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2015.08.16
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カテゴリ:映画
細田守監督作品『バケモノの子』を観に行って来ました。細田守監督作品は、『時をかける少女』や『サマーウォーズ』は非常に面白くて好きなのですが、『おおかみこどもの雨と雪』は個人的にイマイチだったので、『バケモノの子』はどうなんだろう・・・と半ば警戒していました。しかし、それは杞憂に終わりました!ふつうに面白かったです!
※ネタバレ注意

バケモノの子.jpg

老若男女誰でも楽しめる、娯楽要素の詰まった大活劇でした。コメディ要素もふんだんに盛り込まれており、周囲のちびっ子たちは事あるごとに笑っていました。
基本的にはテンポも良く、重すぎない軽快なステップでストーリーが進んでいきます。所々にアクションも用意されているので、娯楽作品としては申し分ない構成と言えるでしょう。

この作品のテーマは明らかに「親と子」であり、親目線と子目線がそれぞれ描かれているので、親子共々感情移入できる点が「老若男女誰でも楽しめる」作品である最大の理由だと思います。
複雑な思春期を表現しようとしている点も評価に値します。劇中に出てくる闇は、思春期特有の闇(中二病的な)を表現したものであり、これは一郎彦が「理想(エリートバケモノである父親)と現実(人間である自分)のギャップで藻掻き苦しみ、理想に到達できない(=自己実現できない)ことによるアイデンティティの喪失」で闇化することからも明白です。ヒロインの「みんな闇を抱えてる」的な台詞は、「自分だけが」と悲観してしまいがちな思春期の闇を中和する名言でしょう。

一方、その思春期の闇に戸惑いを隠せていないのが、育ての親である猪王山です。「自分が育てれば大丈夫だと思ってた・・・」という台詞が刺さりますね。これは完全に犯罪を犯した少年の親のインタビューと類似しています。
親目線からしたら思春期の闇というのは理解不能で、気づけないものなんですよね。猪王山が良かれと思っていた育て方が、一郎彦の真の人格を否定し、作られた人格(良い子のテンプレ)に強制させ、知らぬ間に一郎彦のアイデンティティの喪失(=闇化)を招いていたなんて、夢にも思っていなかったでしょう。

対照的に、闇化を抑えられた蓮においては、熊徹と正面衝突しながら成長していきます。熊徹が「こうあるべき!」と強制しても、蓮はそれを即座にはね除けます。これは俗に言う反抗期を模したものでしょう。こうして親の強制(他者から見た理想)から反発することで、他者視点ではなく自己視点の幸福を探していくことができるようになるのです。証拠として、どんなに熊徹が反対しても、蓮は大学進学を目指します。

他者理想に依存してしまった一郎彦と、自己理想に突き進んだ蓮。結果はご覧の通り、一郎彦が闇化します。家族というのは血が繋がっていても、結局は他者です。他者の理想は、自己の理想ではないのです。極端に言えば、他者が見下し蔑むようなものであっても、自己の理想であったりするのです。自己はどこまでいっても他者には成り得ぬのですから、他者なんか気にせずに自己を極めればいいのです。それが分からず、他者に依存してしまった者には悲惨な末路があり、そうさせるべきではないと、親を戒めようとしたのでしょう。
「子供には絶対東大に受からせて、医者にさせて~」とかほざき、子供に自らの夢をなすりつけるアホな親共はこれを肝に銘じておかないと、いつの間にか子供が闇化しているかもしれませんよ?笑



さて、ここまで『バケモノの子』の賞賛でしたが、気になった点もあります。
一つ目は、世界観に重厚感が無いこと。バケモノの世界は、雰囲気からして『千と千尋の神隠し』を連想させますが、それと比べると重厚感が全くありません。バケモノ、と言っても基本的には「二足歩行の獣人」が殆どですし、誰もがパッと想像し得る異世界のテンプレのような気さえしてきます。
『千と千尋の神隠し』だと、ちゃんと文化人類学や神話学的な見知からも世界観が構成されているので、異世界に複雑性や重厚感が生まれ、それが説得力に繋がっています。神々の世界は冥界とニアイコールでしたし、「食べ物を食せばその世界の住民になれる」「一度入ったら出られない」「罰として人が動物に変わる」などは、ギリシア神話にも通じる異世界観です。
一方、『バケモノの子』では、異世界と現実世界の行き来が自由自在ですし(これには少し拍子抜けしました)、何より世界が楽観的すぎます。蓮の異世界への順応も異常に早いですし、子供向け故にそうなってしまったのかもしれませんが、やはりチープな感覚は否めません。

二つ目は、説明口調がやたら多いこと。「そんなに説明しなくても分かるわ!」なんてシーンがいくつかありました。基本的にはテンポが良い作品なのに、そのせいでやや冗長に感じてしまった面も・・・。これも子供向けだからなんでしょうか。ラストシーンなんか、闇の鯨が攻撃しようとしてるのに、ヒロインが大演説ぶちかましますし・・・。その間はなぜか鯨はスローになるので、ヒロインは時をかける少女だったりするのでしょうか?
更に、「胸の中の剣」にしても、表現が直接的すぎる気が・・・。あんな風にズヌヌヌと刀が胸に入っていくとは・・・笑いそうになりましたよ。胸の中に熊徹がいるという演出も、あんな会話できるレベルだとやり過ぎじゃないですかね?「そこから見守ってろよ!」なんて蓮はいいますが、あんな会話できるレベルだとヒロインとベッドインした時ですら見守っていそうな(ry



まぁ、逆に言えば、気になった点は上記の二点ぐらいですね。それらを抜きにしても、『バケモノの子』はなかなかの良作だったと思います。親と子、双方この映画から学べることがあると思うので、家族で行くのに適した映画ですね。





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Last updated  2015.08.16 12:51:53
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