をしてくれた母がいたからこそ多摩湖へ行けたということに書きながら気付いた。
少しは私も進化したようだ。





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Last updated  April 21, 2021 11:47:34 PM
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