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2014.12.04
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カテゴリ:映画

ブラッド・ピット主演映画であり、今年度アカデミー賞最有力候補と名高い「フューリー」を観に行ってきました!徹底的にリアリティにこだわったこの作品では、実際に第二次世界大戦を戦い抜いた本物の戦車を各博物館から借り、撮影に駆使しているほど。期待に胸を膨らませて視聴に挑みました。
※ネタバレ注意

fury.jpg

期待を上回る出来でした!戦争を一切美化せず、細部の凄惨さまで緻密に描かれたこの作品は、なぜアカデミー賞最有力候補なのかを物語ってくれます。凄惨でリアルな戦争の現実、複雑で個性に富むキャラクターたち、手に汗握る戦闘シーンなど、私たちが戦争映画に期待する多くのことがこの映画に集約されています。リアリティにこだわった作品というのは伊達ではありません。

ベテランの熟練兵士の中に、戦場を経験したことのない新米兵士を投入することによって、感情移入をしやすくしているのも優れた点の一つです。
綺麗事や人間性が一切通用しない世界に、突然放り込まれた新米兵士ノーマンの視点を借りることによって、観客は擬似的に第二次世界大戦中の戦線に放り込まれます。そこには理不尽や凄惨さが居を構えています。多くの娯楽作品などで絶大な力があるとされる愛や良心が、無慈悲にも一撃で砕かれる世界です。生き残るには、それらを捨て去らねばなりません。ドイツ市街で出会うエマという美女と短期間で恋に落ちて関係を結ぶものの、どこからともなく飛んできた砲弾によって家屋もろともエマが殺されてしまうのは、その象徴的なシーンと言えるでしょう。リアルな戦場では、愛など尽く無意味なのです。


そんな中で、ノーマンは徐々に人間性を捨てていきます。エマを失った悲しみを怒りに変えたからでしょうか、ナチスに対して敵意を剥き出し、戦場での殺人を厭わなくなっていきます。まるで復讐に駆られた鬼(ギリシア神話の復讐の女神:フューリー)のように。最終的に、ノーマンは仲間たちから「殺しも酒も女もやるマシンだな」と言われ、マシンというあだ名を付けられるようになります。これは一人前の兵士として認められたことを意味しますが、同時に人間性を捨て、「人間」ではなく「マシン」になってしまったことも意味します。
殺しと酒と女、共通することは全て「虚無性」があるということです。殺しは言わずもがな、酒に溺れたところで酔っぱらうだけ、女とSEXをして快感を得たところで、そんな快楽はすぐに消え去ります。生産性のある活動を何一つ行わない、課された任務や抱いた欲望を黙々とこなす機械になってしまったのです。しかし、これを一概に嘆かわしいことと決めつけるのはよくありません。機械にならなければ、戦場で待つのは死のみですから。

最後の最後に、仲間たちが全滅した戦車からノーマンだけが脱出し、その下に隠れて敵軍をやり過ごそうとしますが、一人のナチス兵にバレてしまいます。絶体絶命のノーマン。ここで見つかれば、凄惨な殺され方をするのは容易に想像できます。しかし、そのナチス兵は僅かに微笑み、哀れなノーマンを見逃してくれます。人間性を捨ててナチス兵を殺戮していたノーマンが、ナチス兵の人間性によって救われるとは、皮肉な話です。

こうしてノーマンだけが救われ、アメリカ兵によって救出された際には「英雄だ」などと言われることになります。英雄と呼ばれても、ノーマンの顔は曇ったままです。だって、英雄なんてこの戦争には存在しませんから。栄光や名誉など、そこにはありません。あるのは平原を埋め尽くさんばかりのナチス兵の死体と、仲間たちの墓標でもある動かなくなったフューリー号のみ。そこに広がるは、莫大な喪失感と虚無感であり、あれだけの犠牲を出しながらも、得たものは無に等しいのです。


このように戦争の凄惨さや虚無性を、良心の塊だった青年が機械になってしまう過程を描き切ることで見事に表現しています。古代ギリシアの詩人ピンダロスは「戦争は、その経験なき人々には甘美である」と歌っていますが、まさにその通りなのでしょう。現実の戦争は欲望と虚無の連続であり、栄光や名誉など微塵も存在していないのです。

そしてここで特筆したい点は、戦争の凄惨さにスポットを当てながらも、臨場感溢れる戦闘シーンがいくつもあるということです!手に汗握る壮絶なバトルによって、全体が暗く沈んでしまうことを抑制しています。その中でも今作最大の見せ場が、フューリー号VSティーガー重戦車の決戦でしょう。
ティーガー重戦車は、ドイツの品質主義が生み出した伝説的な戦車で、当時世界最強と謳われていた戦車です。その分厚い装甲と強大な砲台によって、数々のアメリカ製シャーマン中戦車(フューリー号もこのひとつ)を撃沈させたと言われています。例えるなら、古代ギリシア世界におけるスパルタ重装歩兵ポジションでしょうか。スパルタ兵の赤い外套を見ただけで皆が震え上がった、アテネ帝国でさえ陸上ではスパルタと対決したがらなかった、スパルタ兵1人は他ポリスのギリシア兵10人に匹敵する、などなど、数々の伝説を地中海最強のスパルタ重装歩兵部隊は誇っていますが、その第二次世界大戦版と言えるでしょう。「化け物だ・・・」とフューリー号の仲間は呟きますが、ティーガー重戦車はまさしく化け物でした。

その伝説に違わず、劇中でもティーガー重戦車は猛威を振るいます。4輌あった味方の戦車はあっと言う間に1輌に減らされ、フューリー号とティーガー重戦車の壮絶な一騎打ちが始まります。その固い装甲と砲撃に、フューリー号は機動力を生かした作戦でティーガー重戦車に食らいつきます。ブラッド・ピットの的確な指示により、フューリー号はティーガー重戦車を破ることができ、なんとか九死に一生を得ます。この戦車決戦は、映画史に残る名場面と言えるでしょう。なにせ、世界に数輌しか現存していない貴重な本物のティーガー重戦車を撮影に使ってるわけですから!スクリーンに映る戦車決戦は、戦時中にどこかで実際に起こっていたかもしれませんね!


各キャラクターの複雑性など、他にも書きたい点はありますが、書き切れなくなるのでこの辺にしておきます。笑
この映画はまさしく傑作で、グロいシーンに耐性があるなら、是非とも観に行ってほしい作品です。戦争のリアリティに加え、映画史に残る戦闘シーンなど、見所は盛り沢山ですよ!






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Last updated  2014.12.04 20:13:15
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