宇都宮高校対水戸一高定期戦
ある本で、ガレス・エドワーズが「友情と試合後のビールがなくなったラグビーに存在価値はない」という意味のことを語っているのを読んだことがある。日本に来た外国人と同じチームでプレーした経験があるが、彼等に「どうして君たちは試合の後パーティーをしないのか」と怪訝な表情で尋ねられたこともあった。NZで買ったフォークソングのCDの中に「Rugby,Race&Beer」とかいう曲もあった。どうやら、彼の国ではグランドでの試合と同等に試合の後の交歓会も大事なものらしい。 自分が現役の頃、誰もそんなことは教えてくれなかったし、考えたこともなかった。練習試合をしても反省会をやって解散、無論相手チームと一緒に飯を食うなんてことはやってこなかった。そんなことやってるチームの話は聞いたこともなかったしその必要も感じなかった。 ずっと昔、宇都宮市の選抜チームのNZ遠征に参加したことがある。試合は完敗だったが、その後のアフターマッチファンクションには感激した。クラブハウスの中で両チームの選手が入り乱れ、試合の内容についてあれこれ話をしたり、ちょっとした日常的な話題に花を咲かせたりしていると、司会を務めていた人が僕の名前を呼んでいる。むこうの選手も「お前だよ」なんて肩を叩く。「ん?」と思って前に出ると何とマン・オブ・ザ・マッチに選ばれたとのこと記念品をもらった後は「おめでとう」と握手攻め。この経験がなかったら僕とラグビーの関わり方も違っていたかもしれない。 高校生の指導に関わるようになったから考えたのは、彼等(高校生)はラグビーのプレーについて学ぶ機会はあるのだろうが文化について学ぶ機会は極めて少ないのではないか、ということである。公式戦のほとんどはトーナメントで負ければ終わり、今でこそ試合会場は芝のグランドも珍しくないが練習は土のグランド、当然、試合後のファンクションなんてまず行われない。そして大学に進んでラグビーを続ける子も限られるとなると、彼等がラグビーに接するのは3年弱しかない、ということになる。冒頭の「友情」、同じチームの仲間とは友情を築く時間もあるだろうが、同じ時間を共有した相手チーム、さらにはレフリーとの友情なんて考えもしないのではないだろうか。 そこで、数年前、同じ進学校である水戸一高に、交流戦をやりましょう、終わったら一緒に食事をして交流を深めましょう、と呼びかけた。相手の先生も喜んでくれて定期戦が始まった。レフリーは桜岡さんが快く引き受けてくれ、グランドは栃木不惑が管理しているクラブハウスつきの芝のグランドを借りた。試合後は両チームのキャプテンにあいさつをしてもらい、その後は食事会(もちろんビールは出ない)。両チームが一緒に弁当を食べながら話をしているのを見て嬉しい気分になった。 もちろん、一回くらいファンクションを経験したからといってラグビーの文化について学べたなどというつもりはない。ただ、花園には縁のないようなチームの子達に「ラグビーっていいな」と思って貰えれば苦労した甲斐もあるというものだ。 こんな形で始まった定期戦だが、今年も負けて3連敗。うーん、これは悔しいぞ。来年は格好良く勝ちましょう。