田澤守さん(樺太アイヌ協会会長)が
とっても大事なことをおっしゃられていたので
再びクローズアップしていきます。
よく貧困と闘う国を豊かにするものとして
私たちの発想のなかに思い浮かべるものが
いくつかあると思うのですが、
「水=井戸」や
「医療」や
「農業技術」や
「産業」や
そして「教育」などが思い浮かぶのではないでしょうか。
(まだまだあるかとは思いますが。)
わたしも「教育」は大事、
と思って過ごしてきました。
「教育」の本質に触れたくて
教育そのものについて思いを巡らせ
「学び」とは何かと、御堅いテーマを
直球で追い求めていたこともあります。
今回、田澤守さんが
仰られようとする「教育」を伺っていて
戦中の政策としての「軍事教育」
戦後の日本の「社会科教育や国語教育」のことが
思い浮かびました。
田澤守さん(樺太アイヌ協会会長)は、
こう仰られたのです。
「エンチゥ(樺太アイヌの自称)やアイヌ
のためにしてあげたよ。」
「エンチゥ(樺太アイヌの自称)やアイヌ
に文化的な生活をしてもらいたい。」
「エンチゥ(樺太アイヌの自称)やアイヌ
のために日本の文化を教えてあげる。」
「エンチゥ(樺太アイヌの自称)やアイヌ
の母語は使わないでください。」
「これを喜んでいいのか?
これをアイヌやエンチゥは望んだのでしょうか。
アイヌ、エンチゥを捨てるのか?
アイヌやエンチゥが望んで納得したことなら
私も認めます。」
なぜ、こんな教育を進めたのか、
日本政府の思惑について
こんなふうに触れられています。
「日本側では、かつて近世紀に「蝦夷」の中に
カラフトの「エンチゥ」を含んでいた。
近代にはまた、「蝦夷」を「アイヌ」と呼び換え、
「エンチゥ」を「アイヌ」の一部として
「カラフトアイヌ」と呼ぶようになった。
「エンチゥ」がアイヌ語圏にあるということから、
広い意味で文化的に「アイヌ」のうちに
含まれたということはあるが、
日本側がロシアに対して、
樺太島を日本領であると主張するためには、
「エンチゥ」を「カラフトアイヌ」とよんで、
「アイヌ」のうちに含めておく必要があったという
事情も考えられる。」
ここを知ると、言語教育について
疑問が湧いていらしたと思います。
さて、文化については、どうだったのでしょうか。
「「エンチゥ」は、言語面以外の文化面では、
ウィルタ(他称オロッコ)や
ニクブン(今日では大陸のニブフと同様に呼ばれるのが
普通で、他称「ギリヤーク」)に近い面がかなりあり、
かつては樺太南部を社会形成の主領域としていた。
「エンチゥ」はかつて樺太南部という一定地域を
根拠地として幾世紀にも亘り
社会生活を送っていたというわけである。
また、遺伝面では、時代による度合いについてはともかく、
多集団と混合関係にあったと考えられる。
このような諸点からすると、要するに「エンチゥ」は、
歴史的社会的意味で理解するのが
もっとも適切と言うことができる。
北海道島の「アイヌ」も、
実はかつては地域的にまとまった
幾つもの集団に分かれていて、
地域集団ごとに墓標の形式が違っていた。」
「841人のカラフト人が強制移住を強いられたとき
日本人でもない人が同意してきたというが
そもそも日本語ができたのか?漢字が書けたのか?
という疑問もあるが、ありえない。」
日本政府の触れない歴史の側面にもお話がありました。
婦女暴行の事実。
ロシア政府は認め、日本政府は認めていません。
そして略奪行為の事実。
アイヌの副読本(一部は当たっているが、
カラフトアイヌの文化とは違っている。)
のなかで紹介されている
アイヌの服は「エンチゥ」のものであること。
国境線のもともとないところで
多民族文化がある。
勝手にまとめられ、
北海道アイヌといっしょにしたがる。
その例として言葉では「トナカイ」という言葉は
アイヌ語からきているが
北海道にトナカイはいないという事実。
エンチゥは、自分のルーツを調べても単一民族ではない。
ロシア、日本人、いろんな血が入っている。
報道と親から聞いていることとの差は大きい。
国とは、憲法である。
憲法のなかにアイヌのことは
ひとつもうたっていない。
条約も何も結ばないうちに
“和陣地”になっている。
誰も何も言わないけれど
勝手に決まっている。
アイヌが自分たちのことを
自分で決められる社会になっていたらいいな。
国って必要なのかな?
今だって世界中で国ができたり、
なくなったりする。
国境があることによって
不自由になっている。
文明がいいか?
文字を持ったおかげで歪曲した
歴史をつくることもできる。
文字を持たないから
国をつくることがいいことなのか?
力の論理によって時代が創られてきた。
そのことは、幸せか?
国が、すべてではない。
この想い、皆様のお心に届くでしょうか。
以下は、蛇足ではありますが、
小学生でも分かる!
「超訳・北海道旧土人保護法 」
(明治32年3月2日・法律第27号)
http☆//www.tanken.com/dojinhogo.html
(☆を:に代えてください。)
より転載させていただきました。
北海道旧土人保護法制定100周年記念! そこで、この法律全文を公開。ただし、原文はカタカナ混じりの読みにくい文章なので、分かりやすい日本語にしときました。
アイヌの歴史は、和人による収奪と同化の歴史だったわけで、当然、この法律もそうした意図の元に作られています。それをより明確に訳しときました。きっと批判も多いでしょうけれど、でも間違ってはいないと思うのだけど。
第1条
旧土人で農業をしたい奴には、一戸に付き、土地1万5千坪をタダであげる(ただし荒れ地が多いけど、しょうがないね)。
第2条
タダであげた土地は、相続の場合はしょうがないけど、あとは他人に譲渡したり抵当に入れたりしてはいけません(つまり財産として認める訳じゃないんです)。
でも一応、30年間はその土地に税金かけないであげる。
そうそう、旧土人が昔から持ってた土地は(まぁ、やっぱりこれも財産としては認められないから)北海道庁長官の許可がないと相続以外の譲渡とかはダメだね。
第3条
タダであげた土地は、15年たっても開墾してないときは、悪いけど没収するよ(まぁ、ひどい土地だけど、がんばって開墾してね。なにせいい土地は、全部日本人に渡しちゃったからなぁ)。
第4条
貧乏な旧土人には、農具や種を与えます。
第5条
旧土人が病気になったら、薬代は渡します。
第6条
病気や不具、老衰、幼少のために自活できない旧土人は、とりあえず助けます。それでも死んじゃったら、葬式代は渡します。
第7条
貧乏な旧土人の子供たちには、授業料を渡しますから、学校に来て下さい(完璧な日本語教育で同化させますよ)。
第8条
上の第4条から第7条にかかる費用は、旧土人共有財産(明治時代の漁場利益や宮内庁からの御下賜金)を充てます。足りないときは国が出すしかないね。
第9条
旧土人の部落には、国が小学校を作ります(もちろんアイヌ語は教えないけど)。
第10条
旧土人共有財産は北海道庁長官が管理します。
第11条
北海道庁長官は、旧土人保護に関し警察令を出せます。
(附則は省略)
※この法律は、大正8年、昭和12年、21年、22年、43年に一部改正が行われましたが、もっとも重要な土地の規制については平成9年(1997)まで残存しました。
少なくとも、私が学んできた
義務教育や高校、大学時代に
ここまで踏み込んだ
歴史教育は、記憶にありません。
(一緒に学んだ方々が覚えていらしたら、ごめんなさい。)
旧土人法を学んだときに
「アイヌじゃなくてよかったねぇ~。」と
口走った遠い記憶があります。
(本当にひどい。理解していなくてごめんなさい。)
先生がなにを語られ
子どもたちになにを伝え
わたしたちが学んだことは
いったいどういうことだったのでしょうか。
田澤さんのお話を伺うまで
アイヌの方々が、多民族であるということさえ
存じませんでした。
自分たちの歴史を学ぶ。
学んでいるつもりでしたが、
それがだれのどの立場で語られたものなのかという
検証までは、できていませんでした。
そして、その歪みは、政府の思惑などを含み
社会を司る力にもされている
(…大きすぎますか?)
正当性を守るための国民教育ともいえると
感じるのです。
黒板に絵まで描いて原発の安全性を
子どもたちに押し付けていた授業を覚えています。
何百人をそうやって
経済優先論理で導いたのでしょうか。
悔いていらっしゃいますか?
そして、それは償いきることなのでしょうか。
話がそれました。
「樺太は、日本人のものではない。」
樺太アイヌ、エンチゥの権利
帰ってきても、住んでもいい。
「エンチゥは、近代史の中で国際紛争により、
2度に亘って分断され、
移住地を追われる歴史を担わされている。
この事実は決して見過ごされるべきことではないと
考えられる。明治9年の樺太千島交換条約によっても、
第二次世界大戦の日本の敗戦によっても、
エンチゥは実質的根本的に自らの運命を選択する
主体性を奪われた存在であった。
それだけに私たちは、今、「エンチゥ」として
自己の存在にこだわりをもたざるを得ないのである。」
本文中の田澤さんのお話は、
■「カラフトアイヌ」の近現代史
~樺太アイヌ協会による本年度調査の紹介をかねて~
田澤守氏(樺太アイヌ協会会長)論文
愛知県立大学 多文化共生研究所
ジャーナル『共生の文化研究』5号掲載
http☆//www.for.aichi-pu.ac.jp/tabunka/journal/index5.html
より一部、転載しています。
再生の一歩前2013.02.17小金井公園 posted by (C)あっこ森
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