卒業式は終わったが
中学校で初めての卒業生を送り出し、しばし余韻に浸りたいところだが、実は、ここからが「勝負」である。確かに卒業式は終わったが、3/31までは、籍は中学校にある。つまり、授業を受けに来なくても、彼らはまだ「中学生」なのである。 特に、例年卒業式の後は解放感からトラブルを起こしたり、巻き込まれたりする生徒が出る。田園地帯に位置する我が校も、近年、学区に隣接して大規模商業施設、娯楽施設が造成され、生徒たちが遊ぶのに困らないようになってきた毎年、卒業式の後には3年担任が巡視することになっている。 私は、隣のクラスの英語の先生と二人で、カラオケ屋、ゲームセンターを見て回った。早速、卒業生発見高校生の姉と、その友人たちと一緒に遊びに来ていた。こちらに気づくと一礼した。姉も(教え子なので)、「あっ、先生」とにこにこして挨拶。まぁ、悪いことをしているわけではないので、「遅くならないうちに帰るんだぞ」と注意した。 英語の先生は「でも、例年になく、出歩いている子は少ないですよ。というより、いないですよね」と怪訝な表情。決められた箇所を見て回ったが、最初に見たひとり以外は見つからなかった。 そこで、別の箇所を巡視している先生に連絡し、そちらに応援に行く旨を伝えようとした。ところが、そちらも「全く」いないとのこと。「今年はどうなっちゃってるんだろう?」という話になった。「誰かの家に集まってるんじゃないですか?」「集まって何してるんでしょう?」等と話をしながら学区内を見て回ったが、それらしい気配もない。 やがて、大きな公園に近づくいた。すると「いたいた!!」と英語の先生。見ると自転車が十数台、近くには中学生が固まって座っていた。しかも、よく見ると全て私の学級の生徒たちではないか白昼堂々??とドキドキしながら車で近づくと、彼らのひとりがこちらに気づいた。 こういう時、悪いことしている連中は蜘蛛の子を散らすように逃げるものだ。ところが、かれらは、こちらに駆け寄ってきた「なにやってるんだ?」と聞いたら、にこにこしながら「野球です」なんでも、「卒業式の後、お昼を食べたら公園で野球をしよう」と一月ほど前に約束をしていたそうな。中学校の体育着の子、制服を着たままの子、服装はばらばらだったが、どの子も汗びっしょりかいていた。こちらにも「遅くならないうちに帰るんだぞ」と言ったが、かわいいというか、拍子抜けしたというか、何とも言えない気分で別れた。「先生のクラスの子って、最後までかわいかったですね」と英語の先生が目を潤ませていた。バックミラーの中では、ヒットを打った子が全力疾走していた。「本当に馬鹿揃いですね」といいながら、僕も鼻の奥がつーんとしてきた。 明日は、県立高校の合格発表。