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カテゴリ:映画
ヤクザの仁義無き戦いを描くアウトレイジシリーズの最新作『アウトレイジ:最終章』を観に行ってきました!
アウトレイジシリーズは「バカヤロー!」「コノヤロー!」という罵詈雑言や、容赦ない残虐描写、そして「下剋上」をテーマとした硬派なストーリーで有名です。ビートたけしが監督と主演を兼務していますが、北野武監督作品としては珍しく、エンターテインメント色が非常に濃い作品になっています。私は第一作『アウトレイジ』をDVDで観てから無常で無情な世界観の虜になりましたが、『アウトレイジ:最終章』はそのアウトレイジシリーズの最後を飾る作品であり、期待通りの傑作でした! ※ネタバレ注意! ■今回は国際抗争へ 『アウトレイジ』が山王会の内部闘争、『アウトレイジ:ビヨンド』が山王会と花菱会の東西抗争と、アウトレイジシリーズは順を追ってスケールが大きくなっていますが、今作は花菱会VS張グループと、遂に国際抗争にまで発展します。 花菱会には、『ビヨンド』でビートたけし演じる大友と舌戦を繰り広げた西野(西田敏行)と中田(塩見三省)がいますが、張グループのボスである張会長も引けを取っておらず、むしろ西野と中田よりも一枚上手と感じました。張会長演じる金田時男さんは、本業は役者ではなく実業家ですが、ビートたけしがその存在感に惚れ込んで起用をプッシュしただけあって、台詞数が多くないのにも関わらず、場を征圧する圧倒的なオーラを放っていました。花菱会のチンピラ(原田泰造)が張会長を撃てなかったのも分かります。あのシーンはまさに、蛇に睨まれた蛙でした。 花菱会と山王会はギラギラと野望を滾らせ、どちらも大きな問題を抱えていましたが、張グループは終始冷静で達観的であり、ガタガタの花菱会とは対照的に描かれていました。張グループの一糸乱れぬ統率力は、カリスマ性あるトップが率いているからこそ成せる技ですね。 ■「下剋上」の輪廻 上記のように、スケールは未だかつてないほどに壮大になっていますが、それでも根幹のテーマである「下剋上」は不動のままです。シリーズ物はスケールが巨大になるにつれてテーマがブレるというのがお決まりですが、そこはさすが北野武監督といったところですね。というのも、今作は日韓全面戦争!という側面は薄く、どちらかと言えば花菱会の内部闘争に主眼が置かれているからです。 先代に指名され会長になったポッと出の野村会長をいかに引きずり下すか。また、いかに若頭の西田を牽制し、会長の座を維持するか。この構図は一作目、二作目でも見られました。そこに張グループのために暴走する大友が絡んできて、権力争いは血で血を洗う大抗争へ。終局は西田が会長の座を確保しますが、因果の輪は常に回り続けます。その争い――下剋上の連続に終わりはなく、西田会長の権力も刹那に終わるでしょう。 ヤクザという暴力とメンツに徹する組織だからこそ、権力争いの醜さは絵になるほどに脚色され、それ自体がエンターテインメントと化していますが、その本髄はあらゆる社会に共通のものです。「出世」や「権力」という概念を持つあらゆる組織は、その呪縛から逃れることはできません。歴史がそれを証明しています。そして、権力の頂点に立っても、決して安泰ではありません。今度は権力の維持に奔走される運命が待っています。賢者ソロンの言うように「死する直前までその人が幸福か否か分からない」というわけです。そして、その果てに待っているのは、「権力」そのものの衰弱です。 山王会が関内会長から加藤に代わり、日本最大勢力になるものの、加藤が失脚し山王会は花菱会の傘下へ。花菱会は野村会長から西田に渡りますが、大友の暴走(パーティ会場での銃ぶっ放し大量虐殺)により、勢力減退へまっしぐら。いずれ山王会と同じ道を辿ることになるでしょう。まさに盛者必衰の構図ですが、アウトレイジシリーズは、シリーズ全体を通して、その体現をしていました。 ■大友の最期 この勢力移り変わりの大脈動のキーマンとなったのが、大友です。権力争いの主役ではありませんが、決定的な引き金となっているのは彼です。言い換えれば、権力者たちに利用されまくったとも言えるでしょう。大友自体は、自らの信念に従って行動していますが、それは「古臭い極道」であるが故に行動原理が把握されやすく、簡単に利用されてしまいます。張会長に一目置かれる存在でありながら、山王会であまり出世していなかったのも、それが関係していることでしょう。 今回も御多分に漏れず、西田に利用され、花菱会の勢力交代の一役を担います。そして最期は、勝手に暴走したことのケジメをつけるため、「張会長によろしく伝えといてくれ」と言って自殺するのでした。 アウトレイジシリーズの大多数が自分の利益のために行動する中、大友だけは、この信念(やられたらやり返す、義理堅い、意外と仲間想い)のために行動していたように思います。 それ故に、利用されるだけ利用され、自らの頭を銃で撃ち抜く(しかも一切躊躇せず!)というラストは、物凄く切ないものがありました。 しかし、大友はあれで「幸せ」だったと思います。信念を貫き通し、全ての復讐を果たしたのですから。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.10.21 00:16:02
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