今夜も李白に纏わる話
少年の頃の李白は、山の中で勉強していたが、ある時勉強が嫌になって、山を下って、逃げ出した。小さな川を通りかかると、一人の老婆が川の水で鉄の杵(きね)を磨いでいる。李白は不思議に思って、その老婆に杵を磨いでどうするのかと尋ねた。老婆は、磨いで針にするのだと言う。李白はそれを聞いてとても感動し、老婆の杵を磨いで針を作るという行為の中に、一つの真理を悟った。何事をするにも苦しい修業が必要であり、あくまでやり通す精神を持たなければならない。そこで、李白は勉学から逃げ出そうという気持ちを捨て、山に帰って学問を続けた、という故事がある。後世の人は、いつもこの話を使って子供達に一所懸命勉強するようにと教えた。 「只要功夫深、鉄杵磨成針」(ただ功夫の深さを要すのみ、鉄杵も磨げば針と成る)ということわざにもなった。私が子供のとき、親からも、先生からも、少なからず言われた覚えはあったね。もし、あのとき李白は勉強をやめてしまたら、「中国の歴史上最大のロマン派詩人」の座は、他の誰かが座っていたかもしれない。いや、いなかったでしょう。我々は今こうして李白の作品を楽しめるのも、あの老婆のお陰だと言っても過言ではない。