カテゴリ:日常
かねてより見たかったオークラコレクションを九州国立博物館に見に行った。
秋のうららかな晴天で、天候としては美術鑑賞よりも行楽に出かけたほうが楽しいのかもしれないという日よりだった。 会期が10月2日~12月9日までの70日なのだが、途中展示物の入れ替えがあるらしく、一番の目玉の横山大観の「夜桜」は11月6日からしか展示されない。 行く前は前期、後期の2つにわけて展示物を入れ替えるのかと思っていたらなんと、3回に分けて入れ替えるというではないか・・・。 3回行かねば全部見ることができないとは、なかなか手ごわい展示会である。 今回のパンフレット・表紙 中の見開き 裏表紙 オークラコレクションは普段は東京の大倉集古館という日本最初の私設美術館に保存展示されているそうだ。いま、この大倉集古館が改装中だそうで、それで惜しげもなくこれらの名品が地方を回っているということなのだろう。ありがたい話だ。 お父さんの大倉喜八郎さんと息子さんの大倉喜七郎さんの2名で集めまくったこの美術品、なかなかに幅広く見ごたえがあるものばかりだった。 非常に質がそろっている感じで、国宝や重文、それ以外のものといろいろとあるのだけど、目移りしてこれ、といった一品が逆に記憶に残らないほどだ。 そんな中で今回、私の心に響いたものがいくつかある。 一つは国宝の「古今和歌集序」これのどこにひかれたかというと、実は書いてある文字ではない。用いてある「紙」だ。 写真では全然わからないのだけど、この作品、何枚もの紙をついで長い巻物にしてあるのだ。その紙はクリーム色だったり、薄紅色だったり、美しい青だったりするのだけど、その色合いと地模様、透かし模様などが秀逸でものすごく美しい。 平安時代に作られたものだが、その時代にこんなに美しい料紙があったんだなあと感動した。 考えて見れば平安時代といえば和歌を送りあった時代で、どのような料紙を使ってどのような香を焚き締めて手紙を作成するかに多大なエネルギーを注いだ時代だった。 内容も大事だが、書いた人の筆跡の美しさや、書かれた紙と中身のバランスなど総合的に厳しい目で評価されたに違いない時代のものである。 手書き文字を書けば必ず誤字脱字の私からすると、これだけの文章量を誤字も脱字もなく書き上げるとはとそれだけで感嘆の域なのだが、それにしても凄いものがあるものだと思う。 人の手の生み出す美しさというものは際限がない。浅学な私はとてもじゃないがこの時代の文字を読むことはできない。読めもしない文字で書かれたものであるにも関わらず、心を打つとは。やはり途方もない美しさなのだと思う。 行く前から楽しみにしていた前田青邨の「洞窟の頼朝」も見てきた。 実物は写真の何倍も素晴らしいと思った。頼朝の放つオーラが凄い。 書かれているのはオジさんばかりだけどエネルギーが放出されている感じ。 相変わらずの趣味で申し訳ないが、こういうたおやかな美しい女性の絵がやはり好きだったりする。 鏑木清方の七夕という作品。2つで一組。 大倉喜八郎さんという人は、廃仏毀釈をみて、仏様がかわいそうと思って集め始め、藩屋敷が解体され、家財道具が売りに出されて美術品が散逸しつつあるのを見て、それが西洋で高く売れることを知ってとりあえず買ってみたらはまってしまって集めはじめたという逸話が紹介されていた。多分に謙遜が入っていると思うが、なかなかできないことである。 そして大正6年に開設された博物館は関東大震災で罹災し焼失したそうです。その時に焼失した美術品が一体どんなものだったのかわかりませんが、第二次世界大戦のときにこれらの美術品が焼失しなくて本当によかったと思いました。 今回見た七夕などの作品はイタリア・ローマで開催された「日本美術展覧会」で出品されたものだそうだが、展覧会のあと、すべての作品を大倉喜七郎さんが買い取ったんだそうだ。それが後年大倉集古館に寄贈されたそうだが、その解説文に「手元に残ったものを」と書かれていたのが印象的だった。きっと戦中戦後の大変な時期にいろいろとあったのだろうなと。 来秋あたりに改装を終えてリニューアルされる大倉集古館。いつか訪れてみたい美術館の一つになった。 ※鏑木清方の七夕の画像は下記のサイト掲載のものを拝借しました。 http://nekoarena.blog31.fc2.com/blog-entry-1145.html?sp その他の画像については、今回の展示会のパンフレット並びに販売されていた絵葉書をスキャナで取り込み加工したものです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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