カテゴリ:詩
今日はちょっと趣を変えて、普段の風景と、
両親への感謝の思いを 詩にしてみました。 -------------------------------------------- 「生のあかし」 私はこぐ 病院へ向かう 自転車のペダル ほんのり薫る 春の気配を 全身一杯に 受けながら この春のうららかを 母にも届けてあげようと もうすぐもうすぐ 病院が見えてくる 思わず数える 1階、2階、3階、4階、5階の窓 母があそこにいると 思うだけで 私の胸は弾み ペダルをこぐ足は早くなる 私は昇る 病室へ向かう 階段を 一段 また 一段と 今日もこの階段を 昇れる幸せをかみしめながら 私は綴る 面会ノートに 母の名前 明日もここに また名前が書けますようにと 一筆 一筆 祈りながら 私は拭う 母の涙を 母の顔には いつも大きな涙のあと 仕上げには 化粧水 目覚めた時に 「あら!お肌がきれいだわ!」と びっくり 驚かせてあげたいから 私は読む いつも母の枕元にあった 愛読書 聞き覚えのある 私の声が どうかどうか 脳細胞の奥の奥まで 届きますように 私は歌う 母の大好きな 「母」の歌 お母さんは 「葬式で歌ってね」と 私にお願いしていたけど たぶんその日は泣いて歌えないから 今いっぱい歌ってあげる 私は感じる 母の手の ぬくもりを 今日は あたたかい 今日は 冷たい 今日は 指が堅い 今日は 柔らかい おいしい料理を 次々と作り上げてくれた 魔法の手 こんな小さな手で こんなに大きく育ててくれたんだね 私は安心する たまに大きく 母の吐息 「あぁ、お母さんは生きている!」と 力強く感じる瞬間 私は祈る ただ ひたすらに どうかお母さんが 毎日幸せな夢を見ていますようにと 何もかも 失ってしまったら 一体 どうなってしまうのだろう あまりの不安に 怯えていた日 ふと目に入った 私の指 私の全身の皮膚 爪の先 髪の毛の一本一本に 母のあかしは 残っている 父のあかしも ここにいる そう思ったら なんだか嬉しくなってきて 私は自分の指に キスをした 私が生きていることが 母と父の 生のあかし 私が死ぬまで ずっと一緒なんだね そう思ったら 寂しくないよ お父さん お母さん 私を生んでくれて ありがとう お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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