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2016.08.10
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カテゴリ:映画
12年ぶりの歳月を要し、遂に日本製のゴジラが復活を果たします。2014年には、ギャレス・エドワーズ監督がハリウッドのCG技術をふんだんに使って大迫力のゴジラを再誕させただけに、日本製ゴジラがどのような作品になるか非常に気になるところでした。早速観に行ってきましたので、その感想と少しばかりの考察を書きたいと思います。
※ネタバレ注意!

Shin-Godzilla.jpg

映画のタイトル通り、「シン(新)ゴジラ」でした!初代ゴジラへの原点回帰的側面が多くなるかと思いきや、変えるべきところは大胆に変更しており、純粋なワクワク感・恐怖感を堪能することができました!個人的には、ハリウッド版の『GODZILLA ゴジラ』よりも面白かったです!


■ゴジラの新たな可能性
今作で私が最も惹かれた部分は、今までのゴジラ像(能力的な部分)をぶち破ったという革新性です。まず、形態が変化するゴジラというのは前代未聞であり、予告編などで繰り返し見ていたゴジラ(の完全体)が最初から出てくると思っていたので、序盤に上陸する幼体を見た時はかなり衝撃でした。(ミニラやゴジラJrなど、過去作にもゴジラの幼体は存在しますが、あくまで親ゴジラの脇役としての登場であり、劇中で急激な形態変化はしません)庵野総監督はゴジラを「完璧生物」として描いたと語っており、素早く環境に適応し、進化していく様を描写することで、ゴジラのその側面を際立たせたのでしょう。

また、放射熱線の凄まじさも特筆に値します。シン・ゴジラの放射熱線は、歴代ゴジラでも最強かつ最恐の部類に入るでしょう。というか、カッコよすぎです!!!
口を大きく開き、顎が裂け、火炎を大地に投下。爆炎に包まれる東京。「ガメラみたいな放射熱線だな」と思わせておいて、その爆炎が徐々に細く、徐々に紫色になっていき、最終的にはレーザーのような鋭敏なビームと化す。あらゆる建造物を貫通し、周囲を無造作に破壊し尽くす。米軍の戦闘機もめげずに爆弾を投下しますが、今度は背ビレからハリネズミのようにレーザーが照射され、爆弾もろとも全戦闘機は撃墜。東京は火の海と化し、そこに佇むゴジラはまさしく破壊神・・・。

ゴジラの背ビレから熱線が出るなんて、誰が予想し得ましょうか?しかも、背ビレにはゴジラに近づく飛行物体(ドローンのような小型なものでさえ)を自動で捕捉し、撃墜する機能まであります。これは、米軍戦闘機による爆撃に対抗するために、即座に「進化」して手に入れたのでしょう。ここでも「完璧生物」の側面が浮き彫りとなっていました。

従来のゴジラは、G細胞という凄まじい再生能力があったとはいえ、ここまで多彩な攻撃方法はありませんでした。必殺技は放射熱線、もしくは尻尾による一撃であり(ヘドラ戦では飛ぶこともしましたが笑)、その放射熱線も一撃で東京を壊滅させるほどの威力はありませんでした。今回、ゴジラに新たなる攻撃方法を付与したことは、ゴジラの更なる可能性を引き出したことになるのではないでしょうか。リアル路線だと、ゴジラの動物的な側面を強調する方が無難なのですが(『GODZILLA ゴジラ』のように)、ここで敢えてその路線に行かなかったことに賛辞を送ります。


■リアルな政府劇
ゴジラの新たなる可能性を支えるのは、徹底的にリアルな政府の対応です。この重厚感溢れるリアルさで、下手をすればチープとも捉えられかねないゴジラのトンデモ能力に説得力とリアリティを与えています。ゴジラが上陸しても、「想定外」を連呼しまともな対応ができない政府のグダグダ感は、3.11の福島第一原発事故を相当に意識していることでしょう。「上陸はしない」と総理が明言した次の瞬間には、ゴジラ(幼体)が上陸して蒲田に甚大な被害を与えたのも、「大丈夫」と言っておきながら結局メルトダウンしてしまった原発事故を連想してしまいます。迅速にゴジラに対応していれば――幼体の頃のゴジラであれば、自衛隊の総攻撃で倒せたかもしれません。しかし、政府の対応は後手後手になり、その機会を逃してしまいます。結果、ゴジラは海に逃げ、次に現れる時には、最強無敵の完全体へと変貌してしまっていたのです・・・。

政府の会議は、リアルさはあるんですが、専門用語が容赦なく飛び交いますし、早口or滑舌が悪いのも相まって、なかなか理解できない場面もありました。しかし、「なんか真剣に議論してる!」感は伝わってきたので、理解できなくとも雰囲気で楽しめました。分かりやすさを犠牲にしてまでリアルさを追求したのは、「もしゴジラが上陸したら」という災害シミュレーションの意味もあったからでしょうね。

ただ、石原さとみのキャラクターはなんか異質でしたね笑 英語力がどうこう言うつもりはありませんが、身振り手振りがあまりにも「米国から来た嫌な奴」の典型というかなんというか。暗くずっしりとした政府に明るさを加えようとした結果なのでしょうかね。


■国際関係
各国政府も日本を見放し、同盟国アメリカは「西海岸に上陸の危険性があるから」との理由で核攻撃まで提案してきます。同盟を結んでいても、いざとなったら「他国」でしかありません。どの国も自国の利益になることが一番ですから。とはいえ、ゴジラの弱点を解析できたのは、海外の研究機関が全面的に協力してくれたからですし、核攻撃延期もフランスの協力が無ければあり得ないことでした。

ここに、国際関係の二面性を見ることができます。利害さえ一致すれば、国際関係は強力な武器となりますが、利害が一致しなければ、同盟国でさえ冷たくなってしまうのです。結局は利害関係が全てという、国際情勢のシビアさを浮き彫りにしています。
この混沌とした国際関係を見て、古代ギリシアのペロポネソス戦争を思い起こしたのは私だけではない・・・はず!!!笑


■ニッポンの底力
「この国もまだまだ捨てたもんじゃないな」。このセリフに全てが詰まっていると思います。
核攻撃決定にもめげずに決行した「ヤシオリ作戦」は、まさにニッポンの総力戦の様相を呈していました。自衛隊のみならず、無人電車に爆弾を詰めて特攻させた「JRアタック」や、高層ビルを崩れさせてゴジラを押し潰す「ビルディング・スマッシュ」など、日本にある全ての物を武器にせんとするその様は、まさにニッポン対ゴジラ!米軍も無人機で援護しますが、あくまでそれはゴジラのエネルギーを使い果たさせるための脇役に過ぎません。主役はあくまでニッポンであり、知恵と工夫を結集させた作戦は成功を収めます。

ヤシオリ作戦の「ヤシオリ」とは、日本神話に登場するヤマタノオロチに飲ませた酒「八塩折之酒」のことです。この酒のおかげでヤマタノオロチは酔い潰れ、その隙を狙って英雄スサノオはヤマタノオロチを退治することができました。
「知恵(技術)は武力に勝る」というのは、どの神話にも見られる教訓だと思われます。有名どころだと、旧約聖書のダビデとゴリアテ。ギリシア神話でも、ヘラクレスやテセウスはよく知恵や技術を使って怪物・強敵を制していました。武力では10年かけても滅ぼせなかったトロイアが、オデュッセウス考案の木馬作戦で征服されたのも、その代表例と言えるでしょう。ヤマタノオロチ伝説もその一つで、「酒で酔わせてその隙を狙う」という作戦(知恵)があったからこそ、スサノオは山や谷をも呑み込む大蛇に打ち克てたのです。

今作でも、ゴジラという圧倒的な武力に対して、ニッポンの知恵を使って立ち向かっています。武力の極致であるゴジラに、近年台頭が著しい海外企業(中韓など)の資本力を重ね合わせることも可能でしょう。「日本の技術力」とよく言いますが、それを用いてゴジラを制したのです。この展開には、登場人物の台詞からも明らかなように、国威発揚の意図があったと思われます。そしてそれは、日本の低迷というベースがあったから、この映画の主題になり得たのでしょう。

家電大手シャープが中華系企業ホンハイに買収されたり、名門・東芝が不正会計をしていたり、三菱自動車が燃費の不正操作をしていたり・・・最近、日本が誇っていたものづくりが足元から揺らぐような事件が多く起こっています。よくテレビでは「日本のものづくり」を誇る番組を流していることから、これが日本人に与えた衝撃は相当なものがあったでしょう。大手メーカーの凋落に、日本そのものの凋落を重ね合わせた人も少なくないはずです。
しかし、復活の兆しもあります。長らく低迷に苦しんでいたソニーは黒字化し、ゲーム業界では世界の覇者として君臨するほどとなっています。世界的な社会現象を巻き起こした「ポケモンGO」も、未だにそのブームは去っていません。高度経済成長期のような派手さはもはやありませんが、日本には、まだまだ世界と戦えるポテンシャルがあるのです。

これらを考慮し、庵野総監督は「悲観するな!まだまだ日本はやれるぞ!」ということを発信したかったのではないでしょうか。劇中で「日本はスクラップ&ビルドで立ち直ってきた」というような台詞がありましたが、バブル崩壊後の「失われた20年」がスクラップとすれば、今後はビルドあるのみです。あからさまなプロパガンダですが、個人的にはアリかなと感じました。こういう日本人のコンプレックスや願望を主題として扱えるのは、日本人ならではですから。まさに日本人の、日本人による、日本人のためのゴジラです!


■ゴジラの尻尾には・・・!
ここで「日本はまだまだやれるんだー!頑張るぞー!」と気持ち良く終わらせてくれないのが庵野総監督。最後のシーンでゴジラの尻尾がアップされ、そこには人間の骸骨のようなものが無数に張り付いていました・・・。これは一体・・・!?

個人的には、「核」による被害者たちじゃないかなぁと思います。

『ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃』でのゴジラは、太平洋戦争時に犠牲になった兵士たちの残留思念の集合体という説明がなされていました。今作のゴジラにも、そのような側面はあるでしょう。ゆっくりと歩みながら巨体を振るわせ、背ビレ・尾などのあらゆる部位から放つ熱線で戦闘機を撃墜するゴジラに、大日本帝國軍の主力であった戦艦の面影を感じることもできます。事実、自衛隊に攻撃された時は殆ど迎撃しなかったのに、米軍戦闘機に攻撃された時には、熱線ですぐさま撃ち落としました。米軍の攻撃で簡単に出血し、それに過剰に反応したのは、戦闘機に蹂躙された戦艦たちの無念や、戦闘機から無慈悲に落とされた核への怒りを反映したものかもしれません。

更に、今作は福島第一原発事故をかなり意識しており、原発事故の被害者の怒りもそこに込められているでしょう。ゴジラの口の中に凍結剤を投入する様は、原発事故時における注水と似ていますし(もともとゴジラは寒さに弱い怪獣でしたが)、ゴジラは原発の暗喩でもあると思われるからです。
ゴジラの名付け親である牧教授は、核に関する全ての事象を憎んでいました。戦争時の核と、平和時の核。その両方の犠牲者の総体こそが、ゴジラを形作ったのです。凍結した「ゴジラと共存する」ということは、その犠牲者のことを決して忘れない、忘れてはいけないということに加え、現在稼働中の原発が、非常時にはゴジラのような怪物と化すことを、暗に示したのではないでしょうか。

あれを続編の伏線だという見方もあるでしょうが、私としてはそれは無いと考えています。このまま続編が制作され、敵怪獣とのVSモノになったら、一気にチープ化すると思いますし、そういうVS要素はハリウッド版に任せておきましょう。


■最後に
このように、『シン・ゴジラ』は日本人にしか作れないリアリティと日本の誇り、過去の犠牲者たちをテーマにした重厚感溢れる傑作でした!ゴジラお馴染みの音楽が流れたのも高評価です。とりわけ「自衛隊のマーチ」的な曲が大好きだったので、あれがヤシオリ作戦冒頭で流れた時は心踊りました!笑
CG技術がハリウッド版に比べて未熟だったのが残念な点ですが、これは仕方ないでしょう。ハリウッドと日本では、予算のかけ方が違いますから。ただ、日本映画という括りの中で言うならば、『シン・ゴジラ』でのCGはトップクラスでした!

私は『エヴァンゲリオン』シリーズのファンというわけでもないので(映画版の序と破を見た程度です)、『シン・ゴジラ』と『エヴァンゲリオン』の類似性・共通性は分かりませんが、今作は庵野総監督であったからこそ実現することができたのだと思います。庵野氏は特撮に対する熱い情熱がありますし、「(学問的)地平」という概念から分かるように、ある物事の革新・拡張は、別分野の人が携わること(今回に限って言えば、アニメ業界で名を上げた庵野氏が、特撮・実写映画の総監督になること)で達成されることが多いからです。

勢いでサウンドトラックを購入してしまいましたが、パンフレットは売り切れで未だに手に入ってません。パンフレット購入ついでに、もう一度観に行くかも。笑





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Last updated  2016.08.10 20:25:07
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